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祝福

東の大陸は謎のままだった。

あれから何度探してもコボルトには会えなかった。


ゼスに関する情報もまったくなかった。


封印されているとしたらガオルのときのように依代を求めるだろう。

おそらくアッシュは狙われていたに違いない。

勇者は依代として文句のつけようがない優良物件だろう。


私は定期的にアッシュに変わりがないか確認している。

アッシュが敵になったらかなり苦戦するだろう。

あんな感じだが今までの勇者に比べるとかなり優秀に思える。


────


以前のように魔王や悪魔は私に仕事を頼んでくることがなくなってしまった。

悪魔退治だ!魔王討伐だ!と言う人がいなくなったからだ。


それは当然のことで魔王も悪魔も人間には干渉しないで生きている。

棲み分けした方が平和的であるとわかっているからだ。


そんな落ち着いていたある日、悪魔から一通の手紙をもらった。

差出人は聖女だった。


結婚式をするから来てね!と書かれていた。

(すっかり忘れてたな)


「お前が代表して行ってこい。」と悪魔に言われた。

確かに結婚式にこんな角の生えたでかい男が現れたらパニックになるだろう。


私とムイは結婚式に行くことになった。

しかも数時間後だった。

(もっと早くに教えてくれたら準備ができたのに)


「結婚式なんて初めて!」

私はいつもの黒い服でいいのか悩んだ。

「白い服はタブーだったよね?」とチュンに聞いてみた。


「花嫁が白いウエディングドレスを着るのはね、」とまた長々と説明してくれた。

この世界でも花嫁は白いドレスを着るようだ。


チュンに何を着ていくのか聞かれて「これ」といつものワンピースを指差すと怒られた。

「そんな普段着で結婚式に行くなんて信じられないわ!」


チュンは「私が絵を描くから具現化しなさいよ!」とドレスの絵を描いた。

私はそのまま具現化してみる。


「こんな…こんな不格好なドレスなんてひどいわ!」

どう見ても絵のままのドレスだった。

チュンはどうやら絵の才能がないらしい。


ルアンがみかねて「ボクが描いてみていい?」と聞いてきた。

落ち込むチュンは「好きにして」と、なげいていた。


ルアンはチュンの描いた絵をみながらササッと美しいドレスの絵を描いた。

私はそれを具現化してみる。


チュンはそれを見て「これよ!これ!」と言った。

それは青紫の光沢のある布地に膝下丈でスッキリとしたシンプルなデザインだった。

胸元にバラの花のようなコサージュがついている。

「素敵でしょ!シア!着てみて!」

チュンは嬉しそうに言った。


私は不安に思いながらも着てみた。

(似合うかな)


チュンは私の髪の毛を上手に結い上げた。

「化粧は任せて!」

チュンは私の顔にキラキラをかけた。


鏡をみるとそこには美しい女性がいた。

一瞬だれなのがわからなかった。

悪魔に美しくしてもらったのだが、化粧をすると別人になっていた。


「変じゃない?」私はアリたちに聞いてみた。

「似合ってるよ!」妖精たちも満足げだ。


ノックが聞こえ、ムイが迎えに来た。

そろそろ行きませんか?


ムイは私を見て言葉を失っていた。

(やっぱり変なのかな)


「いつもの服に着替えたほうがいい?」

と聞くと、ハッとして「お似合いですよ!行きましょうか!」と言ってくれた。


私は遠視で人のいないところを探して瞬間移動した。

城下町はお祝いムードで賑やかだった。

街の復興もほぼ終わりだろう。

空き家もほとんど目立たなくなっていた。


聖女の従者が私たちに気がつき、「早くこちらへ」と中に連れて行ってくれた。


城の中の聖堂のような場所にたくさんの人が集まっていた。

私たちは前の方の椅子に案内された。

神父のような人の前でキリナは緊張した顔で立っていた。

すぐにこちらに気がつき、恥ずかしそうに笑っていた。


ファンファーレのようなラッパの音が響き、大きなドアが開いた。

その先にはなんとも美しい聖女の姿があった。

孤児院の子供たちが花びらを撒いている。

その後ろを聖女はゆっくりと歩いてくる。


白いドレスに白いヴェール、そして真っ白な美しい髪の毛。

真っ赤な口紅がとても映える。


キリナの横に並ぶとすごくお似合いのカップルに見えた。

神父は2人に誓いの言葉を読ませた。

そして「ここに2人を夫婦と認める。」と言うとどこからか鐘の音が聞こえた。


なんとも荘厳な空間になった。

幸せそうな2人に盛大な拍手が送られた。


「シアさん、大丈夫ですか?」

ムイにそう言われて自分が泣いていたことに気がついた。

いつの間にか感動して泣いていたようだった。


私はハンカチで涙を拭った。

(化粧崩れちゃったかな)


聖女と賢者はとても幸せそうだった。

見守る他のみんなも幸せそうだった。


私もとても幸せな気分になった。


この国の未来は幸せで溢れるだろう。


(永遠にお幸せに)


私とムイは祝賀会に出席せずに帰ることにした。

何かやらかしてこの場をシラケさせたくなかったからだ。

私は2人にプレゼントを持ってきていた。


少し大きめのスノードーム。

中には聖女と賢者が幸せそうに笑っているイメージで作った。


聖女に渡すと抱きついて喜んでくれた。

「大事にするわね!」


────


アリとセキは祝賀会のごちそうを食べれなかったと残念そうにしていた。

「これから毎日ククルの作る美味しいご飯を食べられるんだからいいでしょ。」と言うと、「そうだね!」と機嫌も直った。


こんなに穏やかで平和な時間を過ごしていていいのだろうか?


私はふともう一人の悪魔のことを思い出した。

あの悪魔は今どこにいるのだろうか?

胸騒ぎの原因はなんだったのだろうか?


(そういえばうちの悪魔にあの悪魔の話をしてなかったな)


私は悪魔の執務室へ向かった。

悪魔はニヤと何やら楽しそうに話をしていた。

「何かあったか?」

悪魔は機嫌が良さそうだった。


「実はメイヤという悪魔に会ったのですが。」

そう言うと笑っていた悪魔の表情が濁った。


「メイヤとは…その名前久しぶりに聞いたな。」


私はあのレストランでの話を聞かせた。

悪魔は何やら考えている表情で、

「わざわざ出てくるとは…本当にどこかで封印されている魔王が復活する兆しがあったのかもしれんな。」

と言った。


「またメイヤが接触してきたら報告しなさい。」

と悪魔は言い、私は執務室を出された。


「メイヤに比べたらライハライトなんてお子ちゃまよ。」とチュンは言う。

(そんなに長生きしたくないかも)


私も何かしないと、と思うが漠然としすぎていて何をしていいかわからない。


(他の大陸を探してみるか)

私は今いる大陸の南側を探索することにした。

海の向こうに何かあるかもしれない。


今私にできることなんてそれくらいしかない。



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