双子
部屋の真ん中に宝箱。
私は正方形の形の部屋にいた。
サイコロの中にいるみたい。
宝箱からは生き物の気配はない。
アリがにおいを嗅いでいる。「美味しいにおいはしないね。」
「風魔法で開けてみましょうか?」とルアンが言うので私たちは壁際まで離れて宝箱を開けることにした。
ルアンが何かを唱えるとゆっくり宝箱が開いた。
特に問題はなさそうだ。
私は中身を確認した。
「鍵だね。」
中には金色の鍵が入っていた。
(次の階層への鍵かな)
私たちは鍵穴を探した。
目を凝らして見たがみつからない。
そもそもここにはどうやって入るのが正解なんだろうか?
まさかさっきの隠し扉が正解なわけはないだろう。
(転移魔法でここに来るのかな)
「あと見ていないのはどこかな?」
私は目ぼしいところは全部見たつもりだった。
「宝箱の下にあったりして!」
アリが宝箱を指差した。
(まさかね)
私は宝箱を持ち上げてみた。
「あった!!」
壇上の真ん中に鍵穴らしき穴がある。
私は鍵をさしてみた。
ゆっくりと回してみる。
さっき入ってきた隠し扉がゆっくりと開いた。
「え?」
私たちは天井に開いた扉をみつめた。
(そこに出るんかい)
ルアンが風魔法で扉まで運んでくれた。
私たちはまた山の山頂のようなところに出た。
「戻って来ちゃったわね。」
チュンが残念そうに言った。
「あそこに魔法陣ができていますね!」
ルアンが緑色に光るそれを指差した。
(段階をふまないと現れないのね)
私は魔法陣を踏んだ。
体がぐにゃりとする変な感じがした。
私たちは街の広場のような場所に出た。
魔法陣はない。
(一方通行ってことなのね)
「帰りたくなったらどうするんだろう?」
私がつぶやくと近くにいたNPCが、
「お帰りはあちらです!」と電話ボックスのような扉のついた箱型のものを指差した。
看板に説明が書かれていた。
『ここに入るとダンジョンの入口に戻ります』
「2のまちにもありましたよ。」
ルアンは前の街で見たという。
(街まで来ると戻れるようになっているのか)
「ダンジョンの途中でも帰還アイテムを使えば戻れると思うわよ。」とチュンが言った。
私は念のため1つ買うことにした。
この街は『3のまち』らしい。
造りは前の街とそっくりだった。
売ってるものは少しレベルアップしているようで値段も少し高い。
私は道具屋で帰還アイテムを探した。
「1000ゴールドまたは銅貨10枚です。」
私は1つ買うことにした。
「どこかで昼ご飯を食べようか。」
私はアリの嗅覚を信じ、店を選ばせた。
「ここがいい!」
小さな食堂だった。
「いらっしゃいませ!お好きなお席へどうぞ!」
私たちは窓際の席につきメニューを見た。
このお店は魚料理がメインのようだった。
私たちは各々食べたいものを選び注文をした。
ここの料理もなかなか美味しかった。
ダンジョンの中で新鮮な魚を食べられるとは思っていなかった。
しかし街を抜けて先に進むと納得できた。
目の前には海が広がっている。
「海だよね??」
「海みたいね。」
「海にしか見えませんね。」
「海嫌い!」
私たちはもはやここはダンジョンの中ではないんじゃないかと思い始めた。
「ここはどうやって進むのが正解なんだろう?」
私たちは何かないかと探してみた。
少し先に島のようなものが見える。
(泳ぐのは嫌だな)
海の中には魚の形をした魔物が泳いでいた。
「とりあえずあの島に行ってみようか。」
私は島に瞬間移動した。
小さな島だった。
3分も歩けば反対側まで行けてしまう。
木が数本生えていてほぼ砂浜だった。
探知してみると中央から何かを感じる。
「この下に何かあるみたい。」
私たちは掘ることにした。
ルアンが風魔法を器用に使って砂をよけてくれた。
取っ手のついた丸い扉が出てきた。
私は持ち上げて開いた。
土管のような円形の筒が真下に向かって続いていた。
ハシゴがかかっていて降りられそうだ。
「降りるしかないよね?」
みんなは頷いた。
私は真下に向かいハシゴを降りていった。
また扉はバタンッと閉まり、ドサッと砂が覆いかぶさるような音がした。
(すごいシステムだなぁ)
暗くなってしまったので小さな炎を出して上と下を照らした。
10mくらいは下に来ただろうか?
