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引越

体が重い。

もう少し寝ていたい。


「起きてよー」

(いやです)


「ねぇ!起きてよー!」

(無理です)


「シア!お腹空いて死んじゃうよ!!」


私はしかたなく目を開けた。

外はまっ暗だった。


「まだ夜じゃん」

そう言って私はまた寝ようとした。

「まだじゃなくてもう夜だよー!」

と言われ渋々起き上がった。


妖精たちも私を覗き込んでいる。

チュンは私に回復魔法をかけてくれた。

体が軽くなったと思ったらお腹がグゥーっと鳴った。

アリが「ほら!早く行かないとお店閉まっちゃうよ!」

と言うので急いで着替えをした。

私の服はズタズタボロボロだった。


ムイの部屋をノックすると寝起きのムイが出てきた。

チュンはムイにも回復魔法をかけた。

「ムイ!ごはん!お店閉まっちゃう!!」

アリが怒っている。

「はい、今行きます!」と言ってコートを着て出てきた。


私たちは急ぎ足であの食堂に向かった。

明かりがついている。

「まだやってるね!」アリは嬉しそうだ。


店の中はまだお客がいっぱいいた。

「いらっしゃい!」

娘は奥の空いている席に案内してくれた。

「今日はどうしますか?」と聞かれ、

「ガッツリ系で。」と言うと、「おまかせ下さい!」と言って厨房に入っていった。

この店は注文が楽で本当に助かっている。


またお腹が鳴った。

昨日、干し肉を食べたのが最後だった。

「まだかなまだかな」アリは私の頭に登り厨房の方を見ている。


すぐに娘がやってきた。

「今日はガッツリ骨付き肉でーす。」

目の前に来たのはまさかの両手で持てるタイプの肉だった。

「いただきまーす!」

私は肉を半分削ぎ落としてアリと妖精たちの分にした。

私は残り半分を両手で持ってかぶりついた。

(しみるぅ〜)


私たちは無言で食事を続けた。

あっという間に食べ終わりお腹いっぱいになった。

妖精たちとアリも満腹のようだったからお勘定をして店を出た。

辺りのお店は閉まっていて薄暗かった。


「宿に帰ろう。」

私たちは幸せな気持ちで宿屋に向かった。


私の部屋にみんな集まり、昨日のことについての検討会を開いた。


『あれは何だったのか?』


「私は亡霊だと思うわ。」とチュンが言った。

「だってあの女の人、ちょっとおかしかったわよね?」

私は「確かに」と言った。

ムイが「ダンジョンのクエストみたいなものじゃないですかね?」と言った。

「あぁー、隠しクエストみたいな。」とRPGを思い出す。


「男の人助かったからそれでいいよ!」と、アリが言った。

みんなで「そうだね。」と言って検討会は終わった。


ムイが「あの箱は何だったんですか?」と聞いた。

私は「あれ?」となって箱を探した。

ベッドの下に転がっていた。

「シアったら!」チュンに怒られた。


「開けてみるね。」と言って開けると中にはブローチが入っていた。

鑑定してみたが特に効果はないようだった。

青い石のはまった美しいブローチだった。


「私には大きいし、シアにあげるわ。」とチュンが言った。

みんなも「うんうん」と言うのでもらうことにした。

私はなくさないようにと箱に戻してトランクに入れた。


「そういえばあの不死鳥のスキル!あれすごかったわね!」とチュンが興奮気味で言った。

「脈が止まってても生き返ったりするんですかね?」

と、ムイが聞いてきた。

私は「初めて使ったんだよね。」と言ってスキル一覧を見てみるとそのスキルは消えていた。


「1回使うとなくなるタイプみたい。」

と私が言うと、

「性能が良すぎたもんね。」とみんな納得した。


私は拾った羽をバッグから取り出した。

「キレイだね」とアリがうっとり見ていた。


鑑定してみると『不死鳥の羽』とだけわかった。

「効果はわからないや。」と言ってまたバッグにしまった。


「今日はもう休みますか。」

することがなくなったのでムイがそう言った。

「そうだね。」と解散になった。


アリはまだ元気で「セキまだ起きてるかな〜」とスマホでメッセージを送っている。

すぐにセキから着信があり、「アリ!砂漠のピラミッドみつけたから行こう!」と言われ、「やったー!」とまたゲームを始めた。


「あんまり遅くまでやらないでよ。」

「はーい!」


妖精たちは何やら話し込んでいた。

(数百年ぶりの再開だもんね)

