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旅の目的(三)

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 旅とはアクシデントが付きものである。

 メーザスに入国したくても現在入国制限が掛かっていて絶賛国境の街で足止め中だ。


「はぁ、ゼスティア滅亡でこんな影響が」


 カフェのテーブルで力なく項垂れていると、シャーサが山盛りのパンケーキを食べながら呑気にアーンと言ってフォークに刺したパンケーキを差し出してきた。


「甘い物でも食べてリフレッシュしてください。とっても甘くて美味しいですよ」


 素直にパンケーキをパクついた。

 とても甘い、甘すぎる。俺はすぐに紅茶で口の中を違う意味でリフレッシュした。


「十点」

「え、なに」

「甘すぎる。俺ならもっと上品に仕上げる」


 まあ、これもアカシックレコードに繋がっているからこそ出来る訳なのだが。


「知識と技術は別だって。いい加減理解した方がいいと思うよ」

「……分かってるよ」


 こいつ、俺の失敗を全て記録に付けやがって。

 しかも、コータの成長日記だと、こいつの頭はどうなっていやがんだ。


「私、コータにはお菓子作りの才能は皆無だと思うの。腕の良い人に教えて作ってもらうのが最善だと思う」

「それは既にファッションブランド、コーシャでやってるから分かるが、駄目だ」

「どうして」

「つまらん。それにだ。自分の気持ちを込めて自ら料理して振る舞うからこそ意味があるんだ」

「お金になるよ。コータの知識を使えば商売繁盛で大金持ちでウハウハな生活できるのにしないの」


 馬鹿いえ。金なら腐るほどある。

 あのゼスティアの宝物庫から奪った物や、魔王から分捕った迷惑料が一生掛かっても使いきれない程にある。


「シャーサ、よく聞け。時代が追いつかない知識や力を軽々しく人前で使えば破滅を呼ぶ。そのことはアカシックレコードが教えてくれる。

 いいか。調子にのって、俺スゲェして快適な物を作り、得意気な顔で俺、何かしちゃいましたか。なんてやってると必ず世界に異物として捉えられて排除される。これは宇宙誕生からの歴史で既に証明済みだ」


 そう。よくある物語のチートを使ってチヤホヤされる世界線なんて長くは続かない。実際は簡単に世界に排除されて碌な死に方をしないのが現実だ。

 それを魔王討伐の途中で知った俺の気持ちがシャーサには分かるか。

 青春真っ盛り。夢見るお年頃の少年に少しは良い思いをさせてもいいじゃないか。それも俺は、そのたった一度の輝かしい青春を理不尽に奪われたんだぞ!

 ちょっとぐらいチヤホヤされてもいいじゃないか。


「なんで急に落ち込んでるの」

「世の理不尽に嘆いているだけだ」

「太く短く生きるんじゃないの」

「あほか。これ以上理不尽に奪われてたまるか。俺は細々とこっそり自分だけで楽しく暮らすんだよ」

「私もでしょ。そこは忘れないで。それよりこっそり暮らす場所なんてないでしょ」


 ふあっははは、馬鹿め。

 この俺がそんな間抜けな事をするか!


「ある。俺は魔族領に広大な土地を所有している。それも魔族も寄り付かない辺鄙な場所にな。そこに今、魔王に命じて屋敷を建てさせている」


 シャーサは指差すように突然フォークを突き出した。


「聞いてないよ! しかもなんで魔族領でコータが暮らすのよ。エルフェリアじゃないの!」

「言ってないからな。それにエルフェリアで暮らしたら必ず迷惑を掛ける。だからだ」


 そう。俺が勇者タロウってことは必ずバレる。

 しかもだ。シャーサのパパさんは俺とシャーサを結婚させようとしてるしな。結婚が嫌とかそんなのじゃないが、皇族になって目立つのは死ぬほど御免だ。


「魔族でさえ寄り付かない場所に屋敷を建てさせるなんて、よくそんな無茶を」

「まあ、あれだ。俺、あそこの事実上のトップだし」


 シャーサが間抜けな感じで口をパクパクさせている。そして自分の頬を叩いた。


「いたっ! って違う! 聞いてない、聞いてないよ! 何、あれなの。コータ魔王になったの!」

「まあ、落ち着けよ」


 そう言って人差し指で軽く彼女の唇を抑えた。


「いいか。魔王ではない。そこは勘違いするなよ。

 魔族は力こそ全て、パワーこそ全てなんだ。

 そう奴等は言っていた。故に、俺が奴等のトップに君臨した訳だ。

 だが聞け。俺は王様なんて真っ平御免だ。めんどくさいし、自由がない。だから、あの魔王の娘にその立場を譲ったのさ。そして今の俺は、魔王のご主人様だ」


 まあ、なんもご主人様らしい事なんてしてないけどな。

 魔王を倒してから一度も会ってないし。


「ご主人様って、まさかエッチなことを……

 いいえ、コータはこの前童貞だって言ってた。だからそれは無いはず。で、でも、まさかあのロリっ子に咥えさせてるんじゃ……

 あああああ、それは犯罪だわ! 禁忌だわ!」


 あまりにも煩いので防音結界を張った。

 それになんと下品な妄想だ。恥ずかしくて人様に聞かせてられない。

 これがエルフェリアの第一皇女なんだから呆れる。


「下品な妄想はやめろ」


 俺はシャーサの頭に軽くチョップをして正気に戻した。


「いいか。魔王には婚約者がいる。それもラブラブだ。だから変な妄想はするな」

「そうなの。ラブラブなの」

「ああ、こっちが恥ずかしくなるくらいにな」


 あいつら見た目はロリショタコンビだからな。

 実際はヤバい奴等だけど。


「そう。なら良かった」


 シャーサはそう言って紅茶を上品に口にした。

 なんとも言えないギャップを感じる。


「シャーサ。今夜、メーザスに密入国するぞ」

「え、今からじゃなくて」

「そこはお約束だ。密入国は闇に潜んで行うものだろ」


 俺は想像したら楽しそうで、つい口角が上がった。

 きっとスパイ映画のような熱い展開が待っているはずだ。胸が高鳴る。

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