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薬屋 ライト

『薬屋 ライト』


ルアンが作ってくれた看板は私の描いた拙い設計図をはるかに超える素晴らしい出来だった。


────


私たちは棚に商品を並べるのをやめた。

と言うか、棚を受付の後ろに設置した。

お客さんには薬や薬草を触らせないようにし、欲しいものを聞いてから出すシステムにした。


それを決めてから店の中の大改造が始まった。

店に入ると小さなスペースがあり、テーブルと椅子を置いてお客さんが座ることができるようにした。

店とこのスペースはカウンターで仕切り、間仕切りとドアをつけた。


カウンターの奥に棚を並べ、用途や種類別に薬や薬草を並べることにした。

今日のこの日のためにムイは重たいトランクを持ち歩いていたわけである。

中にぎっしりと商品になる薬草や薬が入っていた。

チュンが説明をしながら棚に並べていった。


並べ終わり、補充をどうするか考えなくてはいけなかった。

もちろんハピリナに取りに行けば一瞬で持って来られるのだが、怪しさ満点である。


「定期的に国の者が届けてくれるとか適当に言っておけばいいかな?」

私は細かい設定が苦手だった。

(突っ込まれたらその時考えよう)


そしてやっと店は完成した。

この店舗の契約をしてから3日が経っていた。


「看板つけるよ!」


────


そうして店はオープンしたのである。


オープンしたけどお客は来ない。

「暇だねぇ」とアリは退屈そうに言った。


私はアリと2人でロバの様子を見に行くことにした。

裏通りを進むとすぐに馬の厩舎がある。


「この馬、どうにか譲っていただけませんか。」

「いやぁ、この馬は預かってるだけなんでね…」

厩舎に近づくとそんな話が聞こえてきた。

裕福そうな男が人の馬を欲しがっているようだった。

(金持ちは何でも欲しがるな)


私は世話係に挨拶をしてロバのところへやってきた。

私はロバを撫でてみた。

相変わらず鼻息とよだれをかけられる。

(こいつ 変わらないな)

腹立たしさを超えてかわいくなってきた。


「突然申し訳ない。その馬はあなた様のものですか?」

さっきの裕福そうな男が話しかけてきた。


「そうですが」

と、言って私は(もしかしてロバが欲しかったの?)と思った。


男はなぜこの馬が欲しいかを力説した。

(ロバだけどな)

男には息子がいると言う。

息子は健康に育ったが背が異常に低く脚も短いという。

それゆえに普通の馬に乗るのはとても大変なのだという。


「僕なんて馬にも乗れない出来損ないだ。と言ってグレてしまって…」と、男は言う。

そこでこの小さな馬をみつけたという。

(ロバだけどな)


この馬に乗せて息子に自信を取り戻させたいと言う話だった。

「でもこの馬は…」(ロバだけど…)

不格好だと笑われたこの馬に乗せたら息子も馬鹿にされるんじゃないかな?と私は思った。


「他の馬に比べると足も短くて太いし、顔も不細工でかわいげもないですよ?」と説明したのだが、

「こんな珍しい馬を手放したくない気持ちはわかりますが、どうか!」と銀貨のたくさん入った袋を私に向けてきた。

私は「大事に育ててくれますか?」と聞いた。

「それはもちろん!」と男は言った。

指輪は青色のままだ。

ロバにどうする?と聞いてみたが相変わらずよだれを飛ばしていた。

このままここに繋いでおくのも可哀想だし…


私はこのロバをこの男に譲ることにした。

男は喜んで銀貨の袋を私に押し付けた。

「これで新しい馬を買ってくだされ!」と言ってロバに挨拶をした。

名前はあるか?と聞かれ、「ロバ」と答えた。

「じゃあロバ、行こうか。」と男はロバを撫でた。

よだれを飛ばさない。

心なしか私により懐いてるようにさえ見える。


(ロバよ 幸せになれよ)


私は世話係に銀貨を1枚渡し、感謝をのべて去ろうとした。

「あのソリはどうしますかね?」と聞かれ、ソリのことをすっかり忘れていたことに気がついた。

「必要ないなら譲って欲しい」と言われ、引き取ってくれるなら金はいらないと置いてきた。

世話係の男はこんな珍しいものをいいのか?と聞いていたがロバもいなくなった今、もう私たちには必要ない。

(ソリよ 第二の人生がんばれよ)


帰り道、兵士の格好をした人が民家に来ているところを見た。

どうやら中には病人がいるようで、その人をどこかに運ぼうとしていた。

兵士2人に抱えられてどこかに連れられて行った。

残された子供たちが心配そうに見ている。


「大丈夫?」と、声をかけた。

「お母さんが病気で…ネビのおじさんに言ったら連れられて行っちゃった。」と、お姉ちゃんと思われる少女が泣きそうになってそう言った。

「お母さんどこに行ったの?」と、悲しそうな顔をして妹のような少女は姉の顔を見ていた。


他に家族は?と聞くと、お父さんは死んじゃった。と言う。

ぐぅーとお腹が鳴った。

アリ?と思ったけど妹の方だった。


「うちに美味しいお菓子があるけど、来る?」と聞いてみた。

「お母さんが知らない人についていったらダメって言ってた。」

と言ってバタンとドアを閉められてしまった。

(かわいくないけど それでいい)