積もる話もあるだろうとそっとしておいた。


妖精たちは話し終えたようで2人で私の目の前にやってきた。

「シア、お願いがあるの。」

とチュンが真剣な顔で言った。


「シアさん、ボクにも血をください!」

と、ルアンが言うとチュンはルアンを叩いた。

「話の順番が違うでしょ!」とチュンはまたイライラしていた。

(この2人仲がいいのか悪いのかわからないな)


ルアンは気を取り直して、「シアさんにご主人様になってほしいのです。」と言った。

私が「また?!」と、聞くとルアンは悲しそうな顔をした。

今度は私がチュンに叩かれた。

「そんな言い方ないでしょ!」


私は「ごめんごめん。でも私はもうチュンの主人になってるんだよね。」と言ってチュンを見た。

チュンは「そんなの関係ないわ!」と言って同じ人に何人もつくことだってあるわ!と、力説していた。


私はルアンを見て「私でいいの?」と聞いた。

ルアンは嬉しそうな顔で「お願いします。」と言った。


私はまた指に傷をつけた。

ルアンはそれを舐めた。


またゾワッとした。


「シアさん、これからよろしくお願いします!」

と、ルアンはペコリとお辞儀をした。

「シアって呼んでいいよ!」と言うと、ルアンは照れながら「シア、ありがとう。」と言って抱きついてきた。

私はルアンを撫でた。

(もふもふしててかわいいな)


「セキがもう寝るって…」と遊び足りない顔をしてアリがこっちにやってきた。

「ルアンが家族になったよ。」と伝えるとアリはルアンに抱きついた。

「やったー!よろしくね!!」


灰色と白いもふもふが戯れている。

(かわいい)


私はもう遅いし寝ようと言ってチュンのベッドの横にルアンの分も出してあげた。

ルアンは喜んでベッドに入った。

「ボク専用ベッドなんてはじめて!」と、とても喜んでくれた。


あんなに寝たはずなのにすぐに眠りについた。


(なんだかいい1日だったな)

(ほとんど寝てただけだけど)


────


次の日またアリが「お腹空いたー」と私を起こした。

ムイを誘って宿屋の朝食を食べに行った。

相変わらず他の客はいない。


受付の人が「すぐ準備しますね」と言って裏に消えていった。

すぐにサンドイッチとミルクを持って来てくれた。

「ごゆっくり」と言って下がっていった。


私たちはゆっくりと朝食を堪能し、外に出た。


今日は雪だった。


外に出たはいいが何も予定がなかった。

「シエナのところにでも行ってみる?」と、よろず屋へ行くことにした。


チュンがルアンにシエナのことを説明していた。

(やっぱり仲良しだな)


よろず屋につくとシエナはすぐに準備中の札を下げた。

「待ってました!裏に来てください」と笑顔で裏に連れて行ってくれた。


裏に行くと植えた薬草たちは青々と茂っていた。

「順調です!」と言って収穫した薬草を見せてくれた。

カゴの中にはたくさんの薬草が入っていた。


「まだ収穫できるのは1種類ですが1日でこんなに採れるんです!」と、とても喜んでいた。


私は「シエナが愛情をかけているからだよ。」と言うと、

エヘヘと照れていた。


「その薬草いくらで売るの?」と聞くと、シエナは真剣な顔になって、「相場より安く売ってもいいですか?」と聞いてきた。

「高いと買えない人がたくさんいるから…」と悲しい顔をした。

私は「もちろん!」と言った。

「シエナが好きに金額を決めて。私はシエナのその考え方すごく好きだよ。」と言った。

シエナは半泣きになり、「ありがとうございます。」と言った。


私たちは安心してシエナの家を出た。


まだ雪が降っている。

私は空を眺めた。

どんどん雪が私の顔に降ってくる。


「雪だるまになっちゃうよ!」とアリが言った。


「雪だるま!作りたい!」と私は思い出してしまった。


雪だるま作ろう!


