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第10話「ボロを引き出してボロボロにして差し上げますわ!」


「皆さまごきげんよう。始まりましたわ、セリーナ・ローズウッドのお庭へようこそ。のお時間ですわ」


 配信鳥の前でスカートをつまみ優雅にお辞儀をする。

 今日の配信のために念入りに準備をした。

 自慢の銀の髪はいつも以上に大きく縦巻きロールを入れ、高級オイルでツヤツヤに。

 衣装も新調した、黒と紫を基調としたシルクのドレス。

 付けまつげもいつも以上にカールさせたし、アイシャドウも配信で映えるようにラメ入りの物にしたし。リップもカップに絶対落ちない物を選んだ。ネイルには高価なストーンも入れた。 

 テーブルに置いた配信水晶を確認する。


 

●セリーナお嬢様、本日も素敵です

●お嬢様今日は一段とお美しい

●セリーナお嬢様、ごきげんよう。新しい衣装もお似合いです


●すげぇ、いつもダンジョン配信しか見ないからこういうの初めて見た

●初めまして~、リオマモ見に来たよー

●コラボ先で炎上させんなよwww

 

 

 コメント欄はいつもと雰囲気が違っていた。

 狙い通りだ。本日は()()()()()()の視聴者が沢山来てくれないと意味が無い。

 

 開始早々、既に視聴者数は4ケタ。すぐに5ケタに乗るだろう。

 ()()()()()()()()()()()()と、()()()()()()()()()()()()()のコラボなのだからそうなるのは必然。


 そう、今日はわたくしの配信にマモリンとリオンをゲストで呼んだのだ。

 わたくしの人気企画の1つ。


 【アフヌンを頂きながら雑談ですわ♡セリーナ・ローズウッドのお庭へようこそ】は、話題の配信者をわたくしの庭園に招待して、お茶をしながら雑談を楽しむ企画。

 いつもは放送事故を懸念して【生放送・停止あり】で行っていた。

 だけど!今日の配信は【生配信・停止無し】。

 つまり、今日の配信で出すボロは包み隠さず配信される。

 

(パッとでの配信者に厳しい現実を思い知らせてやりますわよ……)


 わたくしは、心でほくそ笑む。そして配信鳥にはお上品な笑顔を向け言う。


「では、本日のゲスト様をお呼び致しますわ。リオン様、マモリン様こちらにどうぞ」


 配信枠外で待機していた2人を呼ぶ。

 2人は緊張した面持ちで画角に入る。

 

 リオンとかいう男の方は配信者としての歴は長いようだが、マモリンと組むまでは無名だった。

 わたくしという人気配信者のゲストと言う事で緊張しているらしく、ここに来た時から今現在まで、最初に挨拶を交わして以降一言も喋っていない。分厚い眼鏡で表情も解らないと来ている。

 そしてマモリン。元々わたくしがわからせたいのは彼女だ。

 やや緊張した顔をしているがリオンほどではない。美少女と言われているだけあって整った顔立ちをしている。

 ただ、仕草の1つ1つに優雅さが無い!配信者といて『見られている』と言う意識が薄い証拠だ。


「さぁ、お二人様こちらの席にどうぞ」


 2人をアフヌンが用意された席に案内する。マモリンは用意された豪華なスイーツを見て目を輝かせて喜ぶ。

 うふふ……呑気に喜んでいられるのも今の内。その、化けの皮を剥がしてさしあげますわ。


 

「リオン様、マモリン様、本日はわたくしの庭園にお越し頂き光栄ですわ」

「あー、こちらこそ有難う」


 マモリンが返す。リオンはその隣で頷いている。

 配信前からマモリンとは言葉を何度か交わしているが、本当に慣れない。女の子から、こんなおじさんの声が出るなんて……

 配信画面を見る。

 


●声が!?どういう事なの!?

●噂では聞いていたけど……実際聞くとインパクトが凄い



 案の定、初めてマモリンを見る視聴者が騒いでいた。



●マモリンは見た目が美少女で声がおじさんだ

●これがクセになるんだよ



 マモリン側の常連であろう視聴者がそう返す。


(クセになんかなる訳ないですわ!その思い込みを覚まさせてあげますわ!)


「お二人のために、今日は特別なアフヌンをご用意しましたわ」


 白を基調としたテーブルの上には豪華なアフヌンセットが3人分用意されていた。

 マモリンは「すげぇ」と言うと続ける。

 

「俺はこういうの初めてで緊張するぜ。リオンは?」

「え?ああそうだな」


 リオンはもはやずっと緊張している。もう最後まで空気でいい。


「どうぞ頂きましょう」

「やった!いただきまーす」


 そう言うと、スコーンを素手で掴み大きな口でバクリと食べる。

 レディとは思えない食べ方だ。


「うっま!!」

「お口に合って良かったですわ、私の大好きなお店の季節の限定スコーンなんですわよ」

 

 「へぇ~」と言いながらペロリとスコーンを平らげる。

 そんな数口で食べる代物じゃない……


 

●そのスコーンって王都でしか買えない品ですよね

●何日も前から予約しないと手に入らないお品物ですね。さすがセリーナお嬢様です


 

 私の視聴者さんはよく解ってくれている。

 マモリンはコメント欄を見て笑う。


「そんな凄いやつだったのか。確かに美味かった!けど、近くの街にあるスコーンも負けてないくらい美味かったぞ。ほらあの看板猫のいる」

「ああ!あのお店のスコーンは確かに美味しいですわ!わたくしもよく食べ……」

 

 はっとして口を閉じて「ほほほ」と笑う。

 慌てて配信画面を見る。


 

●セリーナお嬢様もその辺に売ってるスコーンとか食べるのかしら?

●有名なお店のスイーツしか口にしない印象だけど


 

「お……お店の前を通りかかった事がございますのよ、確かに猫がいましたわ」

「今度食ってみたらいいよ。オレンジのスコーンが俺のお勧め!」

 

 マモリンはそう言って紅茶をガブリと飲む。その紅茶もその一口の価値がいかほどか、絶対に解っていないだろう。

 わたくしは「おほほ」と無理やり笑い顔を作る。

 早くボロをさらけ出さして配信を終わらせないと、わたくしのお肌が心配だ。


「本日はおお二人に色々とお話を聞きたいと思っていますのよ」

「雑談配信って初めてで……何を喋ればいいんだ?」


 そう言って「なぁ?」とリオンを見る。


「普通にお喋りして頂ければいいんですわ、お友達とのお茶会みたいに気楽にですわ」

「なるほど、女子会ってやつだな」


 マモリンはウンウンと頷く。


「そうですわ、例えば……マモリンさんが配信者になろうと思ったきっかけとか……ですわぁ♡」


 わたくしは口の端を上げる。

 『声が面白いからウケると思った』どうせその程度だ。


(特に深い意味もなく配信者をやってるって事を視聴者さん達にさらけ出すといいですわ)

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