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南の大陸

私は朝から生霊になり南に向かった。

オアシスから南はしばらく砂漠が続いていた。

(この広大な砂漠を進んだリザードマンはすごいな)


私なら途中でどうにかなってしまいそうなほど広い砂漠だった。

またゴツゴツした岩場を越えると緑色の木々が見えてきた。

川が流れている。

上流の方は山になっている。


少し進むと建物が見えた。

建物といっても屋根は落ち、壁は崩れていた。

前に見た魔族の廃墟にそっくりだった。


人の姿はない。

ここも壊すだけ壊して放置されているようだ。

(必要もないのにこんなことするなんてひどい)


私は慎重にさらに南へ進んだ。

街の気配がする。


数百km進むと大きな街が出てきた。

ダイオの城下町を思わせた。


見た感じは普通の街だった。

人々は平和そうに暮らしている。

この街には城がない。

王族はいないということかな。


私は首謀者を突き止めるべく周辺の土地を調べた。


みつけた街から南東にいくと城があった。

こじんまりとした城だったが、深い堀に囲まれていて防御面では優秀そうな城だった。


私は意識を戻した。

城の中は遠視で確認しよう。


────


いつものように遠視でみながら地下室のモニターに見えているものを映した。

ムイが隣で少し怒っていた。

「どんなやつがあんなひどいことをしたんでしょうね。」


私は城の中へ入っていく。

この城には結界などは張られていなかった。

兵士はたくさんいるようだ。

門や城壁の上で見回りをしている姿がたくさん見えた。

私がザッと周辺を見た限りではこの城に対する脅威はみられなかった。


(自分たちで追い出したリザードマンたちからの逆襲を恐れているとでもいうのかな)


王は王妃と大きな窓のある部屋にいた。

2人はそこから外を眺めている。

「いつあのトカゲどもが攻めてくるやもわからん。」

王は王妃とそんな話をしていた。


2人には王女と王子の2人の子供がいた。

2人ともそろそろ成人を迎えてもいいような年齢にみえた。

2人は別々の部屋で退屈そうに過ごしていた。

「トカゲなんてもう死んでしまっただろうに。お父様は何をそんなに恐れているのかしら?」

王女は怒りを顕わに従者に向かってつぶやいていた。

「早くどこかにお嫁にいきたいわ!」


王子は王女より幼く見えた。

どうやら勉強の時間のようで本を持った先生のような人に睨まれていた。

王子は本から目をそらし、外をぼんやり眺めていた。

「王子様!魔法のお勉強の最中ですよ!」

先生はバンッとテーブルを叩いた。

王子は渋々視線を本に戻した。


────


私とムイは呆れていた。

勝手に戦争を始めて勝手に追い出して勝手に怖がっている。


「怖がらせておけばいいわよ。」チュンも呆れてそう言った。

私たちは頷いた。

助けてやる価値もない。

今のところ脅威も感じられなかった。


私はときどき監視をするだけで干渉はしないことにした。

(ときどき槍でも射ち込んでやればおとなしくしてるだろう)


────


南の大陸には城を取り囲むように大きな街が3つあった。

海岸線には小さな漁村が数ヶ所あったが全体的な人口としてはリビルドの半分くらいの規模しかなさそうだ。


城の外ではリザードマンの噂話すらするものはいない。

きっと王族やら貴族たちが勝手に決めて攻め込んだのだろう。


(民のために戦争をしたとは思えない)

人間たちの身勝手さに吐き気がした。


────


南の大陸にも封印されている魔王の形跡や気配はなかった。

このままどこかで封印されたままならいいのだが。


セキが「新しい姿をみて!」と言うので、久しぶりに亜空間へ行くことにした。


セキのデタラメな魔法で無惨な姿になっているあの何もない亜空間に来た。


セキは喜んで本来のドラゴンの姿を披露してくれた。

その姿は以前の大きさを遥かに超え、よりスマートで美しかった。

セキが近くで羽ばたくと私は吹き飛ばされてしまった。

すぐにルアンが風魔法で助けてくれた。

「ママごめん!」

セキはドシンッと地面に降りた。


(破壊力だけなら誰にも負けないだろうな)


セキは人の形に変身した。

それから「新しい魔法!」と言って見たこともない魔法を次々と見せてくれた。

燃えたり溶けたりネバネバしたり、何がどうなっているのかわからないものばかりだった。

「ママ見て!」

セキは近くにあった岩を風船のように膨らまし、上に乗ってトランポリンのように遊んでいた。

熊の姿になったアリも喜んで飛び跳ねていた。


「飛んできていい?」というセキを私は見送った。

「壁にぶつからないようにね!」


アリはトランポリンが気に入ったようで、ぶっ飛んではルアンに戻してもらいを続けていた。

チュンはそれを見て「子供ね!」とちょっと羨ましそうに言った。

「チュンもアリを見ててよ。」と言うと、「しかたないわね。」と言いながら嬉しそうに飛んでいった。

妖精たちと黒い熊がポヨンポヨン跳ねて遊んでいる。


私は自分も何かしようと思い、呪いの練習を始めた。

岩に向かい(大きくなれ)(小さくなれ)と念じてイメージ通りいくかの練習をした。

(砕けろ)や(粉になれ)などはできたが、やはり物体を消すことは私にはできなかった。


水であれば炎魔法を応用して蒸発させて消すことはできたが、不純物が入っているとそれは残った。


神経を集中させて遠くの気配を感じ取る練習もした。

気配探知なのか遠視なのか心眼なのかわからないけど遠くで楽しそうに飛んでいるセキの姿が脳内に見えた。


セキが飽きるまで私は今できることをレベルアップしようといろいろやってみた。


────


次の日、私は久しぶりにタナカ町を見に行った。

真っ黒い服装に着替え、向かった。


タナカは最初に作ったこちら側の町にいた。

ゲートは亜空間に繋がったままにしてあったので、そのまま亜空間に住んでいる人もいた。


「クロ様!いや、シア様とお呼びした方がよろしいですか?」

(バレてた)


タナカはその後の話をしてくれた。

聖女が国王になってから城下町に戻る人がたくさんいたこと。

この町と城下町で物資の交換、取引が行われていること。

みんなそれぞれ仕事を持って精力的に過ごしていること。

争いは武力ではなく言葉で解決しようとしていること。


みんながそれぞれ町や人のために考えるようになったと話をしてくれた。


私は安心して「ここをお願いします。」とタナカに伝えて帰ってきた。


「いい町になってたわね!」チュンも満足そうだった。

「あとは美味しいレストランができたら満点だね。」とアリが言ってみんなで笑った。


私がしてきたことで人の笑顔に繋がっていることを実感できるのがとても嬉しかった。

あのときは必死だったから今見ても至らない点は多々ある。

しかしそれをみんなで補っていい方向にまとめてくれていた。


(やればできるのに)


私は南の大陸のことを思い出してちょっぴり嫌な気持ちになった。



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