(番外編)ダンジョンマスター
ボクたちはなんのために生まれてきたのかな?
お父さんを泣かせて。
お母さんを泣かせて。
笑っていてほしいのに。
どうしたら笑ってくれるのかな。
でも、ボクたち疲れちゃったみたい。
ごめんね。
ごめんね。
笑わせてあげられなくてごめんね。
ボクたちのことは心配しないで。
2人なら大丈夫。
2人だから大丈夫。
だから笑顔で見送って。
笑顔でいってらっしゃいって言って。
お父さん、お母さん、いってきます!
────
ボクは『ダンジョンマスター』だ。
妹と一緒に素晴らしいダンジョンを作っている。
オープンして3日目だけど噂が噂を呼んだようで、お客がたくさんやってきている。
それもこれもボクたちが作ったダンジョンが素晴らしいからだ。
攻略するには何ヶ月もかかるだろう。
3日目だけどまだ2階層に行った人はいない。
なんせこのダンジョンは広いからね!
ギミックもたくさん考えたし、そんなに簡単にクリアされてなるものか!
さぁ、今日もたくさんのお客さんを楽しませるぞー!
ボクはモニターでお客さんたちを眺めていた。
みんな楽しそうだ。
ん?今日はソロで来てる客がいるぞ。
まぁ、1階層ならソロでも楽しめるか。
ボクはなんだかその冒険者が気になった。
強いな…
迷いも無くサクサク進んでいくぞ。
しかしもう夜だ。
夜は魔物も強くなるし活発になる。
さすがに街に引き返すだろう。
え??テント??
ダンジョンにテント持ってきたの?
しかも火をおこして何か食べだしたぞ?!
キャンプじゃん!完全にキャンプしてるじゃん!
でも魔物に襲われるだろう。
こればかりは自己責任だ。
ボクも今日はもう寝よう。
────
よし、今日も1日がんばるぞ!
昨日のキャンプしてた人は魔物にやられちゃったかな…
いや、ピンピンしてるな?
寝ないで戦ったとでも言うのか?
しかもゴリラのところまで来ちゃったじゃないか!
一緒にドラミングまでして余裕だな!
でもこの数のゴリラを一人で倒すのは無理だろう。
助け出す準備でもしておくかな。
はぁ?何この魔法??
なんでひと塊になっちゃったの?
一気に倒しちゃうんかーい!
なんて強さなんだ…
しかしまだ鍵をみつけていないだろう。
鍵の隠し場所はかなり悩んで決めたからな。
そう簡単には…って鍵もないのになぜ扉が開いた?!
待て待て、チーターか??
おいおい、もう2階層まで来ちゃったじゃないか!
今日は宿屋に泊まるんだな。
明日の洞窟は自信作だ!
今日みたいにはいかないぞ!
────
よし、洞窟の入口まで来たな。
そこを入るとすぐにいろんなギミックがあるからな!
妹と2人で考えた自信作だ。
せいぜい楽しんでくれよ。
って何してんの??
なんで山登りしてんの?
洞窟の入口あるんだから普通入るよね??
いや、ナイフ1本でこんな崖みたいなところなんで登れるの??
山頂まで行っちゃったし。
でもまぁ、正規ルートじゃないと魔法陣は出ないし、これ以上進むのは無理か。
ちょっと待て、なぜそこが開くんだよ!
そこには宝箱があるのに…
開けちゃったし…扉まで見つけちゃったし。
この人いったいどうなってるの?
でも次は海だよ。
さすがに一人で海の攻略はできないだろう。
────
ほら、困ってる。
一人で泳ぎながら魔物を退治するのってすごく大変だろう?
ん?消えたぞ?
いや、もう島にいるじゃん!!
しかも穴掘ってるじゃん!
そこは関係者ルートだよ?
正規ルートは海の中だってば!
まぁ、観賞用のドームがあるだけだし、そこからボス攻略は無理だろう。
ちょっと待てよ!
サメ死んじゃったじゃん!
ドームから見てただけでなんで死んじゃうの?
海の心ゲットしてるじゃん!
楽しそうに泳ぎやがって!
あっという間に4階層じゃないか…
「マキ!ヤバイかも!もう4階層に人が来る!」
「そんなわけないでしょ。そんな簡単に来れるはずないよ!」
「ほら、宿屋でくつろいでるよ…」
「そんな…」
「どんなやつか近くで見てくるよ。可能なら邪魔もしてくる。」
「私も行くわ。」
────
『もう来たよ…』
『どうなってるの??』
『しっ!こっち見てる』
裏側はあっちから見えないはずだ。
さっさと行けよ。
「そこにいるのは誰?」
えっ?えっ?
隠れてたはずなのになんで目の前にいるの?
「やめて!ボクたちは敵じゃない!」
────
危なかった。
迷子だって信じてくれた。
このままだとすぐに6階層に来ちゃうかも?!
「マキ、急いで続きを作らないと!」
「そうだね、急ごう!!」
────
ボクたちはダンジョンマスター。
ダンジョンを好きに作り出せるんだ。
2年もかけてここまで作り上げたのに。
数日でクリアされてしまうなんて。
急いで街を作ったけど。
もうだめだ。
真っ暗闇をみつけられた。
「もーっ!そっちはダメだよー!」
「しょうがないなー、こっち来て!」
ボクたちの負けだ。
5階層の獣、少しでも傷つけたら入口に戻るギミックに望みをかけたけどダメだった。
────
「まさかあの人も転生者だったとはね。」
「そんなこともあるんだね。」
「でも存在がチートみたいな人だったね。」
「なんでもありすぎるよね。」
「でもチョコレート美味しかったな。」
「また食べたいね。」
「ダンジョン作り頑張ろう!」
「そうだね!たくさん階層作ってまた来てもらおう!」
────
ボクたちはダンジョンマスター。
この真っ暗闇に明かりを灯す。
そしてたくさんの人を喜ばす。
お父さん、お母さん、ボクたちは元気だよ。
たとえ違う世界にいようとも。
ボクたちはやりたいことをしているよ。
大人にはなれなかったけれど。
大人にもできないことをボクたちは今しているんだ。
明日も、その次の日も、ボクたちは元気にやってるよ。
だから泣かないで。
ボクたちを信じて。
2人なら大丈夫。
2人だから大丈夫。
ボクたちは今日も笑っているよ。