またドアノブのない開かないドアがそこにもあった。
私は(開け)と開けた。
(もしかしたらここは正規ルートじゃないのかもしれない)
案の定、進んだ先は洞窟になっていて道が2方向に分かれていた。
「どっちかな?」
私は方向感覚がなくなっていてどちらの道も同じに見えた。
チュンが飛び回りくるくると何かをしていた。
「街の方向はこっちね!多分。」
私は少し怪しく感じたので遠視で見てみた。
「チュン、残念ながら街はあっちみたい。」
と私が言うと「あれ?おかしいな?」と首を傾げた。
(勘でしたか)
私たちは街と反対側に進んだ。
久しぶりに魔物と戦ったが最初のスライムに比べるとかなり強くなっていた。
簡単な魔法を使ってくるものもいた。
人の気配は相変わらずまったくない。
進むと明るい場所に出た。
ガラスのドームのような造りになっていて、まるで海の中にいるようだった。
水に光が当たってキラキラと輝いていた。
私たちはしばらくその景色を楽しんだ。
「行き止まりですね。」ルアンがドームを一周してきてそう言った。
「海の中にでっかい魚がいるね!」
アリが見ている方を向くとそこには大きなサメのようなものが泳いでいた。
(フロアボスかな?)
「どうやって倒すんだろう?」
私たちはただ泳ぐサメを眺めた。
「泳いで攻略するタイプだったのかな…」
私は泳ぎたくなかった。
元の世界では泳げたことがない。
水着になってみんなに笑われるのも嫌だった。
なぜだか海が憎くなってきた。
サメに向かい(くたばれ)と念じた。
サメは急に動かなくなりサラサラと消えていった。
『海の心』というアイテムがカードの中に入った。
ボスも倒しちゃったみたいだし、私たちは何かが起こるのを待ってみた。
しかし何も起きない。
「ここから海に出られそうですね。」
ルアンが回すタイプのハンドルのついたハッチを指差した。
私もそれの存在はわかっていたが海には出たくなかった。
何かいいアイテムを拾っていないかとカードを確認した。
各アイテムには説明欄がついていてアイテムの使い方や特徴が書かれていた。
『海の心:水中で空気のバリアが発動し安全に水中をお進みいただけます』
(本当かな…)
私は疑いながらもハッチから海に出てみることにした。
ハッチを開けると水がこちらに流れてくると思ったが結界のようなものがあって水は入ってこなかった。
おそるおそる海の中へ出てみた。
「わぁーすごい!」アリが喜んでいる。
私たちは大きな気泡のような中にいた。
ハッチはまた勝手にバタンッと閉じた。
泳ぐように手をかくと前に進んだ。
泳げたことのない私はそれがとても新鮮で楽しかった。
(空を飛んでいるみたい)
水の中にも魔物がいて襲いかかってきた。
(炎は消えちゃうし雷は感電しそうで危険だな)
私は銛をイメージして泳ぐ魔物たちを倒していった。
「あっちに何かあるね!」
海の中に小屋みたいなものがあった。
とりあえず近寄ってみた。
どう見ても小屋だった。
ドアがついている。
「入ってみる?」みんなは頷いた。
私は慎重にドアを開けてみた。
ドアをくぐった先には街があった。
「次の街に来ちゃったみたい。」
カードを確認すると『4のまち』になっていた。
街はやはり同じ造りになっていた。
「今日はここで休もうか。」
私たちはここで一泊することにした。
1階の食堂で夕食を済ませ部屋に戻っていた。
スマホにムイから連絡がきた。
「シアさん、調子はどうですか?」
ムイは少し心配したような顔をしている。
「順調に今は第4階層まで来たよ。」
と言うと、「もうですか?噂より小さいダンジョンだったのかな?」と首を傾げていた。
「そちらは変わりない?」と聞くと「こちらはなんともありません。」と言うのでもうしばらくこっちにいると伝えて通信を切った。
「お風呂に入って寝ようか。」
私たちはまたゆっくり過ごしてベッドで休んだ。
────
朝起きると雨が降っていた。
「ダンジョンの中にも雨が降るんだね。」
朝食を済ませて外に出た。
(濡れるの嫌だな)
そう思ったが、海の心が効いているようで雨は私に当たる前に弾けた。
「おもしろーい!」アリはパチパチ弾ける雨に喜んだ。
(これなら快適だ)
