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自業自得

太陽が沈もうとしていた。

辺りをオレンジ色に染めて太陽が沈もうとしていた。

こんな美しい夕日をバックに自分の利益のために誰かを傷つけている人がいる。


(許さない)


私は水魔法を応用して雨を降らせた。

人間たちが矢に火をつけて放っているからだ。


燃えていたドアや壁はシューッと音を立てて鎮火した。

大事には至らなかったようだ。

チュンは怪我をした魔族の人たちのところをまわり回復魔法をかけている。


人間たちは「撤退!」という声が聞こえると「やれやれ」という感じで引き返し始めた。

アリは黒い熊になりその人たちの通路を塞いだ。


退路は1本しかなかったようで街の方へ逃げる者、森へ逃げる者と散り散りになった。

森へ逃げた者は人型のセキの魔法の餌食になった。


地面がポヨンポヨンになっていたり、ネバネバになっていたり、蜘蛛の巣のようなものもあった。

人間たちはそれに引っかかり逃げることができなくなっていた。


私は街の方へ戻ってきた人間たちを捕縛スキルでぐるぐる巻きにした。

人間たちはどこから出しているのかわからない奇声をあげて助けを求めている。

ここの魔族たちは防戦一方で反撃はほとんどしてこなかったのだろう。


人間たちが来ると家に閉じこもり身を守っていたようだった。

通りに魔族の姿はほとんどなかった。

(無抵抗の人たちを傷つけるなんて)


セキが捕まえた人たちもすべて捕縛した。

全部で10数名。

泣きわめく人間もいた。

「俺たちは好きでこんなことをしてるわけじゃないんだ!」

さっきまでニヤニヤしながら弓を放っていた男が命乞いを始めた。

アリは目の前で咆えて威嚇した。

男は声も出せずに黙った。


私は指示を出していたリーダー格の男に話しかけた。

「なぜこんなことをする?」

男は目を合わさず何も言わない。

(全部話せ)と私は念じた。


男はそっぽを向いたまま話し始めた。

「私たちは豊かな土地を求めて西からやって来た。1年の半分以上を雪と共に暮らさないといけない厳しい土地からだ。」

どうやらここにいる人間たちはかつてリビルドの大陸に住んでいたようだった。

船を作り、荒波を越えてやっとこの土地にたどり着いたという。

雪深い土地に比べてここは楽園のようだった。

しかし楽園には見たことのない恐ろしい姿の魔族たちがいた。

魔族たちは見たこともない食べ物を食べ、見たこともない道具をうまく使い豊かに暮らしていたという。


人間たちは初めは隠れて暮らしていたという。

徐々に人間たちはここでの暮らしに慣れ、魔族の街にやって来ては盗むことを覚えた。

魔族たちは見た目に反して攻撃してこなかったと言う。

そうしていくうちにだんだんとエスカレートして今の交戦状態のようになってしまったと言う。


人間たちのリーダーは粗暴な大男で、あれを持ってこいと命令するんだという。

それに背くと暴力をふるわれ、食べ物も分けてもらえなくなるという。


「自分たちで植物を育てたり狩りをしたりしないの?」

私が聞くと、「奪うほうが楽だ。」と答えた。

(なんてクズたちなの)


