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新しいダンジョン

私は赤い石を眺めていた。

あれから楽園へのトンネルはどう頑張っても現れなかった。


セキはきっと家族と楽しく暮らしているだろう。

あんな素晴らしい場所で暮らせるならそれが一番いい。

こっちの世界はちょいちょい嫌なこともある。


私は赤い石をなくさないようにペンダントにした。

キリナのおばあさんにもらったペンダントにアリの入っているカゴと私の首は渋滞していた。

(肩こりとかしちゃうかな)


ムイはいつものようにモニターを眺めていた。

異変がないか調べるのが日課になっている。

ときどきアッシュがカメラ目線のようにこちらを向き、ウインクをしてきたりする。

ムイはそのたびに嫌な顔をしていた。

アッシュの探知能力は謎に包まれている。

恐ろしいほどに反応があって怖い。


北東にある島もムイの監視対象になっていた。

またいつ魔族たちの街を襲うかもしれないからだ。


しかし人間たちはおとなしいものだった。

頭と呼ばれた大男は家に閉じこもって外に出てこなくなったようだ。

私はさすがに可哀想になって呪いを解いてやったのだが、塞ぎ込んでしまった。

村の人たちは誰も彼のことを心配しなかった。


畑を作る様子もなく、海に漁に出る様子もない。

何を食べて暮らしているのだろうか。

土地は比較的豊かなところだから食用の植物もそれなりに生えているだろう。

しかし植物の知識もなさそうだ。


他力本願で何年も過ごすとこんなに何もできない人間ができてしまうのか。

ここの人たちは自分たちの力だけで生きていくことは無理なのかもしれない。

それもまたこの人たちの運命だ。

切り拓くことも朽ちていくことも自分たちの選択だ。


────


私はイマイチやる気が出なかった。

何かをしたいという気持ちにならなかった。

それはアリや妖精たちも一緒のようだった。


「新しくできたダンジョンにでも行ってきたらどうですか?」ムイは私たちがゴロゴロしてるのに見かねてそう言ってきた。


そのダンジョンは聖女の生成したものではなく、自然発生したダンジョンだと言うことだ。

かなりの大型ダンジョンらしく、階層を1つ上がるだけでも数週間かかると言われているそうだ。


「そんなところに行ったらしばらく帰ってこないかもよ?」

私はムイを睨みつけた。

「食料をたくさん持っていかないといけませんね。」

ムイはにこやかに答えた。

(どこまで本気なのかわからない)


私は遠視でダンジョンの入口を見てみた。

人がたくさん訪れていた。

「暇だし、行ってみる?」私はアリたちに聞いてみた。

「食べ物たくさん用意しないと!」アリはムイの話を聞いていたようでククルのところへ走っていった。


私は大きめのリュックを用意した。

こうなったら泊りがけでダンジョン探索だ。


私はキャンプを思い出してテントや寝袋を用意した。

鍋や食器も用意して結構な大荷物になった。

私はちょっと考えてそれらを小さくした。

(使うときに戻せばいいや)


私はミニチュアのキャンプ道具を巾着に入れていつものカバンに入れた。

(あとは食べ物だな)


アリが上から「手伝ってー」と叫んでいる。

見ると大きな袋にたくさんの食料が入っていた。

私は両手で抱えて下におりた。


「これ全部持っていくの?」

アリは嬉しそうに頷いている。

「でも腐っちゃうかもよ?」

と言って私は考えた。


(真空パックにしよう)


私はあの空気を抜いてパッキングするのを見るのが好きだった。

あの装置を思い出して具現化した。

潰れないものをどんどん真空パックした。

(楽しい!)

さらにかさばってしまったのでこちらも小さくした。

アリが悲しい声を出した。

「食べるときにもとに戻すから。」

アリは安心したようだ。


いつものカバンがパンパンになった。

あとは現地調達できるものはしよう。


出発しようとしているとムイがお金の入った袋を渡してくれた。

「噂ではお金が必要になるそうです。」

土産物屋でもあるのだろうか?