私たちはさらに奥へと進んでいった。
この階層は廃墟のようだった。
崩れた建物がたくさんあって街に爆弾でも落とされたかのように壊れていた。
崩れた建物の隙間から魔物たちが襲いかかってくる。
私たちは倒しながら前方に見える崩れかかっている城に向かった。
(今回はわかりやすいな)
門も崩れていて城の中にも魔物がいた。
進んでいくとお姫様のような格好のNPCがいた。
「父上を助けて!」
と泣きながら言うと、「父が悪者に連れ去られました。悪者は城の向こうの教会にいます。どうか悪者を倒し父を救ってください。」
と真顔で説明し終えると空中に『YES』 『NO』と浮かび出た。
私はYESを選んだ。
ミッションスタート!とアナウンスがかかった。
(凝ったつくりのダンジョンだな)
私たちは教会を探した。
すぐにみつかったので中を遠視で確認した。
悪者と思われる男たちが5人いる。
ロープで縛られた王様のような男もいた。
(この人を助ければいいのね)
私は透明化して近づき、捕縛スキルを使った。
5人の男たちは決まったセリフがあったようで縛られながら喋っていた。
「何だお前は!お前たちやっちまいな!」「へい親分!」「俺の必殺技をくらえ!」「くそ!強いな!」「やられたー」「おぼえとけよ!」
ぐるぐる巻きにされたままセリフを喋っている姿はなかなか滑稽だった。
私は王様のロープを解いて腕を掴み姫の前に瞬間移動した。
「そなたが助けてくれた…礼を言おう…娘のところへ…」
王様はセリフがたくさんあったようでバグっていた。
(ごめんて)
なんだかんだで王は私に鍵をくれた。
「あちらに扉があります。」
姫は城の奥を指差した。
ミッションコンプリート!というアナウンスがかかった。
「やっと正規ルートっぽいね。」
私たちは扉に向かった。
「待って!」
何か嫌な予感がした。
(何かいる)
私はその気配に神経を集中させた。
(人?)
「そこにいるのは誰?」
私は(出てこい)と念じた。
そこには似たような黒い服を着た男の子と女の子がいた。
「やめて!僕たちは敵じゃない!」
2人は両手をあげて泣きそうな顔でこちらを見ていた。
「私はシア、あなたたちも冒険者?」
私は出てきたのが子供だったのでできるだけ優しい口調で話した。
「僕たちは…」
「私たちは…」
2人は顔を見合わせて困っている様子だった。
「迷子なの?」
と聞くと、「あっ!うん!そうなの!迷子なの!」と女の子がニコッと笑ってそう言った。
男の子は困惑顔で「えっと、うん、そうなの。」と言った。
なんだか怪しいが話を聞いてみることにした。
「お父さんかお母さんと来たの?」と聞くと、
「お父さん!」「お母さん!」と同時に言った。
「えっと、両親と来ました。」と男の子が言い直した。
「ダンジョンの入口に戻れる場所があるけどそこまで一緒に行く?」
と聞くと、「うん!」「いいえ。」と、また同時に言った。
男の子が「お願いします。」と『いいえ』と答えたのに恥ずかしそうに言った。
どうやら女の子の方がパワーバランスが上のようだった。
「この階層の街まで戻ってもいいけど、鍵をもらったから次の階層へ行けると思うんだよね。」と私が言うと2人は頷いた。
「ついていきます。」と男の子が言った。
名前を聞くと、男の子が『ラキ』女の子が『マキ』で双子だと教えてくれた。
(また似たような名前ですぐ忘れちゃいそう)
鍵を差し込み扉を開くと思った通り街に出た。
2人は「ここで大丈夫です。」と頭を下げて入口に出ると書いてあるドアを開けて入って行った。
すぐに2人の姿は見えなくなった。
(何だったんだろう)
ちょっと疑問に思ったが気にしないことにした。
いつの間にか雨があがっていた。
「お昼にしようか。」
私たちはカフェのような店を選びサンドイッチを注文した。
オープンテラスのようになっていて私たちは外にある席を選んだ。
雨上がりで街中はキラキラと輝いていた。
「泊まるには早いから先に進む?」
とアリたちに聞くと不満そうな顔をした。
「じゃあ少し先の様子を見てここに戻って来ようか?」
と言うと嬉しそうにした。
私は宿屋で部屋を取ってから進んだ先に何があるのか見に行くことにした。
────




