山のダンジョン
朝から気合を入れてダンジョンにやって来た。
まだ入口しか見ていないので何があるかはわからない。
とりあえず人間の気配はない。
「暑いからここに置いておこう。」
私たちはコート類を脱いで入口の近くに置いた。
「さぁ行ってみよう!」
「おー!」
ダンジョンは久しぶりで楽しかった。
アリは最初から黒い熊になって魔物を追いかけていた。
チュンは植物を観察している。
ムイは久しぶりに温かい空気を感じて「やっぱり温かいっていいですね。」と、しみじみ言った。
向こうの大陸にあった草原のダンジョンのように広い空間ではなく、ある程度の広さが奥に続いている感じだった。
進んでいくと少し開けて大きな水場に出た。
滝のようなものがあって水しぶきが上がっていた。
聖女が自分の大陸以外のダンジョンは知らない。と言っていた。
本来、自然生成するものだと言う。
(私が壊しまくったから作ってくれてただけだった)
水場を覗き込むと中にも魔物がいた。
泳ぐのは無理そうだ。
「先に進めそうにないね。」と私が言うと、
「こっちに何かあるわよ。」とチュンが言った。
私たちが細い道をなんとか進むとそこには通路があった。
暗くて見えなかったので炎を飛ばす。
進んでいくと扉が現れた。
私は探知で危険がないか確認した。
「これ開けるとどこかに転移するトラップだわ。」
と言ってるとアリはすでに開けていて、「ごめん…」と言って消えていった。
「もう!」
私たちはすぐに追いかけた。
扉の向こうの魔法陣のようなものを踏むとグニャリという感覚がして何かフワフワしたものの上に出た。
「まさかボス?!」
チュンは「違うわ…」とちょっと震え声で言った。
ふわふわしていた地面が動いた。
アリが「でっかい魔物だね!」とちょっと離れたところで叫んでいた。
(魔物?)
アリはそのままぶっ飛んでいった。
「えぇーーー!」
そこには大きな熊のようなものが上半身を起こしこちらを見ていた。
私たちはどうやらその魔物のお腹にいた。
私は戦闘態勢をとった。
チュンが慌てて「やめて!」と言った。
「知り合いなの!!」
ぶっ飛んだアリが笑いながらよじ登ってきた。
「飛ばされちゃった〜」
「ムイがどういうことですか?」とチュンに聞いた。
「この子、妖精よ。」と言った。
「えぇーー???」
────
「ルアン久しぶりね!」
チュンが話しかけるとそれはニコリと笑った。
「生きていたのかチュン」
「失礼ね!封印されていただけよ!!」
チュンはペチペチとそれを叩いた。
チュンは私たちの方を向いて、
「風の妖精のルアンよ!」
と言った。
(風の??風の要素どこ??)
それはすごく大きな白い熊という印象だった。
全長20m以上はありそうだった。
ルアンは「大きくなりすぎて起き上がれなくなったから寝ているんだ。」と言った。
確かにこの大きさの巨体が動き回れる広さではない。
チュンは私に「空間制御を持っていたわよね?」と聞いた。
(そんなのあったようななかったような)
「空間制御を発動してここを広げるイメージしてみて!」
と言った。
よくわからないが(広がれ)と念じてみた。
天井がグニャリと歪んで広がった。
ルアンは急に立ち上がった。
お腹にいた私たちは振り落とされた。
「いてて…」
「ごめんよ!嬉しくてつい!!」
と頭を掻きながらルアンは謝った。
そしてクルクル回って伸びたり縮んだりストレッチを始めた。
「なんでこんなところにいるのよ。」
チュンはルアンの頭のまわりを飛びながら聞いた。
「魔王に飛ばされたみたいで気がついたら居たんだよね。」
「それっていつの話?誰に??」
「ゼスっていう魔王だったかな…もう忘れちゃった。」
チュンはゼスと聞いて怒り狂った。
「あいつ本当に許せない!!」
「少なくとも150年以上は前ですね。」
ムイが冷静に言う。
「そんなに経ったのか〜」
と、ルアンはあくびをしながら言った。
(ずいぶんのんびりした妖精だな)
「あなた変身する魔法とか使えないの??」
チュンは少しイライラしてきた。
ルアンは少し考えてから、「多分使えないなぁ〜」と、言った。
「シア!小さくできない?」と聞かれたが、
「生き物には使ったことないんだけど…」と言った。
「死んじゃうかしら…」とチュンはブツブツ言っている。
昔はどうしていたのか聞いてみるとこんなに大きくなかったと言った。
元々はチュンと変わらない大きさだったと言う。
「もしかして呪いの類じゃ?」とムイが言った。
チュンは「確かに!」と言って『昇華』を詠唱し始めた。
5分ほど待っていると虹色の光が現れた。
(何回見てもきれいだなぁ)
キラキラが天に登っていく。
ルアンは少しずつ小さくなってきた。
そしてハムスターのアリより少し大きいくらいになって変化は止まった。
「アリと兄弟みたいだね。」
アリはハムスターに戻って並んでみた。
「ほんとだ!そっくりだね!」
アリは嬉しそうにそう言った。
小さなもふもふが並んでいる。
(かわいい!!)
ルアンは喜び、「チュンありがとう!」と言った。
ルアンは空を駆け回りチュンのように高速で飛び回った。
こうやって見ると『風の妖精』に見えないこともない。
「これで好きな所に行けるわね。」
私は広げた空間を元に戻した。
「ここ、出口は?」
ムイが見渡しながら聞いた。
ルアンは「ないよ!」と言った。
「出口を探している間に大きくなりすぎて動けなくなっちゃった。」とエヘヘと笑っている。
「シアさん、瞬間移動お願いできますか?」と、言われ、
ムイたちを掴んで、「じゃあ行くね。」と瞬間移動した。
「あれ?」
瞬間移動した。
「あれれ???」
「瞬間移動できない魔法がかかってるみたい?」
と、ルアンが言った。
「ボクもおかしいと思ってたんだよね。」と言って笑っている。
沈黙が流れた。
「とりあえず出口を探してみましょう。」
とムイが気を取り直した感じで言った。
「そうだね!出口大捜索!」
「おー!」
私たちはくまなく探し回った。
壁を叩いたり蹴ったり燃やしたり。
ありとあらゆる事をしたけどなかなかみつからない。
「疲れちゃったね。」
アリがもう飽きたという感じでそう言った。
こんな時に限ってチョコレートがない。
私は何かないかとバッグの中を探した。
数日前に買って食べるのを忘れていた干し肉が出てきた。
私はにおいを嗅いでみる。
腐った臭いはしない。
私は複製してみんなに配った。
「ほんと便利なスキルよね!」
もぐもぐしながらチュンが言った。
「ルアンさんは風の妖精さんでしたよね?」
と、ムイがルアンに話しかけている。
「うん!そうだよー!」ルアンももぐもぐしながら返事をした。
「風の流れとか感じる場所はありませんか?」
(なるほど、穴でもないかということか)
ルアンは「うーん」と探しているようだ。
みんな食べるのをやめてルアンをみつめた。
「あっ!」
ルアンが叫んだ。
ルアンが真上を指した。
目を凝らして見るが何も見えない。
チュンが確認しに行った。
天井でクルクル回って探している。
「ルアンどこよ?!」
「えっとねぇ」ルアンも飛んでいった。
「多分ここ」と言って、ただの何もない天井を押した。
ガタンッゴゴゴゴゴ…
(嫌な予感がする)
地面が動いている。
(とっても嫌な予感がする)




