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裏側

私たちは『6のまち』にいた。

昨日はゆっくりこの街を歩き回った。

いろんな店があって楽しい街だ。


宿屋から出てきた私たちは次の階層を目指すべく街の出口を探していた。

街は壁で囲まれている。

大きな通りを進むとたいてい出口があるのだが。

「出口ないね。」

なかなか出口がみつからない。


私たちは壁沿いに歩くことにした。

(さすがにみつかるでしょ)


壁は5mくらいの高さだろうか?

今までの街よりずっと高い壁だった。

(大型の魔物でもいるのかな)


私たちはのんびりと出口を探した。

「あれ?さっきもここを通りませんでした?」

ルアンが大きな通りを見てそう言った。


「あれ?ほんとだ。」

いつの間にか見逃してしまったのだろうか?

しかしそんなことがあるだろうか?

私は遠視で上空からこの街を見てみることにした。


壁は円形にぐるっと一周している。

(壁の外は…)

真っ暗だった。

亜空間の端っこを思い出した。

空は下から見ると続いているように見えたが上に来ると空もぶつっと切れていた。

(どういうこと?)


私はルアンに風魔法で壁の向こうへ連れて行ってと頼んだ。

ルアンはいつものように私を運んでくれた。

「わぁ!真っ暗!」

やはり壁の向こう側は闇だった。

亜空間と違うのは闇ではあるがそこに空間があることだった。

亜空間は暗闇の壁になっていてそれ以上進めない。


私は炎魔法で照らしてみたが闇は闇だった。

何もない真っ暗な空間だった。


「急に難易度高すぎない?」

私は気配探知をした。

何も感じない。

魔物はいないようだ。


「もーっ!そっちはダメだよー!」

どこからか男の子の声が聞こえた。

急に暗闇に光がさしこんだ。

誰かがドアを開けているように見える。


「しょうがないなー、こっち来て!」

女の子の声がする。


私はまっすぐ明るい方へ向かった。

ドアの向こうにはこの前会った双子がいた。


「あなたたちは!名前なんだっけ。」

なんだか似たような名前だった気がする。

「ラキ!」「マキ!」また同時に言った。


ドアの向こうはいつかの司令室のようにモニターがたくさん並んでいた。

そこにはダンジョンの様子が映し出されていた。


「ここは…」

私が聞こうとすると、

「あなたいったい何者なの?!チーター?」

とマキが怒りながら私に詰め寄った。


「チーター?脚の速いネコ科の?」

と、私が言うと「それはチーターでしょ!」と違うイントネーションで言った。

「チート使う人のことよ!」マキは足を踏み鳴らして怒っている。


「あー、そういう…」

私はこの部屋を見回して、

「あなたたちこそどこから来たの?」

と聞いてみた。

どう見てもこの世界の人たちじゃない。


「ボクたちは…」2人とも黙ってしまった。


「この世界、ゲームみたいよね?」

と聞くと2人はビクッとした。


私たち3人は顔を見合わせた。

「もしかして…」

私がそこまで言うと、2人は揃って


「異世界転生?!」


と言った。

私は(やっぱり)と思った。

このダンジョンはあまりにもできすぎている。


「誰に召喚されたの?」

と聞くと、「されていない」「私たちが来たくて来た」と言った。


「お姉さん、シアさんだっけ?」

「シアでいいわ。」

「シアは誰かに召喚されたの?」

と聞かれたので頷いた。


2人はここに来た経緯を話してくれた。


2人は未熟児として生まれたこと。

赤ちゃんのときからずっと病院にいたこと。

2人とも体が弱くて大人にはなれないだろうと言われていたこと。

両親はそれでも諦めずに病院に通っていろんな話を聞かせてくれたこと。

2人が退屈しないようにアニメやゲームをたくさん持ってきてくれたこと。

10歳の誕生日前に2人して肺炎にかかってしまったこと。

泣く両親を見て天国に行く覚悟をしたこと。

2人で異世界に行こうと決めていたこと。

神様にお願いしたらこの世界に来れたこと。


2人は初めて走ったりとんだりしたんだ!と喜んでいた。


はじめは真っ暗な空間だったと言う。

2人で手を繋いだ状態で真っ暗闇にいた。

「明るくなれって思ったら明るくなったんだ!」

と言った。

私は2人を鑑定してみた。


種族が『ダンジョンマスター』になっていた。

「あなたたちダンジョンマスターなの??」

私がびっくりすると2人はニコッとして「そうだよ」と言った。


────


2人は晴れて異世界に転生し、『ダンジョンマスター』となった。

真っ暗な空間は空っぽのダンジョンだったということか。

「想像するとその通りになるの。」

とマキは言った。


ここまで作るのに2年かかったと言う。

「2年も…」

「あっという間だったよね?」

2人は楽しそうに話してくれた。


アニメやゲームでのことを思い出して創生していったと言う。

「5階までは完璧に作ったんだけどね。」

ラキが悲しそうに言った。

「こんなに早く攻略されると思ってなかったのよ!」

とマキが怒った。

どうやら想定では5階までは数ヶ月かかる予定だったという。

見てよ!と言われモニターを見ると人間たちはまだ1層にいた。


「デタラメに進むし、どんなやつか近くで見てやろうと思ったの。」

とマキは言った。

あの城での話だろう。

「裏側にいたのにみつかってしまったんだよね。」

とラキが言った。

(ごめんなさい)


「それで焦って6階を作っていたんだけど間に合わなくて。」

「少しでも引き留めようと街をパワーアップさせたんだ。」

と2人は言った。


「道もないし諦めると思ったのに壁を越えちゃうんだもん!」

マキはプンプンだった。

「そうとは知らずにごめんね。」


「がんばって続きを作るから1回帰ってくれる?」

と言われた。

私は「もちろん!」と言って2人に謝った。


私は2人に「よかったら屋敷に遊びに来ない?」と聞いてみた。

2人はちょっと悲しい顔になって、

「ボクたちはここから出られないんだ。」

と言った。

「私たちにはここしかないの。」

マキも悲しそうに言った。

しかしすぐに2人とも笑顔になってこう言った。


「ここに欲しいものを全部作るから大丈夫!」


私も笑顔になった。

ここは2人の夢の国なんだ。


私は持ってきていたチョコレートを出した。

普通の大きさに戻して2人にあげた。

2人は目を輝かせた。

「チョコレート食べてみたかったんだ!」

元の世界では禁止されていたようで食べたことがなかったそうだ。

「チョコレート味のプリンなら食べたけどね!」

2人はゆっくりとその甘さを楽しんだ。


「こっちの世界にないものを出すのは大変なんだよ。」

と教えてくれた。

「また持ってくるね。」

と約束した。


「この扉から入口に戻れるよ。」

と案内されてドアを開けた。

「またね!」


私たちは混み合う入口の近くの陰になった場所に出た。

後ろを見ても今出てきたドアはない。


(子供が作ったにしてはできすぎてるわ!)


私は感心しながら屋敷に戻った。


「また遊びに行こうね!」とアリが言った。

私は笑顔で頷いた。




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