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ナナとヤヤ

「やっぱり野菜は美味しいねぇ〜」


城下町に来たら売っているんじゃないかと思っていた野菜だったが、日持ちのする根菜類くらいしか売っていなかった。

それも肉よりも高い値段で取引されており、日々の食卓に並べるには庶民では無理そうだった。


私たちは野菜に飢え、我慢できなくなってしまったので定期的にハピリナにもらいに行くことにした。


セキにも定期的に会えて一石二鳥だ。

できれば店で売ってあげたかったのだが、新鮮な野菜をどこから?となるのでやめた。


肉や魚などここで売ってるものは積極的に買った。

生活している感は大事だ。


ナナとヤヤはあれから毎日やって来るようになった。

そのたびにチュンが食事を用意してくれた。


ナナとヤヤがいるので心配して近所の人たちが見にきた。

私は2人の母親の話をして、心配だからここに、と言うとそれはありがとうね。と感謝された。


「あの子たちのお母さんは…」と連れて行かれた母親の話をしてくれた。

とても気立てのいい人でみんなに愛されていたと言う。

城に連れて行かれたことを聞くと「連れて行かれたら最後。誰も戻ってこない。」と、恐ろしいことを教えてもらった。

その人は「薬って高いからこんな所で商売しても客は来ないだろう?」と言って笑っていた。

私は「いくらぐらいなら買いに来てくれますか?」と聞くと「銅貨10枚以下じゃないとなかなか手が出ない。」と言った。

「それで構わないのでいつでも買いに来てください。」と言うと驚いていた。

「腰がつらそうですよね?」と言って湿布薬を渡した。

「これを腰に貼ってみてください。きっと楽になりますよ。」と言うと、「今日は手持ちが…」と下を見たので、

「オープン記念の試供品です!」と言ってあげた。

「それなら!」と言ってニコニコしながら帰っていった。


私たちの思っていたとおり、庶民の暮らしに薬というのは高級で手の出せないものだった。


ムイも話を聞いていたので、「帰ってこないってどういうことだろうね?」と聞いた。

「みなさんお亡くなりになったということでしょうか?」

私たちはそんなに死亡率が高いなんておかしいと話した。


あの2人はこれからどうするんだろうか。


────


いつものように姉妹はアリに会いに来ていた。

アリは2人と遊べるのがとても嬉しそうだった。

妖精たちはそれを見ていつも羨ましそうにしていた。

「私たちだって遊びたいわよね!」とチュンはいつも怒っていた。

(ルアンならいけないこともなさそうだけど)

と思ったけどチュンの怒りが爆発しそうなのでやめた。


急にナナが「明日お母さんのところへ行けるんだ!」と教えてくれた。

どういう事なのか聞くと「ネビのおじさんが連れて行ってくれる。」と言った。

私は「よかったね!」と安心した。

(ちゃんと世話をしてくれる人がいたんだな)


おやつに出してあげたクッキーを見て、

「お母さんにも食べさせてあげたかったな。」とナナがつぶやいた。

チュンがすぐにクッキーを袋に詰めてくれた。


「余っちゃって困ってるからお母さんに食べるのを手伝ってもらえるかな?」と聞くと、「もちろん!」と言って、2人で喜んだ。


暗くなってきたので「送っていくね。」と言って店を出た。

「ムイさんバイバイ!」と2人は元気よく挨拶をした。

ムイは嬉しそうに手を振った。

今のところ怖がられている様子はない。


帰り道、「お母さんに会えるの楽しみだね!」と言うと、2人はとても嬉しそうな顔で「うん!」と言った。

「帰ってきたらまた遊びに来てね。」と言って、2人がカギを閉めるのを確認してから帰った。


(会いに行くと言ってたので退院ではないのだろうけど、会いに行けてよかったな)


────


次の日、姉妹の姿は見えなかった。

(ちゃんと連れて行ってもらえたんだな)


先日湿布薬をあげた女の人がちょくちょく来てくれるようになった。

彼女は『オイセ』と言う名で近くの食堂のキッチンで働いていると教えてくれた。

私はテーブルの反対側の壁際に施術用のベッドを出しておいた。


「あの湿布薬、すごくよく効くんだけど、剥がすとだめね。」

私は「よかったらマッサージするので寝てもらえますか?」と言うと何か言いたげだったので「サービスです!」と言った。


うつ伏せで寝てもらい、腰を触ってみる。

チュンが何かキラキラをかけた。

オイセが気持ちよさそうに「あぁー」と声をもらした。

チュンが頷いたので「はい終わり!」と言うと、オイセはゆっくりと立ち上がった。

「すごく効いたみたい!」と背筋が伸びて姿勢の良くなったオイセが言った。

「次はお金を払うわね!」と言って帰っていった。


夜になっても姉妹は現れず、(泊まってくるのかな)と思った。


────


次の日も夜まで姉妹は姿を見せなかった。

少し心配になり、家の前まで行ってみた。

中から男が家具を運び出しているのが見えた。

私は男に「何があったんですか?」と聞くと、空き家になったから片付けていると言われた。

姉妹のことを聞いても知らないと、邪魔にされた。


どこかに療養するために引越したのだろうか?

