表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/102

逃避

私は牢屋で出会った人たちのことを思い出していた。


アッシュは罪のない人が牢屋に入れられていると言っていた。

あの人たちを助ける手立てはないものか。


「あのお城、燃やしてみようか。」

私はできることがなくて適当なことを言ってみた。


「燃やすのはいいですが、侵入するのが大変ですよね。」とムイが言った。

(燃やすのはいいのか)


結界は魔法的なものを通さないだけで物理的なものは問題なく通れている。

門はどこも警備がいっぱいで隙はまったくない。

私は空を飛べないし。


勇者の転移魔法は使えていた。

私の瞬間移動はどうだろうか?

地下にいるという魔法使いにみつかってしまうだろうか。


「古典的な戦法でやらない?」とチュンが言い出した。

「どういうこと?」私たちはチュンを見た。


「兵士に変装して入ればいいじゃない。鎧で顔も半分隠れるし、人数も多いからバレないんじゃない?」

とチュンが言った。


「兵士の鎧なら具現化でいくらでも用意できるけど…」

問題はバレたときに逃げられるかどうかである。

捕まってしまえば元も子もない。


「やるなら私一人で行くわ。」

と言うと、「それなら私が」とムイも言った。

「見た目はムイの方が向いてそうだけど、何かあったときにはシアのスキルに勝るものはないよね。」

と、チュンが私とムイを見比べながら言った。


「ちょっと鎧を出して着てみてくれる?」とチュンに言われたのでやってみた。

「どうかな?」

私は両手を広げてみた。

「却下ね。小さすぎて目立つわ。」

と言われた。

私は鎧を脱ぎ、消すことができないことに気がついたので縮小した。

アリが着ようと頑張っていたが体型が合わなくて無理だった。


私は、「あっ!」と言って透明化のスキルを持っていることに気がついた。


「透明化のスキルはあるけど、生霊なのか遠視なのか透明化してるのかわからないときがあるんだよね。」と、いかに私がスキルを適当に発動させていたのかがバレる発言をしてしまった。


「試しにやってみますか?透明化で。」

とムイが言った。


私はこの部屋にもモニターを出した。

そして(私の見えている世界が映る)と念じた。

すぐに目の前の光景がモニターに映し出された。


みんなは面白がって「こっちみてー!」と私の視線で遊んだ。


「じゃあ透明化して行けるところまで行ってみるね。」

と言って、前に使ったインカムをムイに渡した。

とりあえず門の前まで瞬間移動をしてみた。

兵士たちは気がついていない。


私はそのまま牢屋のある地下に向かった。

牢屋の前についたが、どうやって逃がすのがいいのか考えていなかった。


(ここはやっぱり燃やすしかないな)

私は階段を上がった。


ちょうどカギを持っている兵士がいたのでそっとカギの束を奪う。

兵士は鼻歌を歌いご機嫌だ。

まったく気がつかなかった。


(燃やしても大丈夫そうなものないかなぁ)

私はボヤ騒ぎを起こせそうな場所を探した。


できれば地下にいる魔法使いがすぐ来れないところがいい。

牢屋からの階段を上がったところに木が生えて庭になっているようなところがある。

テーブルと椅子もあり、兵士たちが休憩で使っているようだ。

(下っ端の兵士は外で休憩させられるのか)

ここなら城の建物の外だし、門と反対方向だしいいかもしれない。


私は(牢屋にいる人たちが逃げるまで燃えていろ)と念じテーブルと椅子に火をつけた。


すぐに近くにいた兵士が「火事だー!」と騒ぎ、数人の兵士たちが集まってきた。

騎士の一人も来て「水を持ってこい!」と指揮を取り出した。


私は急いで牢屋へ向かった。


────


牢屋では上の騒ぎを聞いてざわざわしていた。

私はすべてのカギを外した。


「あれ、開いてるぞ?」

「こっちもだ!」

「今なら逃げられるかもしれない!」


牢屋にいた人たちはすぐに外へ飛び出した。

兵士たちは火事を消そうと必死に水をかけていた。

(まだ消えないけどな)