ムイの目も輝いていた。

妖精たちは「見学で」と言って私のコートに入ってきた。


私とムイは雪を転がした。

雪の大玉を3つ作って積み上げた。

私は人の気配がないことを確かめ、枝とバケツと石とニンジンを出した。


頭にバケツをかぶせ、枝で眉毛と手を作り、石を目と洋服のボタンにし、ニンジンを鼻のところに挿した。


(あれ、口はなんだっけ)

アリが曲がった枝を口につけた。

「ニッコリだね!」


手の枝の先に手袋をつけた。


「完璧ですね。」

ムイは満足気に雪だるまを眺めた。


私たちは雪でべちゃくちゃになったので宿屋に戻った。

「お風呂に入ろう。」


ルアンはムイと男湯の方に入っていった。

アリが「ボクもー!」とついていった。


私はチュンとゆっくりお湯につかった。


突然チュンが「シア、ありがとう。」と言ってきた。

「どした?」と聞くと、

「封印を解いてもらって、仲間にも会えて、こうやって楽しく過ごせて…」と泣きだしてしまった。


「私もチュンやルアンに出会えてすごく嬉しいよ!」と言った。

チュンはお湯で顔をバシャバシャと洗った。


「今日の晩御飯は魚がいいわ!」といつものチュンに戻っていた。


私は「了解!」と言った。

(まだ昼御飯も食べてないけどな)


お風呂を上がり、私はムイにある提案をした。

「報告がてら1時間位屋敷に戻らない?」

ムイは「ぜひ!」と言った。


私たちは屋敷に瞬間移動した。


────


すぐにククルにみつかった。

ククルはいつものように突進してきて私を倒した。

「どうしたの?もう帰ってきたの?」

と言われ、すぐ戻ると言ったら悲しそうな顔をされた。

「お昼、ここで食べていっていい?」と聞くと、すぐに美味しいものを作るわ!と言って調理場に入っていった。


私たちは悪魔の執務室に向かった。

「何だもう帰ってきたのか。」と言って悪魔はいつものようにニヤニヤと笑った。

ムイはニヤのところへ行き、何やら報告をしている。

私は悪魔にルアンを紹介した。


「風の妖精 ルアンです。よろしくお願いいたします、魔王様。」

と頭を下げた。


悪魔は「商人になったのに妖精を見つけたのか!」と大笑いをした。

ルアンはどうしていいかわからなくてモジモジしている。

「すまぬ、よろしくルアンよ。」と言ってもらい、ルアンは元気よく「はい!」と答えた。


ノックの音が聞こえ、「お食事の準備ができました。」とククルが呼びに来た。

「すぐに行く。」と言い悪魔は立ち上がった。

「みんなでいただこうか。」

アリは「やったー!」と、喜んでいる。


久しぶりに食べるククルの料理は格別だった。

味が染み渡る。


「誰かに怪しまれる前に戻らないと。」

と言うとアリは「えー」と不満そうに言った。


「また来るがよい。」と悪魔に言われ、「はーい!」と笑った。


「ごちそうさまでした!」と言って私たちは宿屋の部屋に戻った。


「楽しかったね!」と、アリが言うので、

「またそのうち報告に行こうね。」と言った。


ムイにコーヒーを淹れてあげた。

「食後はやっぱりこれですよね〜」と言って美味しそうに飲んだ。


「あの山、どうしましょうかね?」とコーヒーを飲み干したムイが聞いてきた。


(忘れてた)


