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閉店

「待っていたぞ。」


魔王は悪魔の屋敷に来ていた。

私とムイは今までに見てやってきたことを順番に話した。

魔王も悪魔も黙って聞いていた。


「結界がなくなったことはレイが教えてくれた。」

と話し終わると魔王が教えてくれた。


どうやらレイは私たちの様子をずっと確認していたらしい。

(まったく気がつかなかった)


結界がなくなったことがわかった魔王もこちらの様子をみていたのでだいたいのことはわかっていたようだった。


「魔王の情報は詳しくはあ奴らもわかっておらんだろう。」

と、魔王は言った。

あの国でそういう言い伝えがあっただけで勇者召喚成功を期に伝承のとおりあんなことをしたのだろうと魔王は言った。


確かに魔王がどこに封印されているとかそういった具体的なことは一切言っていなかった。


しかしあの二人の様子をみると他の何者かの圧を感じた。

私の呪いに抵抗しようとする力はかなり強いものに感じた。

(復活していないにせよ何かが干渉していた可能性はあるな)


魔王は「とりあえずあの国での情報収集は打ち切ってもよいぞよ。」と言った。


屋敷に戻れることは私も嬉しい。

やはりここが1番落ち着く。

しかしやり残したことがある気がしている。


「もう少しあちらで生活をしたいのですが。」

私がそう言うと、悪魔は「そう言うと思っていた。」と言ってニヤニヤ笑った。


魔王は「好きにするがよい」と言って魔王城に帰っていった。


ちょうど朝食の用意ができましたとククルがやってきた。

私たちはククルの料理を堪能し、薬屋に戻ることにした。


────


戻った薬屋には人が数人訪れていた。

開けるとダンジョンから助けた人が常連に混ざってやって来ていた。


「ありがとうございました。」

と深々と頭を下げていった。


顔色は良くないものの笑顔だった。


常連客たちはいつものようにマッサージという名の回復魔法を受け、笑顔で帰っていった。


(根本的なことを解決しないとダメだ)


私はパンケーキ屋さんでフルーツが添えられていたことを思い出した。

(あのフルーツはどこからきているの?)


私はまだみていない場所を重点的に城の中を探索することにした。


────


美しい白い城はどこの城よりも大きくて広かった。

城の奥の方で大きな温室を発見した。

そこではフルーツの木が主に植えられており、野菜も育てられていた。


おそらくここからどうにかしてあのパンケーキ屋にフルーツが届けられたのだろう。

収穫してどこかに運んでいく様子が見られた。


かなりの広さがあるから王室や貴族たちだけでは食べ切れないだろう。

(街の人たちにも分けてあげればいいのに)


私は収穫した野菜や果物の運ばれていく先を確認することにした。


温室のすぐ裏に勝手口のような出入り口がついていた。

そこから箱に詰められた野菜らが取りに来ていた男に渡された。

男はお金の入っていると思われる袋を交換に渡した。


荷車に箱を乗せてどこかへ運んでいく。


荷車が着いた先はあのパンケーキ屋だった。

届いた箱からさらに数個に分けると数人の人がパンケーキ屋を訪れ、その野菜や果物を持っていった。

交換にお金を置いていったようだった。


明らかに城で渡した額より多い金を手にしてパンケーキ屋の男にニマニマして懐に入れた。


(なるほど、こういうシステムになっているのか)