これくらい自衛心がないと悪い大人に騙されてしまう。

アリが「あの子たち大丈夫かな?」と言うので、「あとでチュンの作ったお菓子を持って見に来ようか。」と言った。

アリはそうだね!と嬉しそうに言った。


(そういえばあの子のお母さんはどこに運ばれたのだろうか)


私はその場で遠視で探してみた。


裏通りの人目のない道を進んでいた。

やがて城の裏門とみられるところから中へ運ばれていった。

中に入ってしまいその後は見れなくなってしまった。


あの中に病院でもあるのだろうか?


私は不思議に思いながらも店に戻った。


────


「お客さん来た?」

と聞いてみたが「宣伝もしていないしね。」とムイが苦笑いをした。


私はロバとソリのその後の話をした。

ムイもあのかわいくないロバに少し愛着がわいていたようで少し寂しそうだった。


「もしかして薬って高価なものっていうイメージがあるから普通の人は手が出しにくいのかも。」


沈黙が流れた。


「営利目的じゃないからのんびりやろうか。」

「そうですね。」


アリはさっき見た姉妹のことが気になっていたようで、

「大丈夫かな?」と心配顔でつぶやいていた。

私はムイにさっき出会った姉妹のことを話した。

ムイは母親が裏門から城内に連れて行かれたことを不審がった。


「暇だし見に行ってみる?」

アリは嬉しそうに「うん!」と答えた。


私は余っていたカップケーキを2つ持ってさっきの姉妹の家に向かった。

相変わらず裏通りは人がいない。

ちょっと薄暗いしジメジメしている気がする。

華やかな城のイメージとは、かけ離れた感じだった。


すぐに姉妹の家の前まで来た。

ノックしてみる。


「はい」

と声が聞こえた。

「さっき話しかけたんだけど、心配で見に来たんだ。」

と言うと「大丈夫です。」と言われた。

確かにいきなり知らない人が来たら怖いか。

「すぐそこで薬屋を始めたんだ。よかったら遊びに来てね。」


私はカップケーキをどうするか悩んでいた。

(知らない人からの食べ物は食べないか)

すると、ドアがゆっくりと開いた。

妹の方が出てきた。


「くすりやさんなの?お母さんを治せる?」

「お母さんは帰ってきたの?」

「まだ帰ってこない。」

そう言って泣きだしてしまった。

お姉ちゃんがそれに気がついて部屋の奥から走ってきた。

「知らない人と話さないでって言ったでしょ!」

「私はシア。そこの先で薬屋を始めたんだ!」

「わたしはヤヤ。」

姉は妹を引っぱっている。

「お姉ちゃん!もう知らない人じゃないよ!!」

姉は引っぱるのをやめた。


「お母さんに知らない人についていったらダメって言われたんだね。ちゃんと守っててえらいね。どこにも連れて行かないし、家の中にも入らないから安心して。」

「それならいいけど。」

と言ってドアから出てきた。


玄関前の階段に座った。

「お姉ちゃんのお名前は?」と聞くと、「ナナ」と教えてくれた。

「ナナちゃんとヤヤちゃんだね。私のことはシアって呼んでね。」

「シアは病気治せる?」と妹が聞いてきた。

「難しい病気はわからないけど、薬が効く病気もたくさんあるから、それなら治せると思うよ。」

(回復魔法もあるし)

ぐぅーっと響いた。

私は持ってきたカップケーキを出した。

「とっても美味しいカップケーキなんだけど、食べない?」

姉妹は食べたそうに見ているが手を出さない。

(お母さんきちんと育てたんだな)


私はひとつまみ取って食べてみせた。

「ほら、毒なんて入ってないよ。食べてみて。」

と言って差し出すと妹は受け取って食べだした。

「ヤヤったら!」

と、姉は言ったがその時姉のお腹も鳴った。

「お姉ちゃん!すごく美味しいよ!!」

「もう一回毒味しようか?」

と聞くと、「大丈夫!」と、ちょっと怒った言い方をして受け取った。

姉妹は美味しそうに無言で食べた。

食べ終わる頃には2人とも笑顔になっていた。

「すごくおいしかった!ありがとうシア!」とヤヤが言い、「ごちそうさまでした。」と、俯きながらナナが言った。


「お母さんいつ帰ってくるかわからないの?」

と聞くと「うん…」と悲しそうな顔をした。

「ここをまっすぐ行ったところに薬屋さんを作ったんだ。元気の出るご飯もあるから、お腹が空いたら食べに来て。」

と言うと「そんなお金ないもん。」とナナが言った。

「オープン記念で今なら無料だよ!」

と言うとヤヤの目が輝いた。

「お姉ちゃん!無料ってお金いらないってことでしょ?」

「でも…」と、ナナが心配そうな顔をした。


「暇ならお店を見に来ない?お客さんが誰も来てくれなくてとっても暇なの。」

と泣いたふりをした。

ヤヤが笑っている。

「中に入るのが怖かったら外から覗くだけでもいいよ。」

ヤヤが、「お姉ちゃん!行ってみたい!」と、ナナの腕を引っぱった。

「見るだけだからね!」と、ナナが怒っている感じを出して言った。


私は少し前を歩き、後ろから姉妹はついてきた。

(この警戒心はすばらしい)