私は受け取ってカバンに入れた。


「何かあったら連絡して。」と言い、ダンジョン近くに瞬間移動した。


────


入口は人が並んでいた。

「すごい混んでるね。」

私は少し不安になった。

アリと妖精たちは人間には見えない仕様になっている。

私は他人から見ればソロの冒険者だ。

まわりはパーティを組んでいるようでワイワイ楽しそうだった。


(寂しくなんかないんだからね)


やっと私の順番になった。

受付がありカードのようなものを渡された。

身分証のようなシステムになっていて触ると自分にしか見えない画面が浮かび上がった。


「ダンジョン内ではこちらのシステムをお使いください。」

ロボットのようなアナウンスが流れている。

(すごく管理されているダンジョンなんだな)


入口を抜けると広場になっていた。

掲示板や案内板もあった。

その奥にはなんと建物が並びどこかの街のようだった。


私はベンチに座りさっきもらったカードを確認してみた。

現在地やダンジョンレベル、現在の階層などが確認できる。

私が今いるのは『始まりのまち』という場所らしい。

ミッションというのがずらっと出てきて、どれも未攻略だった。

(そりゃそうだ)


私は始まりのまちを散策した。

宿屋や武器屋に防具屋、道具屋もあり、ここで一通り冒険に備えることができるようになっていた。

(ここでお金を使うのか)


まちには各所にNPCがいた。

何度話しかけても同じことしか言わない。

(RPGの世界に来ちゃったみたい)


私は少し嫌な予感がしていたが奥に進むことにした。


なだらかな丘になっていて既視感のある魔物が出てきた。

(水色のスライム…)


冒険者たちは剣や杖で殴って倒していた。

倒すと経験値とゴールドときどきアイテムも出てくるようだった。

それらはすべて最初にもらったカードの中に換算されていった。

アイテムもどういう仕組みかカードの中に保管されているようだった。

(ゲームみたい)


私はスライムを倒しながら先に進んでいった。

ハチの魔物やコウモリの魔物など進むにつれて強くなっている感じがした。

そのへんはいつものダンジョンと同じだった。

違うのはカードに記載されている経験値やゴールドなど目に見える成果があることだった。

このシステムのおかげで冒険者たちは目標を立てて進んだり、ミッションをクリアする達成感を楽しんでいるようだった。


(誰が運営してるんだろう)


日が暮れてきた。

魔物も昼よりも強くなった。

(寝るときはどうするべきなんだろう)


冒険者たちは引き返していった。

帰るのか宿屋に泊まるのかはわからないがダンジョンの真ん中で野宿する人はいないようだった。


私はどこかにテントを張ろうと思い、いい場所を探した。

魔物は定期的に現れ、襲ってくる。

(これじゃあ眠れないな)


私は人目のないところでテントを出し、(魔物に襲われない)と念じて中に寝袋を出した。

炎魔法で火をおこし、持ってきた食材を焼いて食べた。

アリたちもキャンプが新鮮だったようで楽しく過ごせた。

お腹が満たされたので寝ることにした。


────


朝になったようだ。

私は人が来る前にテントや寝袋を片付けた。

調理しなくてもいいものを食べてから、さらに奥へと進んだ。

角の生えたウサギや鎧をまとった戦士など統一感のない魔物たちが次々と出てきた。

私はサクサク進んでいった。


この辺りだとまだ人がたくさんいる。

早く上の階層に行きたいものだがなかなか上がる手段が見つからない。

(本当に数週間かかるのかもしれない)


「ほんとに広いダンジョンだなぁ!」

私は空を見上げた。

ダンジョンの中にいるとわかっていても外の世界と遜色のない場所だった。


「ミッションクリアまであと3匹頑張ろう!」「おー!」

近くでパーティを組んでる冒険者たちががんばっていた。


(私はミッションスルーで先に進もう)


草原を進むと目の前に森が出てきた。

木がたくさん生えていてなんだか薄暗い。

中には人の気配はない。

(強い魔物がいるかもしれない)


私は慎重に進んだ。

密に生えている木のせいで下まで光が届いていない。

私は炎魔法で辺りを照らしながら進んだ。


「何かいる」

前方から少し強そうな魔物の気配がした。

出てきたのはゴリラに似た魔物だった。

ゴリラは胸を叩きドラミングをしている。

なぜだろうか、いつの間にか私も真似をしていた。

「シア楽しそうだね!」アリが笑っていた。


気がつくと私はゴリラに囲まれていた。

どうやら仲間を呼ぶ行為だったようだ。

なんだか愛嬌のあるゴリラたちを倒すのは気が引けるがここはダンジョンだ。

私は風魔法でひとまとめにして雷魔法を打ち込んだ。

ゴリラたちはサラサラと消えていった。

「シア、あの木だけ様子が違うわね。」

チュンが1本だけ太い幹の木をみつけた。

「いってみよう」


近づくと幹に線が入っている。

「この形って」

ドアの形だった。

しかしドアノブはない。

どうやって開けるのだろうか。


押したり引いたりしてみたが開かない。

鍵穴のような穴がある。

(鍵が必要ってこと?)