これだけ金がかかっているなら庶民の手には渡らないだろう。

それで栄養が足りずに病気になりやすくなっているんだろう。


私は意識を戻し、チュンに相談した。

「あの広さの温室を最大限に活かして街の人たちにも何かできることはないかな?」

チュンは何やら計算を始めた。


「野菜や果物も必要だけど、栄養価の高い薬草を植えるほうが効率がいいかも。」

とチュンはその薬草のことを教えてくれた。

「これならハピリナに植えてあると思う。」


────


私はハピリナに来た。

来たばかりだと思っていたがなんだか懐かしく感じる。


遠くから見覚えのある赤い物体が飛んでくる。


「ママ!!」


その赤い物体は小さな赤いドラゴンだった。

「セキなの??」


確かに赤いドラゴンではあったが、以前のセキとは違いスマートで赤に深みがかかりさらに美しいドラゴンの姿をしていた。


「ママ!ボク進化したんだ!」


セキは嬉しそうに炎を吐いた。

すぐに鑑定してみた。


・種族 レッドドラゴン 最終形態


話をよく聞くと尻尾が生えたあとも小さな変化が度々現れ、徐々に今の姿に近づいていったらしい。

そして変身のスキルも完全に使えるようになり、人間の姿にもなれるしドラゴンのまま大きさを変えることもできるようになったと言う。


「セキ!すごいね!がんばったね!」


セキは前のように喜んでくるくる飛んでいた。

アリも小さなドラゴンに戻ったのが嬉しかったらしく、

「セキも一緒に行けるね!」と言った。


私は(人間の世界にドラゴンはどうだろう?)と思ったが、セキは赤いハムスターになりアリの横に納まった。

「これならいいでしょ?」

セキもアリも嬉しそうだった。


「じゃあ長老や村のみんなに挨拶しようか。」


私たちは村をまわりみんなに挨拶をしてまわった。

行く先々でお土産を渡されて荷物がたくさんになった。

「ムイも連れてきたらよかったね!」


────


私は村の温室に向かった。

ヤゲンは相変わらず植物の世話で忙しそうだった。


「シア様!お久しゅうございますな!」

私はヤゲンに薬草の話をして数株分けてもらった。


「人間たちのためにそこまで。」

とヤゲンは少し表情を濁らせたが、

「どんな種族も平和に穏やかに暮らせるといいですな。」

と言って私たちを見送ってくれた。


帰り際にカリナが走ってきて大きなカゴを渡してくれた。

「クロワッサンにチョコレートを入れてみました!」

甘くてとてもいい匂いがする。


「カリナ!ありがとう!またゆっくり遊びに来るね。」

私は両手にいっぱいの荷物を持って薬屋の2階に戻った。


────


戻るとアッシュが来ていた。

「普通に遊びに来られるようになりました!」

と笑顔でそう言った。


あの後の王は人が変わったように国民のためにできることを考え始めたという。

魔法使いたちもそれに倣って改革案を話し合ったりしているそうだ。

「いい方向に進んでいるようでよかったね!」

私がそう言うと「ボクはセキ!よろしくね!」とセキが出てきた。


アッシュは赤いハムスターに驚いていたが、セキがドラゴンの姿を見せたのでさらに驚いていた。

ムイも「これが最終形態ですか!」と興味深く観察していた。

「ドラゴンまで仲間にしてしまうなんてさすがだなぁ〜」

とアッシュは感心していた。


「それよりも」と私は温室や薬草のことをアッシュに話した。

そして薬草を見せると、「私が薬屋にもらったと言って持っていきましょう。」と言ってくれた。


私は大きな木箱いっぱいになるように薬草を複製した。

チュンに薬草の注意点などを説明され、外で待っていたお付きの兵士たちと一緒に城へ戻って行った。


ちょうど見送っていると聞き慣れた声が聞こえてきた。

ナナとヤヤが向こうから走ってくる。


「シア!!」

2人は私に抱きついた。

「お母さんが帰ってきたよ!」

ナナが嬉しそうに報告してくれた。


私たちは薬屋に入り、いつもの椅子に腰かけた。

アリが顔を出した。

「アリ!おいでー!」ヤヤが嬉しそうに手を出した。

続いてセキも赤いハムスターの姿で出てきた。

「かわいい!!」2人は赤いハムスターに驚くこともなく、「アリのお友達ね!」と2匹を撫でた。

「セキっていうの。仲良くしてあげてね。」

「はじめましてセキ!私はナナ、妹はヤヤだよ!」

2人は母親が探しに来るまでハムスターと遊んでいた。


「この度は大変お世話になりまして…」

母親は深々と頭を下げた。


私はカリナにもらったパンを母親に渡し、

「たくさん食べて元気に過ごしてくださいね!」

と言った。

母親は涙を浮かべ、「ありがとうございます。」と言い、娘たちを連れて帰って行った。


並んでいるベッドを眺めてまるで野戦病院だな、と思った。

消すこともできないので小さくして2階に持っていった。

ドールハウスに並べると「こんなにいらないわ!」とチュンに怒られた。


セキはアリのベッドの横に自分のも並べた。

「これからまたよろしくお願いします。」

とみんなに挨拶をした。

灰色と赤いハムスターと白い小さな熊が並ぶと、それはそれはとても可愛らしかった。

チュンが「美女と野獣たちね!」と笑っていた。


私たちは薬屋をどうするか話し合った。

とりあえず城や街のことはアッシュや改心した王に任せてもよいだろう。

すぐには無理だろうけどこの街はきっと良くなるはずだ。

王都がいい所になれば次第にまわりの街にも影響が出るだろう。

他の大陸との国交も盛んになればお互いの利益にもなるだろうし。


────


私たちは薬屋を閉めることにした。


あとは人間たちの自分の頑張りでどうにかするだろう。

それでもまだ奪い合ったり傷つけ合うようなら、それが人間だということだ。

うまく共存していく道も潰し合って共倒れになる道も人間たちには選ぶことができる。


素晴らしい知能を持ち、行動に移すこともできる。

それに魔法という元の世界にはなかった素晴らしい力も持っている。


(子供たちが笑っていられる国になりますように)


私たちは薬屋を片付けた。

家具などは小さくしてドールハウスに入れた。

ナナとヤヤにプレゼントしようと思い、アリとセキそっくりのぬいぐるみを作って渡した。

2匹との別れを泣きながら惜しんだがドールハウスを見せると笑顔で喜んだ。

コーヒーメーカーや電子レンジのミニチュアを見て不思議そうにしていたが、ヤヤたちの家に運んでやると2人で仲良く遊んでいた。

母親はこんなに珍しいものを!とびっくりしていたが2人が喜んでいるのを見て「大事にさせます。」と頭を下げた。


私たちはアッシュに会いに城へ向かった。


城は以前と雰囲気が変わり、なんとなく明るくなっていた。

門番に言うとすぐにアッシュが走ってきた。

「温室を見に行きませんか?」

私たちはアッシュに温室に連れて行ってもらった。


そこには渡した薬草がすでに植えられていた。

「葉を切ってもすぐに伸びてくるタイプなので定期的にたくさん採れるそうです。」と嬉しそうに説明してくれた。


私たちは屋敷のある大陸に戻ると話した。

「いつまでもいて欲しいって少し思ってました。」

と、アッシュは少し寂しそうだった。

そして「この国を救ってくださってありがとうございました。」と頭を下げた。


城を出るとネビの姿がみえた。

私は(街の人たちのために尽くせ)と念じた。

ネビは急に街の人たちにお金を配りだした。

(せいぜいみんなに好かれるようにがんばれ)


────


屋敷に帰る前にエトとシエナに会いに行くことにした。


(みんな元気にやってるかな)



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