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星降る夜祭

すっかり暗くなってしまった。


アリが「お腹空いたー!」と怒っている

モリスのところから2時間くらいかかった。

雪も降ってきて最悪のコンディションだった。


やっと街の灯が見えてきた。

私はホッとして街のまわりにソリを隠すいい場所を探す。

木が密集しているところをみつけそこにソリを置いた。

(みつかりませんように)と念じる。


「ちょっとロバを置いてくるから荷物を下ろしておいて。」とムイに頼んだ。


私は急いで屋敷の庭に瞬間移動して小屋にロバを押し込む。

まわりに従者はいない。

私はカバンから紙を取り出して「しばらくお願いします。シア」と書いて小屋の目立つところに(誰かが剥がすまでくっついてろ)と念じた。


私は急いで雪国に戻る。

「急いで宿を探そう。」


私は急いでいた。


(お店が閉まる前に食事をとらなくては!)


宿屋は街の入口付近にあった。

「助かったね!」

私はいつものように1人部屋を2つとった。

1泊銅貨50枚だと言うのでとりあえず銀貨を5枚渡して5日分を前払いした。

「急いで荷物を置いて食堂を探すよ!」

私たちは2階の部屋へ急いだ。


部屋に荷物を置いてすぐに宿屋を出た。

武器屋や道具屋はもう閉まっているようだ。


私たちは明かりの灯る店を探した。

酒場はあったができれば避けたい。


アリに「おいしいにおいを探して!」と言うと、

「そこを曲がって」「そこをまっすぐ」と道案内してくれた。

通りからそれて細い路地に入った。

「こんなところにあるのぉ?」とチュンは疑っている。

(隠れた名店ってやつだろ)


そしてそれはついにそこにあった。


店のドアを開けるとそこにはお客が、


お客??


店の中にいたのは明らかに魔族だった。

店の中の人たちは一斉にこっちを見たがすぐに食事に戻った。

店員がやってきて、「こちらへどうぞ」と空いている席に案内してくれた。


「当店はシェフのおすすめコースしかございませんが。」

と言われ、「2人前お願いします。」とムイが言った。

店員は明らかにアリと妖精たちを見て「そちらのお連れ様の分はいかがしますか?」と聞かれ、「お願いします。」と答えてしまった。

「かしこまりました。少々お待ちください。」

と言って厨房の方へ消えていった。


チュンとルアンは「素敵なお店ね。」「サービスが素晴らしいね。」と自分たちサイズのグラスに水を注いでくれたことがよほど嬉しかったようだ。

アリも「見えてるみたい!」とキャッキャしている。


私はムイに「みんな魔族だよね?」と小声で聞いた。

ムイは「はい。どういうことでしょうね。」と小声で返事をした。


すぐにパンとオイルを持ってきて「前菜です。」と美しく盛り付けられた何か美味しそうなものを持ってきた。

アリと妖精たちにも小さなテーブルと椅子を用意してくれて私たちと同じように料理を並べてくれた。


テーブルの上にアリたちのテーブルがある不思議な光景だった。


1つ食べ終わると次の皿を持ってくる。

どの料理も美しくて美味しかった。


隣のテーブルの女性が「たいへん美味しかったです。シェフに挨拶をしたいのですが。」と言った。

(こんなのドラマでしか聞いたことないセリフだな)


「大変申し訳ございません。シェフはお客様の前にはいらっしゃいません。お伝えしておきます。」

と言ってスタスタと厨房へ入っていってしまった。


(無愛想だな)


デザートまで出てきて大満足だった。

私は店の雰囲気に圧倒されて会話を楽しむまでいかなかった。

ムイも同じだったようでこの旅1番静かな食事だったに違いない。

ムイが「お会計をお願いします。」と言った。

(高そうだな)


「銅貨10枚になります。」

と言われ、「1人銅貨10枚ですね。」と言い、50銅貨を出した。

(そんなに高くなかったな)

と思っていると「全部で銅貨10枚です。」と言われ、ムイは銅貨を10枚出した。

店員はそれを受け取り「ありがとうございました。またご利用ください。」と言ってドアを開けてくれた。


私たちが帰ろうとすると店員は走って「忘れ物でございます。」と言って50銅貨を渡した。

私はわけがわからずそれを受け取った。


「安かったわね。」とチュンが喜んでいる。

(安すぎる)