私は寂しさと不安を感じた。

アリも「どうしちゃったんだろうね?」と心配そうに言った。

私は『ネビおじさん』と言う人物に聞いてみようと思った。

私は歩いていたオイセをみつけて彼のことを聞いてみた。


オイセは少し嫌な顔をして、「表通りにある道具屋の男だよ。」と教えてくれた。

そして、「あの男には気をつけな。」と言って家に入っていった。

なんだか嫌な予感がした。


ネビという男は店にいた。

太った不機嫌そうな顔をした男だった。

私は店に入り、「近所で薬屋をやってる者です。ナナとヤヤと言う少女たちはどちらへ行かれたんでしょうか?」

と聞いてみた。

ネビは、フンッと鼻を鳴らし、「母親の故郷へ行った。」と言った。

(療養のためにみんなで引越したのか)


忙しいので帰ってくれと言われて店を出た。

(客なんて一人もいなかったがな)


私は不安が残ってはいたものの、3人でどこかで暮らせているならそれはそれでいいか。と、思った。


私はふと指輪に目がいった。

赤くなっているのである。

近くに誰かいるのかとキョロキョロしてみたがいない。

誰に反応したのかわからず、私は薬屋へと歩いていった。

すぐに青色に戻った。

こんなこと初めてだった。


帰ってみんなに今の話をした。


みんな「3人で暮らせるならそれが一番だね。」と言っていたが少し寂しそうにした。


────


オイセは友達を連れてくるようになった。

「初回無料よね?」と言って、腰の施術を頼んできた。

私は揉みほぐす感じで触り、チュンがキラキラをかけた。


「すごいでしょ!」と、オイセが言うと友達もすごく元気になった。

「次はお金を払うわねー」と言ってまた帰っていった。


オイセはどんどん友達を連れてきた。

そしてその友達が友達を連れてきて、パット見は流行っているように見えた。

しかしみんな「初回無料でしょ?」と言うのでまったく儲からなかった。

なんなら椅子に座りおしゃべりしているオイセたちにお茶を出した。


チュンのキラキラは強力だったようで、みんな2回目には来なかった。

(まぁいいか)


こういう地道な付き合いが大事なのだ。


────


いつの間にか薬屋はおしゃべりの場所になっていた。

どこからか持ち込まれて椅子がいつの間にか増えていた。

ムイはマダムたちの心を掴んでしまったようで、「とても栄養のある薬草ですよ。」とマダムたちに薬草を売っていた。

それも銅貨1枚とか2枚しかもらわなかったので飛ぶように売れた。

「お肌がツルツルになったわ!」と喜んで見せに来たマダムに「お綺麗ですよ。」と笑顔で言った。

(マダムキラーだな)


そんな感じで薬草から薬もぼちぼち売れるようになってきた。

「安く売ってるのは秘密にしてね。」と頼んでいたのに、噂を聞きつけた人たちがたくさん来るようになった。

深刻そうな症状の人にはチュンがキラキラをかけて治してあげていた。

(あのキラキラすごいな)


マダムたちは家族を連れてやってくるようになり、お店は大繁盛した。

「お金はないんだけど…」と、自分の店の商品を持ってくる人もいて、物々交換のようなことになることもあった。


ある日、噂を聞きつけてネビがやってきた。

たくさんの量の薬草を欲しがったので、一個だけ銅貨1枚にして残りを銀貨1枚として請求をした。

「なんで俺だけ高いんだ!」と怒ったので、「必要な分以外は正規の値段になります。」と言った。

ネビは「必要な人に配る分だ!」と言うので、

「本人に買いに来させてください。」と言った。

「歩けないから俺が買いに来てる!」と言うので、

「お届けに行きますので場所を教えてください。」と言うと、「もういいわ!こんな店二度と来るか!!」と、怒って帰っていった。

指輪が赤くなっていた。

「転売する気だったね。」と私が言うと、「嫌な男ですね。」とムイが言った。


私は急にあの2人のことが心配になってきた。

ちょうどオイセが通りかかったので急いで呼び止めた。

「ちょっとお茶を飲んでいって!」と言って椅子に座らせた。

チュンが用意してくれたクッキーも出すとうれしそうに食べた。

私は「ナナとヤヤのことなんだけど。」と言うとすぐに、「可哀想だったね。」と言った。


どういうことなのか聞いてみると、

「奴隷商人に連れて行かれたことでしょ?」と言われた。

(奴隷?!)