すぐに薬屋の前についた。

「ほら、お客さん誰もいないでしょ。かわいそうなお店だよね。」と、また泣いたふりをした。

ヤヤは笑った。ナナもくすっと笑ってまたしかめっ面をした。


私は店のドアを開けて中が見えるようにした。

「あそこにテーブルがあるでしょう?あそこでおしゃべりをしたりご飯を食べたりもできるよ。」

「お薬はどこ?」とヤヤが聞いた。

「お薬はあのカウンターの奥にあるんだけど中に入らないと見えないかな…」

ヤヤが、「お姉ちゃん!お薬見てみたい!!」と、駄々をこねた。

ナナは困っている。

「ナナちゃんは私が何かしそうで怖い?」

と聞くと、顔を横に振った。

「お母さんとのお約束守ってるんだね。」

と言うと、頷いた。

「お母さんとの約束守っててえらいね!無理やり中に連れて行ったりはしないから安心して。」

ヤヤは「入りたい!!」とまだ言っている。


私は2人にアリを見せた。

2人の目が輝いた。

「かわいいー!」

「この子はアリ、2人のことをとても心配しているの。」

アリは突然のことでびっくりしていた。

「噛まない?」とヤヤが聞いたので、「とっても優しいいい子だよ。」とアリを撫でて見せた。

「触ってもいい?」「いいよ。」ヤヤはそっと手を出した。

優しく背中を撫でた。

「ふわふわだね!お姉ちゃんも触ってみて!!」

ナナもゆっくり頭を撫でた。

「ふわふわだ。」

「アリは人じゃないから、仲良くしてもお母さん怒らないんじゃないかな?」

と私は言った。

ナナは「それなら怒らないかも!」と大きな声で言った。

「よろしくね、アリ。私はナナだよ。」

「私はヤヤだよ!」

「アリはいつもここにいます。」と首から下げているカゴを見せた。

「かわいいー!」

「アリは寒いところが苦手だからお店の中だと喜ぶよ。」

と言うと、「中に入っていい?」と、ナナが聞いてきた。

私は「もちろん!」と言って、「どうぞ」と2人を中に入れた。

「暖かいね。」

私はテーブルの上にアリを置いた。

「少し用事があるから、アリのこと見ててもらっていいかな?」と言うと、ヤヤが任せて!と椅子に座った。

ナナも恥ずかしそうに座った。

「じゃあお願いね。」と私は2階へ向かった。


アリは2人に撫でられて嬉しそうだった。

「おいでーアリ!」とヤヤが手を出すとアリは手のひらに乗った。

「お姉ちゃん!手に乗ったよ!!」

と、ヤヤは大興奮だった。

「お姉ちゃんもやってみて!」と言われ、ナナも手のひらを広げた。

アリはナナの手のひらの上に移動した。

「わぁ、きた!」

2人はとても嬉しそうだった。


私は2人のためにホットチョコレートを持ってきた。

「アリの面倒をみていてくれたお礼だよ。」

と言って渡すと2人とも今度はすぐに受け取ってくれた。

「熱いから気をつけてね。」と言うと、2人はフゥーフゥーと上手に飲んだ。

「なにこれ?甘くておいしい!」

「こんな飲み物初めて!」と2人とも喜んでくれた。


姉妹とアリはしばらくテーブルの上で遊んでいた。

アリは2人の前ででんぐり返しや逆立ちをして見せた。

「アリ!すごいね!」

(逆立ちはやりすぎだよ)


外が薄暗くなってきた。

チュンがサンドイッチを袋に入れて用意してくれていた。

私は2人に「アリと遊んでくれたお礼だよ。」と言って渡した。

2人は「ありがとう!」と、元気よく受け取ってくれた。

「もう暗くなってきたから送っていくね。」と、3人で歩いた。


「またアリに会いに来てくれる?」と聞くと、「うん!」と2人とも笑顔で答えてくれた。

家の前につくと「ごちそうさまでした。」とペコリと一礼した。

(礼儀正しいいい子たちだ)


私はカギがかかるのを確認してから薬屋に戻った。

アリが「かわいかったね!」と言った。

「アリのおかげで仲良くなれたよ!ありがとう!」と言うとアリは嬉しそうにしていた。

「でも逆立ちは普通のハムスターはしないわ。」

と言うと、エヘヘと笑っていた。


店に戻るとムイが待っていて、「小さい女の子だったから、怖がらせたくなくて隠れていた。」と言った。

私は可笑しくて笑ってしまった。

「次来たら紹介するね。」

ムイも、笑って「記念すべき1人目のお客様でしたね。」と言った。


(あの子たちのお母さん、早く帰ってくるといいな)



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