第9話「パッと出の色物配信者など叩き落して差し上げますわ!」
「なんなんですの……急に現れて……ワタクシの特別な企画を台無しにして……」
配信鳥の目が【配信中】の赤色から【終了】の黒色に変わるのを確認して呟く。
その日は、わたくしの配信活動6年目をお祝いする記念配信だった。
王都にある、有名店のパティシエに特注した特別なスイーツ。
希少価値の高い茶葉で淹れた紅茶。自慢の庭園もキラキラに飾り付けた。
視聴者さん達も告知してから、当日をずっと楽しみにしてくれていた。
配信開始前から待機する人が集まって、開始したら更に沢山の視聴者さんが集まった。
5分後には、【生放送】ランキングの1位になっていた。それは驚くべき事では無く、必然の事だった。
なぜなら、わたくし『セリーナ・ローズウッド』は配信すれば、ランキングに名前が乗る人気配信者だからだ。
「なのに……どういう事ですの」
6年目のお祝い配信が、突如途中から視聴者数がみるみると減って行ったのだ。
最初は意味が解らなかった。だが、コメントを見て理解した。
●ねぇ、今配信中のダンジョン攻略配信者の映像が面白いんだけど
●セリーナさんの配信中に他の配信の話しないでよ!
●ごめん!でも絶対見ないと損かなって
●気になってちょっと覗いたんだけど……確かに凄い
そこからだ、視聴者数は減り続け、最後には私の配信ではありえない数字になっていた。
勿論お嬢様配信者のわたくしはそんなの気にしていないフリを続けたし、最後は「ごきげんよう」と笑顔で配信を終えた。
そして、終えた瞬間が冒頭の言葉だった。
「悔しいですわ……記念配信でしたのに」
美しい庭園で、豪華なスイーツと紅茶を楽しみながら、今までの活動を振り返る。
楽しい事だけでは無くて、苦しい事もあったけど皆様のお陰で頑張って来れたのだと……その言葉で視聴者さん達が涙する。
配信の最後は、視聴者さん達に祝福されて、キラキラして終わる……予定だった。
ランキングは当たり前で1位、その日の配信界隈の話題も独占……の予定だった。
「なのに……なんなんですの……声がおじさんの変な女の配信に……ワタクシの配信が掻き消されましたわ!」
その日の配信界隈の話題に、わたくしの事などまったく上がらなかった。
話題は『美少女なのに声がおっさん』と『初見サギ男』の配信話題で持ちきりだった。
「許せませんわ……ただの色物売りで、下詰みの苦労も知らずのパッと出が……この世界の厳しさを解らせてさしあげますわ」
かくしてその数日後、界隈が大注目する『異色の雑談企画』が配信される事となったのだった。