「魔物がいないとわかれば人間が大勢やって来るかもしれませんね。」とムイが言う。

「そしたらアライグマさんがみつかるかもしれないよね。」

それは避けたいと思っている。

「でもあの山の薬草やダンジョンは人間たちに必要かもしれませんね。」


私たちは「うーん」と悩んだ。

「アライグマに聞いてみようよ!」とアリが言った。


私たちは山へ向かった。


アライグマの巣の前まで瞬間移動してきた。

「アライグマさん、居ますか?」と聞くと、この前のアライグマが出てきた。

「ちょうどよかったです!」とアライグマは言った。


話を聞くと「引越をしようと思っている。」と話してくれた。

餌もないし、寒いし、南へ行こうと思っていたと言う。

魔物の群れのせいで引越ができていなかったと言った。


私は「ハピリナはどうかな?」とムイに聞いてみた。

ムイは少し悩み、「猟禁止の森を新しく作ってみるのはどうでしょう?」と言った。

確かにハピリナの森は狩猟用にある。


「魔族しかいない村があるんだけど、どう?」と聞いてみた。

アライグマは「川もありますか?」と聞いてきた。

「もちろんあるよ!」と言うと「ぜひ!」と言った。


私はすぐにモヤモヤを出してアライグマを通した。


ハピリナは晴れていた。

ちょうどセキと長老が散歩をしていたようですぐに会えた。

「ママー!」と飛びついてきたセキは成人男性くらいの大きさになっていた。

「みてー!ムキムキ!」と筋肉も見せてくれた。

「セキすごいね!大きくなったね!」と頭を撫でようとしたが私より大きくなっていたのでやめた。

(ちょっぴり寂しいわ)


セキとアリはゲームの話を始めた。

私は長老にアライグマのことを話した。

「良いですな!狩猟禁止の森ですな!」と快諾してくれた。


私たちは未開拓で川のあるところを探した。


すぐにいい場所がみつかり、(アライグマのエサがたくさんある森)を作った。


「巣はどうする?」と聞くと、枝を折ったり穴を掘ったりしていいか聞かれた。

「ここにいる魔族や家畜、それに畑の作物に手を出さないなら好きにしていいよ。」と言った。


アライグマは喜んで、「こんな素敵な森があるなら他には行きません!」と言った。


私たちは安心してアライグマに別れを告げた。

セキにも「また会いに来るね。」と言った。

セキは少し大人っぽくなっていて「心配しないで、ママ。」と言ってくれた。

私は長老に引き続きよろしくお願いします。と言って、あの山に戻った。


「ダンジョンも確認してみようか。」と言ってあの魔法陣のところまで進んでみた。

すると、ドアも魔法陣もなくなっていた。


「なくなってるね。」

「そうですね。」


私たちはあれが夢だったんじゃないかと思い始めた。


「とりあえず危険はないですね。」

とムイが言った。


「エト親子でも連れてくる?」と言うと、

「いいですね!」と賛成してくれたので街に戻った。


病院に行くとエトじゃない人がいたので家に向かった。


エトは家にいた。

私たちは家にあげてもらい、山やダンジョンのことをエトと母親に話した。

「行ってみたいです!」と言うエトと「大丈夫かしら?」と言う母親。


「お父さんに聞いてみて。」と言い、明日は休みだからと言うので、また明日の朝に会う約束をして家を出た。


ちょうどお腹が空いてきたので「ご飯にしようか!」と言った。

妖精たちとアリは「やったー!」と喜んだ。


いつものお店に着き、奥のテーブルに案内された。

「今日はどうします?」

と聞かれ、「今日は魚メインでお願いします!」と言うと、「取っておきがあるよ!」と言って厨房に入っていった。


すぐに大きな魚を見せてくれて、「これ、どう?」と聞かれた。

「ぜひ!それで!」と、お願いをした。

「おまかせ下さい!」と娘は戻っていった。


テーブルには魚のフルコースが並んだ。

チュンは私をみつめて「ありがとう」と言った。

私は「こちらこそ」と言った。

アリが「うん?」と言ったので「おいしいね!」と言うと「うんうん」言いながら魚にかぶりついていた。


(今日はたくさん移動したな)


(ダンジョン、喜んでもらえるといいな)


私たちはお腹も心も満たされた。



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