4怪目 家庭科室
まさか家庭科室が1階だったとは。
もうヘトヘトだ。背中は汗でベトベトだし、最悪ボンバーだよ⋯⋯
「ヲイ、なんか聞こえナイka?」
家庭科室の看板(表札?)が見えてきたくらいのところで、アルトが「しー」のジェスチャーをしながら言った。⋯⋯ラッパー?
耳を澄ましてみると、確かに聞こえる。
⋯⋯ギィィィィ。
近づけば近づくほど、その音は大きくなった。
ギィィィィ。
ギィィィィ。
家庭科室の扉は前後とも閉まっていたが、前まで来たところで確実に中から聞こえてきていると確信できた。
「⋯⋯ヤバくないか?」
「何ビビってんだよ、開けるぞ」
怯えるアルトを笑いながらパッソが戸に手をかけた、その時だった。
ガタン!!
一瞬顔を強ばらせたパッソだったが、2秒前の自分の言動を思い返したのか、一気に戸を開けた。
中には1羽の鶴がいて、開けた瞬間にバッとこちらを振り向いた。
「しくしく、開けてはいけませんと釘を刺したのに」
「いや知らんし」
強気のパッソ。
「さようなら、ああさようなら⋯⋯さようなら」
そう言い残して窓から飛び去っていった。
「アホの川柳?」
最後までパッソは鶴をバカにしているようだった。
「なんか食いもんねーかな⋯⋯」
「アリマスヨ!」
パッソの独り言に、知らない声が答えた。