私は何かあるだろうと後ろを振り向いた。

「あれ??」

店がなくなっていた。


ムイも驚いて店のあった場所を見ている。

そこには小さな小屋があるだけでさっきまでいたお店がどこにもない。


「シアさん瞬間移動しました?」と小声で聞かれたがこんなところでするわけがない。

私はブンブンと顔を横に振った。


しばらくその辺を探索したがみつけることができなかった。

「もう帰ろうよー」とアリに言われて、宿に戻ることにした。

私はマップを確認する。

すぐ近くのようだった。


細い道を抜けると大きな通りに出た。

酒場くらいしか開いていなかったが、お店は前の街より多い。

「明日ゆっくり回ろう。」

「そうですね。」とムイはまだ納得していない様子だった。


────


私とムイは廊下で別れた。

私は荷物を解き、お風呂へ行く準備をした。

ルアンはお風呂になるとムイのところへ行く。

(気にしなくていいのに)


宿代が高いだけあってお風呂も豪華だった。

この宿には他にもお客さんがいた。

と言うよりとても混雑していた。


私は無言で体と頭を洗い、お湯につかることなく出てきた。

部屋に戻ると「ゆっくりできなかったわね。」とチュンが物足りない感じで言った。

「こんなに混んでいると思わなかったね。」

私は前回の潰れそうな宿屋を思い出した。


「お祭りがあるみたい!」とアリが叫んだ。

部屋のテーブルには1枚のチラシが置いてあった。


『星降る夜祭』

と、書かれ流れ星の絵が添えられていた。

「明日の18時からだって。」

私はチラシを置いて(なるほど)と思った。

タイミングが悪い。


「タイミングよかったわねぇ!」

「祭なんて何百年ぶりでしょうか。」

妖精たちはお祭りが好きなようだった。

「おいしいものあるかなー」とアリは食べ物が気になる様子だった。


悪目立ちは避けてボロを出さないように注意しないと。


その日は長時間の移動で疲れていたのですぐに眠りについた。


(あのレストランはなんだったんだろう)


────


翌朝、朝食の会場も人がたくさんいた。

私たちは目立たないように奥の席を選び静かに朝食をとった。


客たちは「楽しみね」「流れ星見えるかな」と楽しそうだった。

(吹雪けばおもしろいのに)


アリに小声で「シアまた悪い顔してる」と言われた。

(バレてる)


朝食を済ませたので私たちは街中を見てまわることにした。

通りは昨日は暗くて気がつかなかったがいろんな飾りつけがされていた。

そのほとんどが星の飾りだった。

(さすが星祭)


私たちは念のため昨日のレストランを探してみた。

やはりどこにもそんなものはなかった。

(何か魔力がかかっていて見えない仕様なんだな)


見てまわっているうちにあの名前を久しぶりに聞いた。

「今夜のお祭りに勇者様が来るらしいわよ。」

「キャー楽しみね!」


(だから街はこんなに若い女性で溢れていたのか)

ムイにも聞こえたらしく、

「どうしますか?」と小声で聞いてきた。

「とりあえず宿に戻って作戦会議しよう。」


────


私は部屋を(防音室)に加工した。

どこで聞き耳を立てられているかわからない。

念入りに気配探知をして何か悪いものがないか確認する。

悪魔にもらった指輪を確認すると異常はない。


「よし、それでは作戦会議を始めます。」

と私が言うとアリだけ「はーい!」と言って楽しそうだった。


私はルアンにも勇者の話を聞かせた。

「シアの気配を感知するとはすごい人ですね。」

ルアンも感心している。


「今回もし祭に来るとするならばかなり近くまで接近することになります。」

みんなは「うんうん」と聞いている。

「私たちの選択は2つ、1つは今すぐここを立ち去る。2つめはとりあえず屋敷に戻る。どちらがいいですか?」


アリが小さな手を挙げている。

「なんですか?アリくん」

「お祭に行きたいです!」

「却下」

「えぇーーー」

妖精たちも不服そうだ。


「私たちの旅の目的はなんでしたか?実績を作ってから少しずつ王都に近づき、その動向を探ることでしょう?」

「そうだったっけ?」とアリがいい、「商人になって儲けるんじゃなかったかしら?」とチュンは言った。


ムイが「ここで勇者に存在がバレるのが1番悪いことだと思いますよ。」と言った。

アリと妖精たちは「じゃあ屋敷に帰る」と言った。


私たちはお祭りが終わるまで『部屋にこもっている』という設定で屋敷に帰ることにした。

アリが「お土産買って帰りたい!!美味しいもの食べてない!」と怒るのでしかたなく大きな通りに出た。


アリも妖精たちも「これ!」「あれ!」とやかましく言い、いろんな店をまわらされた。

私が「もういいでしょー」と言っていたら横から女の人たちの黄色い歓声が聞こえた。


「きゃー!勇者様よ!!」


私はその目で確認した。

国王の馬車と思われるものの後ろにいる白い馬に跨った金髪頭を。


私はムイの腕を掴み裏路地へ入っていった。

(逃げなければ)


少し進むと見覚えのある店の前でドアを開けて手招きしてる男がいた。

「こちらへどうぞ」

私は徐々に大きくなる歓声に焦り、その店に入ってしまった。


中は昨日と同じだったが客はまだいない。

準備中なんだろう。


中に入るとシェフの格好をした男が出てきた。

「いらっしゃいませ。」


その男は青い瞳をし、白い肌に白い美しい髪にシェフの帽子をかぶっていた。

そのシェフの帽子からは美しい二本の漆黒の角が飛び出していた。


角が。


(角が?!)