隙を見て門へ向かっている。

私は先回りして消火に向かわずに残っていた門番を眠らせた。


門番が倒れてるのを見て囚われていた人たちは城の外へ出た。


私は姿を表し、彼らに合図を送った。

『こっち!』私は声を出さずに薬屋の方へ来るように誘導した。

ゾイドがすぐに気がついてくれて「みんなこっちだ!」と言った。


裏通りはいつものように静かだった。

ほとんど誰に見られることなく薬屋の中へ来ることができた。

私は全員来たのを確認してカーテンを閉めた。


「シアさんの仕業か!」と言ってゾイドは笑った。


チュンが急いでサンドイッチを用意してくれた。

温かいお茶をみんなに配る。

「あったまる!」


サンドイッチを食べているみんなに私は「私が暮らしていた国に来ませんか?」と聞いてみた。


この大陸にいるとまた捕まってしまう可能性が高そうだったからだ。

「来ませんかって海の向こうなんだろう?」

ざわざわし始めた。


「実は私、瞬間移動のスキルを持っているんです。」

みんなの視線が私に集まった。


「そんなスキル…物語くらいでしか聞いたことないぞ。」

みんなは驚いていた。


魔王も悪魔も使っていたからそんなに珍しいスキルだとは思っていなかった。

人間の中には使える人がいないみたいだった。

確かに勇者の使っていたのは転移魔法だ。

(何が違うのかはわからないけど)


「みなさんが行きたいと思うならすぐにその大陸にお連れできます。」


一瞬静かになった。

みんな何やら考えていた。


「私は家族のことが心配だから家に帰るわ。」

と年配の魔法使いが言った。

「俺も故郷に帰りたい。」と僧侶も行った。


「わかりました。私が送りますので場所を教えてください。」

私は地図を出してどの辺なのか聞いた。

遠視で確認して安全を確かめ、魔法使いの腕を掴んで瞬間移動した。


「村のすぐ側です。あとは大丈夫ですか?」と聞くと、

「ありがとうシア!いつかお礼をさせてね。」と言って走っていった。

私はすぐに薬屋に戻った。


「うわぁ!すごいな!」ゾイドは感心している。

次に僧侶も同じように家の近くまで連れて行った。


「私もいいですか?」と言う人を順番に希望した場所に連れて行った。


5人が残った。

「俺は家族もいないし、帰る場所もない。」と、ゾイドが悲しそうに言った。

元々の国を離れて旅をしていたという。

「私は家に戻るのが怖い。」と若い魔法使いのメロが言った。

「家族に迷惑がかかるかもしれないし。」

とメロが言うと、他の人たちも頷いた。


「シアさんの国は安全なのかい?」

と聞かれたので、「この国よりはずっと暮らしやすいと思います。」と答えた。


「俺は行きたい。」と、ゾイドは言った。

「私も」

と、残った5人はみんな行きたいと言った。


私は5人に輪になるように腕をつかむように言った。

ムイに「ちょっと行ってくるね!」と言って、聖女のいる城下町に瞬間移動をした。


城下町は以前の活気を取り戻しつつあった。

まだまだ空き家はあったが、通りのお店はかなり復活していて人通りも前よりあった。


5人は「寒くない」と喜び、上着を脱いだ。

私は5人を連れて城へ向かった。


すぐに聖女の前に通してもらった。


「あらシアさん、今日は大きいお友達と一緒なのね。」と笑った。

私は事情を話した。


「空き家はたくさんあります。仕事もたくさんあります。どうぞ私の国の発展のために力をお貸しください。」

と聖女は5人に頭を下げた。

5人は驚いてひれ伏した。

「こちらこそどうぞよろしくお願いします!」


聖女は騎士隊長を呼んで「お願いね。」と5人を任せた。

隊長はゾイドを見て「すぐにでも仲間にほしいですね。」と微笑んだ。


城下街に戻り、隊長はいくつかの空き家を紹介してくれた。

「家賃はかかるけど仕事が落ち着いてからでいい」と言った。

「仕事はいろいろあるだろう。」と隊長はこの国の現状を話してくれた。

最盛期とまではいかないが、みんな復興したいという気持ちに溢れとてもいい状態だという。

「見たところみなさん得意なことがありそうだ。自分に合った仕事を見つけてください。」

と言って空き家のカギを各々に配った。

「しばらくは兵士たちの寮に食事をしに来てください。」と寮の場所を教えてくれた。


5人は深々と頭を下げて「お世話になります。」と言った。


私は持っていた銀貨を5人に分けた。

「今はこれしかないけど、ここは物価も高くないし少しの間なら暮らせると思う。」

と言うと、「なぁに!すぐに仕事をみつけるさ!」とゾイドが元気よく言った。

他の4人も頷いている。

(この人たちならきっと大丈夫だな)


「また様子を見に来るね。」と言って私は薬屋に戻った。


────


薬屋に戻ると外が騒がしかった。

「火事はおさまったみたい?」

と私が聞くと、「煙が見えなくなったのでおそらく。」とムイが言った。


「本当に燃やすとは思っていませんでしたよ。」とムイに睨まれた。

「でもなんとかなってよかったわね!」とチュンが言ってくれた。


しかしたった9人を逃がせただけだ。

地下で病人を集めて何かをしているとアッシュが言っていた。

牢屋から消えた魔法使いの消息もわかっていない。


「始まったばかりだよ。」

と私が言うと、みんな真剣な顔で頷いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