「皆殺しにしちゃえばいいのに!」

チュンはかなり怒っていた。

それを聞いて人間たちは喚いた。

「殺さないでくれー」

「俺たちは悪くない!」

「悪いのは頭だ!」

「殺すのは頭だけにしてくれー」


私は呆れて言葉が出なかった。


とりあえず人間たちの村に行ってみることにした。

「セキ、この人たちを運んでくれる?」

私は人間たちを一つに縛りあげた。

そして大きな網を出して袋のようなものを作り、そこに放り込んだ。

「任せて!」

セキは大きなドラゴンになり袋の端を咥えて飛んだ。


人間たちは恐怖で失神している者もいた。

私は飛んでいるセキの背中に瞬間移動して一緒に島の北側に向かった。

アリはすでにハムスターの姿でカゴの中にいた。


────


人間たちの村は晩御飯の最中だった。

家々からいい匂いが漂っていて、楽しそうな笑い声さえ聞こえてきた。

セキは村の中心にある空き地に網を落とした。

ドスンッという音が村に響いた。

セキはハムスターの姿に戻りアリの隣におさまった。


大きな音と「痛いー」「助けてー」という声に気がついて人間たちが家から出てきた。

網の中に人がいるとわかると「なんだこりゃ!」と騒ぎ、縄を切るものを持ってこい!と叫んだ。


大きな家から大男が不機嫌そうな顔をして出てきた。

ぐるぐる巻きにされている男たちに向かい、「何をしてる」と怒鳴った。


私はしばらく物陰からその状況を観察していた。


斧やナタを持った男たちが必死に縄を切っている。

大男は「物資はどうした?食べ物を持ってこいと言っただろうが!」と怒鳴りつけて近くにいた男を蹴った。


「熊が…」「ドラゴンが…」「ぐにゃぐにゃでベトベトで…」

男たちは口々に説明しようとしていたがまったく要領を得ていない。


「魔族たちめ、調子に乗りやがって…物資のために生かしておいたがそろそろ見せしめに一人殺るか。」

と言いだした。


私は腹が立ってその男を念動力で宙に浮かせた。

男は「なんだなんだ」と宙でもがいている。


私は人間たちの前に姿を現すと、「見せしめにお前を殺そうか?」と言ってやった。

大男は私の姿を見て「やれるものならやってみろ!お前みたいな小娘に何ができる!」と笑った。


私は男を空中でくるくる回した。

男は目を回し、「やめろ!」と叫んでいる。

それからゴムに吊らされているかのように上から下へビョンビョンとその体を揺さぶった。


男は「悪かった。許してくれ。」と情けない顔をして私に頼んできた。


「許さない。」

私は男を睨みつけた。


今ここで許したとしてもすぐに同じことをするだろう。

男を宙に浮かせたまま私はどうすべきか考えた。

他の人間たちは助けようとせず自分の家に逃げ込んで出てこようとはしなかった。

網の中にいる男たちも救助を途中にされそのまま放置されていた。


(助け合うことすらできないのか)


「何でもするから許してくれ!」

男は必死に命乞いをしている。


この土地を奪うのは簡単だろう。

海に放り投げればいい。

戻ってくるなと言えば戻ってこないかもしれない。

しかしまたどこかの土地にたどり着いたら、そこで同じことをするかもしれない。


呪いで魔族たちを襲わないようにすることも可能だろう。

亜空間に閉じ込めることもできる。


私は悩んだ。

そして解放した。


「魔族たちの土地に足を踏み入れたら災いが起こるだろう。」


そう言って私は境界線になっている森に瞬間移動した。


────


「どうするつもり?」

チュンは不可解だと言わんばかりの顔をしていた。

「シアは優しいなぁ。」アリは少し呆れていた。


「今からこの森に災いを作るよ。」

セキは察したようでニヤッと笑った。

「ボクが得意なやつだね!」


私たちは森にありとあらゆる仕掛けを作った。

セキは喜んでおかしな魔法をたくさん設置した。

「ここを踏むと全身真っ赤になって痒くなるよ!」

セキの魔法がどんな仕組みになっているかはわからない。

それがゆえに解除なんてできないだろう。


私は境界線に線を引くイメージをして(ここを越えた人間は自分の一番怖いものが目の前に現れる妄想に取り憑かれる)と呪いをかけた。


間違って魔族が近づかないようにもしないといけない。

魔族には人間側の土地に入ると(家に帰りたくなる)という呪いをかけた。


(これで棲み分けができるといいんだけど)


────


豊かな土地であるから人間たちだけでも十分暮らしていけるだろう。

もし嫌ならまた船を作って出ていけばいい。


すっかり暗くなってしまったので私たちは帰ることにした。


────


食事を済ませて人間たちや魔族たちの動きを観察してみた。

魔族たちはいつものように夜を迎え、眠りについたようだった。

大男は解放された途端に自分の家に逃げ込んだ。

網に入れられた人たちはそのまま放置されるようだった。


「また明日にしよう。」

私たちは寝ることにした。


────


次の日、食事を済ませた私たちはモニター越しに両方の動きを観察した。


魔族たちはいつものように自分の仕事を始め、いつものように過ごしているようだった。

人間たちはと言うと、やっと縄を解いてもらいぐるぐる巻にされていた人たちが解放された。

ぐったりしたその人たちは自分の家に入って行った。


大男は警戒しながら外に出てきた。

私たちがいないのを確認すると、

「お前ら!食べ物を盗ってこい!」と叫んだ。

家の中から出てくる者はいなかった。


大男は狂ったようにドアや壁を叩いて回っている。

しかしカーテンを閉めて誰も外には出てこなかった。


諦めたように大男は大きな斧を持って森の方へ歩いて行った。

「魔族のくせに許さん。」

ブツブツと何かを言いながら進んでいく。

途中でセキの作ったネバネバにハマり、臭い粘液を浴びて服がボロボロになったりしていたが男は戻ることなく進んでいった。

「調子に乗りやがって。皆殺しにしてやる。」

大男は狂ったように前に進んで行った。

そして私の作った境界線を跨いだ。


大男はピクッとしてその場で固まった。

目をギョロっとさせて目の前の見えないものに斧を振り回している。

「やめろ!来るな!」

私たちには何が見えているのかはわからない。


大男はとうとう家の方に走っていった。

傷だらけになりながらセキの作った仕掛けにハマりながらも「やめろ!あっちいけ!」と見えない何かに叫んでいた。


村の人間たちは窓越しに大男を見ていた。

ひどい姿で何かに怯え大声で叫んでいる男を。


私たちはそれ以上見るのをやめた。

きっともう魔族のところへ盗みに行く人はいないだろう。

あとは自分たち次第だ。

人間たちにその力があれば生き延びることができるだろう。


「ラグの運転の練習しようっと。」

アリは「ボクも乗る!」と言ってついてきた。


私は屋敷のまわりをゆっくりと飛んだ。


平和は作ろうと思えば作れるものだと思った。

しかし大きな力に飲まれてしまう人は多い。


一人一人が平和を願わないとそれは叶わない。


(こうしてのんびり過ごせる私は幸せ者だな)


今日も天気がいい。

鳥が鳴きながら飛んでいった。




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