お母さんに会いに行くと言っていた日に連れて行かれるのを見たというのだ。

「知らなかったのかい?」と言われ、ネビのことを話した。

「だから居場所を聞いてきたんだね…」と俯いた。

オイセはネビのことを最初はいい顔をして近寄って、世話をするふりをして根こそぎ持っていくクソみたいな男と説明してくれた。

(あの日指輪が赤くなったのはネビのせいか)


私は奴隷商人を探すことにした。


────


店をムイたちに任せて、私は遠視で奴隷商人を探した。

ある程度の人数を揃えてから街を出てどこかに連れて行ってるという噂を聞いたとオイセは言っていた。


まだ近くにいるといいけど。


さすがに街の中にはいないだろうと思ったので、街中をざっと見てから街のまわりの森を重点的に探した。


少し離れたところに小屋をみつけた。

明かりがついている。

中を見るといかにも悪そうな顔をした男たちが3人ほどいた。

そしてその奥には首輪を繋がれた子供たちの姿があった。

ナナとヤヤもそこにいた。

全員で5人の子供たちがそこにいたのである。

「やっと5人揃ったな。」

「明日出荷しましょう。」

と言って男たちは笑っていた。

(出荷だと??)


私はすぐにムイのところへ行き、準備中の札をかけた。

残っていたお客を送り出してカーテンを閉めた。


「ナナたちをみつけた。」


すぐに助けに行くことにした。


────


私は小屋の外から男たちを(眠れ)と念じ、眠らせた。

ムイに子供たちを外に連れ出すように頼んだ。

ナナとヤヤが「シア!ムイ!」と喜んだ。


子供たちが外に出たのを確認してから、(悪いことをしようとしたら歩けなくなる)と呪いをかけた。

(一生寝てればいいんだ)


子供たちも眠らせて店に瞬間移動した。

さて、この子たちをどうするか。

目を覚まさせた。


ナナとヤヤは私たちに抱きつき、「怖かった」と泣きだした。

残りの3人も泣いていた。

お母さんに会えたのか聞くと「会えていない。」と答えた。

3人に家はあるのか?家族はいるのか?といろいろ質問したが、どうやらナナたちの境遇とまったく一緒だった。

父や母、両親ともとそれぞれ違ったがみんな兵士に連れて行かれた。と答えた。


子供たちをテーブルにつかせ食事を摂らせた。

私は2階に行き、聖女のところへ向かった。


聖女は一瞬ビクッとしたが「お久しぶりね。」と笑った。

私は悪魔から聖女が子供を育てている。と聞いていた。

どうやら孤児院を開設したようだった。


私は「緊急で5人ほど預かって欲しい」と頼んだ。

聖女にすべて話して聞かせた。

「わかったわ。ぜひ預からせて。」と言ってもらえた。

「孤児院は城下町にあるからあとで来て。準備しておくわね。」と言って部屋を出ていった。

私も急いで戻った。


ムイに事情を説明した。

(子供たちになんて説明したらいいんだろう)


「あなたたちはこのままだと奴隷として売られてしまう。」と言うと「知ってる」と答えた。

私は聖女の孤児院の話をした。

「同じようにお父さんやお母さんと一緒に暮らせない子たちが、寂しくないように集まって暮らしている家があるんだけどね。」子供たちは静かに聞いている。

「みんなの家族が戻ってくるまでの間、来てもいいって言ってるんだ。」と話すと、一人の男の子が「ぼく行きたい!」と叫んだ。

ナナが「ここで暮らしたい。」と泣いたが、「ここには2人を住まわせるだけの場所がないの。」と言い、遊びに行くよと言った。

ヤヤは私に抱きつき「奴隷になるよりそこに行く。」と言った。

ナナも「私も。」と言って、5人とも行くことを選んだ。

私はあの男たちにみつからないようにすぐに出発すると伝え、「遠いけど寝ている間につくよ。」と言ってまた5人を眠らせた。


指定してもらった場所に瞬間移動をした。

5人を運んだのでクラっとした私に聖女は魔力回復魔法をかけてくれた。

「ありがとう。」聖女は頷いた。

「この子たちが…」と聖女は切ない顔をした。

「こちらへ」と言われる方へ1人ずつ運んだ。


ベッドに寝かした。

他の子たちも寝ていた。

私は(朝になったら起きる)と念じた。

そして(ここにいる大人たちの言うことを聞いていれば幸せになれる)と5人に念じた。


聖女は「あとは任せて」と言ってくれた。

キリナは元気かと聞くと、村に帰っていると言った。

そして「結婚することになった。」と教えられた。

私はびっくりして大声が出そうになったが口を押さえられた。

まだ準備段階なので決まったら知らせると言われ、私は帰ってきた。


(お似合いかもしれない)


ムイたちに話すと「それは意外ですね。」と言った。

「聖女と賢者が結婚したら最強の子供が生まれるね。」と言うと、みんな笑っていた。


────


私は子供たちのことが心配だった。

聖女に任せたのできっとうまくやってくれるだろうけど。


(あの子たちが安心と大人への信頼をとり戻して幸せをつかめますように)


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