近くを探したが鍵はみつからない。


私は面倒になって(開け)と、念じた。

ドアはこちら側にギギっと開いた。


上に行く階段がある。

「上の階層に行けるのかな?」

私はゆっくり階段へ進んだ。

バタンッ

中にはいるとドアが閉まった。

こちら側にもドアノブはない。

(まぁいいか)


私は暗い階段を照らしながら上に進んでいった。

どう考えても木の中ではない広さだった。

どういう仕組みなんだろうか。

転移魔法でも踏んだのだろうか。

螺旋階段になっていてなんだか目が回ってきた。

「ゴールが見えましたよ!」ルアンが叫んだ。


天井が見えて階段のところが明るく穴が空いているように見えた。

階段を上がりきるとそこにはまた街があった。

カードを確認すると『2のまち』と出た。

階層も『2』になった。


NPCはたくさんいるが人間の気配はない。

私たちはここで少し休むことにした。

「何か食べようよ!」アリがキョロキョロクンクンとにおいを嗅いでいる。

アリに言われるまま進むと宿屋の1階が食堂になっている建物に出た。

「ここがいい!」


私はお店に入った。

「いらっしゃいませ!お好きなお席へどうぞ!」

笑顔のNPCがテーブルについた私に水を持ってくる。

メニューは料理の説明付きだった。

(良心的!)


私はみんなの食べたいものを注文した。

店内は明るくきれいで居心地が良かった。

窓から通りが見える。

やはり他の人たちの姿はない。

(あの鍵をみつけるのが大変なのかも)


すぐに美味しそうな料理が並んだ。

私たちはもりもり食べた。

ダンジョンの中でこんな食事ができるなんて思っていなかった。

支払いは魔物を倒して手に入れたゴールドというここの通貨システムも使えた。

「ではゴールド払いで。」

私はクレジットカードでも使うかのようにこのダンジョンのカードを読み取り装置のようなものにかざした。

(こんな技術がこの世界にあるなんて)


「ゴールドもたくさんあるし今日は宿屋に泊まろうか?」

みんなは賛成!と喜んだ。

「1泊1部屋お願いします。」

「1000ゴールドまたは銅貨10枚になります。」

私はカードをかざしゴールドを支払った。


スライム1匹倒すと10ゴールドくらいもらえていた気がする。

強い魔物だともっともらえているだろう。

(ここに住めるんじゃないだろうか)

現在の残りゴールドは58060。

ゴリラを大量に倒したのであそこでかなり稼げたようだ。

部屋に邪魔な荷物を置いてから街を散策してみることにした。


本当によく作り込まれた街だった。

道具屋には薬草や薬のようなものも売っている。

「転移アイテムもあるわね。」チュンも興味津々だった。

あれ買って!とアリが指差したのはクッキーのような焼菓子だった。

(そんなものまであるなんて)

私たちはまるで旅行にでも来ているような気分で街をまわった。

宿に戻り大浴場に行くと中は広くかなり立派な造りになっていた。

(どこかの温泉みたい)

その日私たちはゆっくりとこの街を楽しんだ。


────


翌朝、しっかり朝食もいただき私たちは出発した。

アリはクッキーが気に入ったようで去り際にたくさん買わされた。

ポリポリと食べながら上機嫌なアリだった。


街は塀に囲まれていた。

どうやら塀の中には魔物は入ってこれないようだ。

(うまくできてるなぁ)


目の前は昨日の景色とは違い大きな洞窟のような入口がある。

「ここ入っていくのかな?」

私は中を覗いてみるが暗くてよくわからない。

「ここ登ればすぐ上の階層に行けるんじゃない?」アリは洞窟の入口の脇から行けると言い張る。

(行けなくはないけど)


私はいつかどこかで買ったナイフを出した。

身体強化のスキルを発動する。

(私はここを登れる)と念じた。

ナイフを岩に刺しながら登っていく。

「ナイフの使い方おかしくなぁい?」チュンに笑われたが昔テレビで観たときはこんな感じでおじさんが山を登っていた。

(登れているし細かいことは気にしない)


魔物も出ないまま山の山頂のような場所に出た。

「結構登ったね!」

私は額の汗を拭った。

さっきまでいた街が小さく見える。

「さて、上の階層に繋がる何かはあるかな?」

私たちは何かないかと探し回った。


物理的に上がるタイプではないようだった。

転移魔法のようなもので次の階層に行くようだった。

「やっぱり洞窟を進まないとダメだったか。」


「何かありますよ!」ルアンが足元に四角い切れ込みをみつけた。

(開け)と念じるとこちら側に開いた。

隠し扉のようだった。


中は部屋になっている。

壇上に宝箱のようなものがあった。

「降りてみようか」

私たちは飛び降りた。

また扉はバタンッと閉じた。


「この宝箱、開けていいのかな…」


私は罠がないか調べた。


────


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