私は反射的に戦闘態勢になった。

チュンが「あなたのこと知ってるわ。」と怖い顔をして言った。


「これはこれは光の妖精殿、生きておられたか。」


店内で給仕をしていた男が「こちらへどうぞ。」と席に座るように言ってきた。


私は指輪を確かめてみると色は変わっていない。

(これ壊れてるんじゃない?)


給仕の男の圧に負けて私たちは席についた。

「あなたは‥」


「私は悪魔のメイヤ・ホリストル・テンドンと申します。気軽にメイヤとお呼びください。」

と変なお辞儀をした。

「ここに仕えるのは私の従者のホランと申します。」

給仕の男は同じようにお辞儀をした。


チュンが待ちきれずに前に出た。

「あなたがなぜここにいるのよ!引退したんじゃなかったの?」

「私もそのつもりでおとなしくしていたのですがね…」と演技がかった悲しい顔をして続けた。

「ここ最近、胸騒ぎがしてこの大陸に導かれたのですよ。」と言った。


どうなっているのかわからず私はただこの悪魔とチュンが話すのを見ていた。


ムイが口を開き、「胸騒ぎとは勇者のことですか?」と聞いた。

「これはこれはニヤくんのご子息のムイくんではありませんか。」

とムイに握手を求めた。ムイは驚いて応じている。

「私もそう思ってはるばるこんなところへやってきたのですがね。」と窓の外を覗く。

「確かに素晴らしい才能を持つ若者のようでしたが、私の胸さわぎの原因ではなかったようです。」と言って窓から離れた。


「勇者は何をしにこの世界へ…」

私は思わず口を出してしまった。


「これはこれは!!あなたが噂の特急、いや超弩級の呪物シア殿ですね。お会いできて光栄です。」と握手を求めてきた。

私が固まっているとムイが肘で私を小突いた。

私はしかたなく握手をした。


「勇者は魔王討伐に備えて呼ばれたようですね。」と言った。

「あの国王は大陸中から才のあるものを集めています。」

と、この悪魔は感心したように言った。


「そんなわけで、私は本当の胸騒ぎの原因を探しに行くことにいたします。」

「風の妖精のルアン殿、闇の守護神のアリ殿、またの機会におしゃべりしましょう。」

と言うと消えていった。


私たちは元いた裏路地にいた。


私とムイは呆然と立ちつくしていた。

後ろからは「きゃー!勇者様!こっち向いてー!」と黄色い声が聞こえてくる。


(どういうことなの?)


「確かめに行ってみますか?」とムイが言った。

私が「何を?」と言うと「その指輪の色が代わるかどうか。」とムイが真剣な顔で言った。


妖精たちは「何かあったら私たちに任せて。」と言った。

アリも「ボクがアリを守るよ!」と言った。


ここまで言われたらしかたない。

私たちは先回りできそうな裏道を走った。


うまくそのパレードの先頭に追いついた。

国王と思われる男が王妃と思われる女と馬車の中から手を振っていた。


その後ろに白い馬に乗った金髪の男がまっすぐ前を見て馬車のあとをついてくる。

私は指輪を確認する。

まったく変化はない。

(やっぱり壊れてる??)


馬車が通りすぎ、白い馬が横を通り過ぎようとしたとき勇者がこちらを向いた。

横にいた若い女の人たちが「キャー」と歓声をあげる。


勇者は私を見ていた。

バッチリ目が合った。

通り過ぎるまで私から目を離さずに最後はニッコリと微笑んだのである。

横で若い女の人が倒れた。

パレードは通り過ぎていった。

私は倒れた女の人に回復魔法をかけてその場を去った。


(今のはなんだったの?)

ムイも勇者が私の顔を見ているのに気がついていた。

「シアさんお変わりありませんか?」

私は大丈夫。と言い、ふと指輪を見ると赤くなっていた。

(やっぱり!)

「シア!財布盗まれたよ!」とアリが言う。

ルアンが風魔法でその男を転ばせた。

その男の懐から私の財布が出てきた。

ムイは男から財布を奪い「さっさと行け」と言った。

指輪は青色に戻っていた。


(勇者には反応しなかったということ?)


私たちは宿に戻った。

状況整理をするためだった。


あの金髪男の微笑みが頭から離れなかった。


(嫌いなタイプだわ)




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