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派遣

私は眠るのが怖くなった。

あの夢はいったい何だったのだろう。


私は予知夢のスキルがないか確認した。

(大丈夫だ、そんなスキルなかった)


でももし封印されている魔王が依代を探しているとしたら…

私はそうならないように隙を作らないように過ごした。

常にまわりの気配を察知し、物音にも敏感になった。


「シア、怖い顔してる」とアリに言われた。

確かにピリピリしていて笑顔になる暇がなかった。

「ごめんね」私はアリを撫でた。


こういう時はレベリングだ。

私は亜空間に行った。


────


アリとセキを妖精たちに任せて私は一人で精神面を鍛えるためにいろいろ試してみた。

目をつぶり気配を感じるだけで攻撃を避けたり、綱渡りのように油断したら落ちるような状況を作ってみたり、まわりの音を一切遮断する練習もしてみた。

何がどう役に立つのかもあまり考えずに思いついたことを全部やってみた。


何かしている間はあの夢のことを忘れていられる。


封印のスキルは無理だとして、呪いで封じこめることができないかと思い、封じ込めるイメージトレーニングもしてみた。

対象をギュッとまるめて固めるイメージ。

ぐるぐるに縛りつけて動けなくするイメージ。

いろんな状況下で相手の動きを無効化させるイメージトレーニングをした。


私のスキル全般はイメージが強いほど効き目も強い傾向にある。

強く念じれば効果も強いはずだ。


「お腹空いちゃった」とアリとセキはギブアップの様子だった。

私たちは屋敷に戻ることにした。


────


屋敷に戻るとムイが叫んでいた。

「誰だお前は!」


廊下には黒髪ボブヘアの美少女がいた。

「私はメイヤ様の下僕、リリです。」

と見たことのある変なお辞儀をした。


悪魔がやってきてリリを応接室に案内した。


「メイヤの下僕が我が屋敷に何用ですかな?」

悪魔はいつものニヤニヤで聞いた。


「シア殿の身に危険があるのでお守りするように仰せつかっております。」

リリは礼儀正しく答えた。


(私の身に危険?)


私はリリを鑑定してみたが鑑定不能と出た。

私より強い遮断スキルの持ち主のようだ。


「シアの身に何が起こるとメイヤは言ってるんだい?」

悪魔はニヤニヤをやめてリリに聞いた。


「邪悪なモノがシア殿を狙っております。」

「メイヤがそれを気取ったということか。」

リリは頷いた。


「承知した。では頼む。」

悪魔はそう言ってニヤと出ていってしまった。


私とムイとリリは応接室に取り残された。

(頼むってそんな簡単に決めてよかったこと?)


「とりあえず地下室へ行きませんか?」

ムイがリリを地下室へ案内した。


────


リリは私のすぐ横に座った。

「あの、他にも椅子空いてますけど…」

と私が言うと、

「シア殿から離れるなと言われておりますので。」

と、リリは頭を下げた。


(近い)


「メイヤさんは今どちらに?」と聞くと、

「ご主人様は他人に居場所をお教えいたしません。」

とキッパリ言われた。


「リリさんの種族というかご職業は?」

と、ムイが聞くと、

「私もシア殿と同じように異世界から転生してきた者です。」

と、自分のことを話し始めた。


召喚されたのは数百年前で、メイヤが引退するときに眠らされたと言う。

最近の復活で数十年ぶりに起こされたのだと言う。

「おそらく90年くらいは箱の中で眠っておりました。」

と、サラッと言った。

暗黒騎士としてメイヤをずっと守ってきたという。


見た目は私と年齢も変わらないように見える。

しかしうちの悪魔があっさり認めてしまうくらい力のある人なんだろう。

あの悪魔を支えてきたと言うだけあってただ者ならぬ気配を感じる。

(すごい人なんだろうな)


