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まあ、そういうことらしい。

 今年は西暦何年だっけな。何年だっていい。20XX年てことで。もうすぐ地球に住まう俺達人類は終わりらしいから。


 異星人ってやつが地球に侵略してきたんだ。前触れはあった。一応イスラエルかどこかの学者だったかな。彗星とは考えられない明らかに知的な何者かの手によって制御された天体が、地球へ向かってると言い出した。


 でも、それに乗っかって煽り出したのが、スピリチュアル系と陰謀論系の動画配信者だったのが災いした。常識人なんて自称してる世の大部分を締める奴らは、どうせ与太話だろうってせせら笑うだけだった。勿論、そんな冷笑野郎の中には、世界の政治家と官僚と軍人その他諸々の権力者も含まれていた。頭のおかしい奴ら以外、誰もこの最高に素敵な来訪者を迎える準備をしてなかった。


 俺は違う。ちゃんとエイリアンとの出会いを祝して乾杯出来るように、軽井沢産のエールビールを冷蔵庫で冷やしておいたんだ。あと、つまみに殻付きアーモンドまで用意してた。それを酒好きの親父と御袋は勝手に飲み食いしちまいやがって。何が「ありがとな。俺達がエイリアンだよ」だ。そんないい加減言いやがるから、息子を立派な無職にしか育てられないんだよ。


 とにかく、来訪した異星人は、人類がお出迎えパーティの準備をしてなかったのに腹を立てたんだろう。やってくるなり、まずアメリカのメイン州からフロリダ州まで東海岸ってやつを焼き払った。すげえビームだったらしい。荘厳な宇宙船の艦首からズバッと、だったらしい。あーあ。碌でもない両親がとっておきのビールを飲まなきゃ、ニューヨークぐらいで済んでたのに。知らんけど。


 それで世界は、当然大混乱になった。アメリカの中枢焼かれたから、基軸通貨たるドルが大暴落。だから、世界中の通貨がすぐさま紙屑同然になった。何故そうなるのか、その辺りの仕組みは俺はよく分からんが、まあ、そういうことらしい。


 その後、エイリアンのデッカイ船はいくつかに分裂し、中国、ヨーロッパ、オーストラリア諸々主要国を焼き始めた。各国の軍は一応反撃に出てはいるが、全く歯が立たないらしい。いくつもの国が瞬く間に消えていった。


 でも、何故か日本にはすぐに現れなかった。エイリアンは分かっているかもしれないな。この国が落ち目の斜陽国家だってことを。腑抜けは後回しでも問題ないってことだろう。


 で、その腑抜けの国に世界各国から金持ち権力者どもが、プライベートジェットを飛ばして集まってきている。強欲だね。どうせこの国だって遅かれ早かれ消えるんだ。大人しく祖国と一緒に焼かれてろよ。


 まだ、日本の社会は機能している。まあ、物の値段は恐ろしく高いから、ついこの間、親父の結婚指輪を盗って安ワイン一ダースと交換してやった。命を繋ぐのに何の役にも立たない金の輪っかを、ポリフェノールに換えてやったんだ。俺に正当性は充分にあるだろ?


 終末映画のような暴動は、まだ起きていない。一部では犯罪が増えているらしいが、大抵の日本人は達観してるのか、只々最後の最後まで羊のように世間体に縛られているのか、変わらず日々を過ごしてる。外国の状況をテレビやインターネットで観ているだけなんだ。未だに実感が湧かないだけかもしれない。



 

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