そう思っていた矢先、ぐぅ〜という音が響いた。

アリとセキは「ボクじゃない」と首を横に振っている。


「リリさん、何か食べましょうか。」

私が聞くと、

「いいえ!大丈夫です!」と言いながら、またぐぅ〜と鳴った。


リリは色白だった顔を真っ赤にしている。

「無理しないほうがいいですよ、今用意させますね。」

とムイが階段を上がっていった。


リリは両手で顔を隠し、「こんなはずじゃなかったのに。」と嘆いた。


「本当はクールなキャラでいたかったんだけど…」と舌をペロッと出して笑った。


チュンが「やっぱり!」と言って出てきた。

「あんたリリエラね?!」とリリに向かって叫んだ。


「バレたらしかたがない。」

リリは美少女から背が高くてスレンダーな大人の女性に変身した。


「なんで姿を変えてたのよ!」

「あんたがいるからに決まってるでしょ!」


2人は知り合いのようでケンカを始めてしまった。

「昔を知ってる人に会いたくなかったのよ!」

と、リリは恥ずかしそうに言った。


召喚されたのはチュンがメイヤを責め立てているときらしい。

メイヤは憔悴して自分を守ってくれる存在を求めたと言う話だった。


「ほんと使えない子で私に口で負けてよく泣いていたわよね!」

と、チュンはドヤ顔をして言った。

リリは泣きそうになっている。

「だから武力だけでも伸ばそうとすごく努力したんだから…」


(この2人には歴史があるようだ)


「だからここには行きたくないって言ったのに…」

リリは泣きそうな顔をしたがお腹がまたぐぅ〜と鳴った。

私はついに笑ってしまった。


「まずは何か食べに行こう。」

私はリリを連れて階段を上がった。

ムイがちょうど呼びに来たところだった。


リリは最初遠慮していたが、食べ始めると「なにこれ!美味しい!」と大興奮でもりもり食べた。

いいだけ食べ終えたあとにハッとして、「私ったら…」と暗い顔になってしまった。

(喜怒哀楽の激しい人だな)


「リリさんのこと、なんとなくわかったのでどうぞ無理をせず自然体で接してくれませんか?」

と私は言った。


リリは照れ笑いをして、「クールキャラは無理がありました。」と言った。

チュンがすかさず「あんたみたいなドジっ子にクールキャラなんて無理に決まってるでしょ!」と早口でダメ出しをした。

「チュン、少し優しくしてあげて…」

と私に言われると、「私はいつでも優しいわよ!ねぇ、そうでしょ!」とリリに詰め寄っていた。

私はチュンを睨んだ。

「わかったわよ…」チュンはおとなしくなった。


リリは大人っぽい見た目に反してドジっ子らしい。

ムイは説明しなくても空気を読んで理解したようだった。


「しかしシアさんの身に危険とは具体的にどういうことなんでしょうね?」

とムイが聞いた。

私はすっかりそのことを忘れていた。


「魔王が復活するためにシアさんのことが必要なんじゃないかとご主人様は考えております。」

リリは真面目に答えた。


「私の体を乗っ取るということかな?」

「その可能性もありますし、単純に復活の儀式のために必要な可能性もあります。」

(儀式…呪物として必要ということかな)


「ご主人様もあの洞窟の存在を確認しました。」

強固な結界が張ってあり、近づけない状態だと言ってたそうだ。


「メイヤでも近づけないなんて相当強い結界ね。」

チュンは険しい顔をした。


「忘れておりました。この屋敷に結界を張るように言われておりました。」


リリは何やら呪文を唱えだした。

リリから何か黒いものが出てきて広がり屋敷を覆った。

それを数回繰り返した。


「私の命をかけてここをお守りいたします。」

リリはまたあの変なお辞儀をした。


リリに部屋を用意するとムイは言ったが、一緒に寝ると言い出した。

私はしかたなく隣にベッドをもう一つ用意した。

リリはふかふかのベッドを気に入ったらしく、子供みたいにお尻で跳ねて喜んでいた。


チュンに「子供ね」と言われてまた落ち込んでいた。

私はまたチュンを睨みつけた。


私たちとリリとの不思議な共同生活が始まった。



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