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カレーライス

この世界に平和がもたらされた。


悪役サイドの私が言うのはおかしいかもしれないけれど。

以前のように魔王や悪魔からの依頼はなくなっていた。


(敵がいない!すばらしい!)


私は久しぶりの開放感でのびのびしていた。

(ちょっと待てよ)

仕事がないということは私は今、失業状態だ。

何か役に立たなければ屋敷を追い出されてしまうかもしれない。


私はここぞとばかりに掃除を始めた。

すでにピカピカの廊下の床を磨いてみた。


悪魔が通りかかり「何やってるんだ?」と不思議な顔をして通り過ぎていった。


(既成事実 完了)


私はハピリナに行くことにした。


────


ハピリナは城下町へ戻る人たちでざわざわしていた。

中にはこのままでいいと言う人もいた。

行き来が自由になった今、好きな方を選べばいい。


時間ができた今、私にはやりたいことがあった。


(カレーライスという野望)


私はヤゲンの元に向かった。


ヤゲンはいつものように薬草の世話をしていた。

「これはこれはシア様!大変でしたな!」

ヤゲンは今回の騒動のことを労ってくれた。


「今日はどういった要件で?」


私はカレー粉を出してヤゲンになめさせた。

「ここにあるものでこの味になると思う?」


ヤゲンは「これはまた刺激的な風味!」と驚いていた。

前に相談したときからいろんなスパイスを集めておいてくれていた。


「調合してみましょうかね。」

ヤゲンはニヤリと笑った。

私もニヤリとした。


その作業はかなり楽しかった。

混ぜては確認し、ときには不味くて吹き出した。

アリも舐めてみて「これ本当においしくなるのぉ?」と嫌な顔をした。


なかなかその味にならなかった。

(インド人はすごいな…)


私はヤケクソになって温室の空いてるところに向かって(カレーのスパイスになるもの全部出てこい)と念じた。


一瞬で辺りは緑色になり、見たことのない草がたくさん出てきた。

大きな木も数種類出てきたがほとんどが背の低い草だった。

私は正解がわからずにいた。

(多分種だよな)

私は(種になるまで成長しろ)と念じた。

なんだかそれっぽいものがたくさん採れた。

ヤゲンが出てきて「これは根っこかも?」と引き抜くと生姜のようなものが出てきた。


私たちはまた調合の作業をした。

確実にさっきよりカレーの香りがする。


試行錯誤の末、それは完成した。


(カレー粉 爆誕)


私はさっきの植物たちを複製してから、カレー粉を持ってカリナのところへ向かった。


カリナはドアを開けるなり私に抱きついてきた。

「シア様、お疲れ様でした。」

私は「ありがとう!」と言いカリナとの再会を喜んだ。


私はカレー粉を渡した。

「これが前に言っていたアレですね。」


カリナはひとつまみ口に入れてみる。

「これはなんとも珍しい風味ですね。」


私は小麦粉でとろみをつけるんじゃないかとうろ覚えの知識でカレーの説明をした。


玉葱をあめ色になるまで炒める。と言うのを覚えていたのでカリナに伝えた。


あとは肉やジャガイモ、ニンジンと見覚えのあるカレーの具を用意させた。

カリナは言われたとおりに調理してくれた。


カレーライス第一号が完成した。

私は震えながら口にする。

私が想像していたものと少し違ったがかなりカレーだった。


私はいろんなことを思い出して泣いてしまった。

アリが「そんなにまずいの?」と涙を拭いてくれた。


ここに来てから起きたいろんなことが一気に思い出された。

そして先日のガオルとの一戦。


辛いこともたくさんあった。

悲しい別れもあった。


それが一気に押し寄せた。


いつまでも泣きやまない私の背中をカリナは優しくさすってくれた。

「安心して、もう怖いものはいないよ。」

まるで子供をあやす様にカリナは優しかった。


私はいいだけ泣いてからカレーのダメ出しをした。

カリナはメモを取っている。


私はとても大事なことを忘れていた。


米がない!


カレーライスの道は長く険しいものだった。


「研究しておきますね!」というカリナに手を振り、私は未開拓の土地に来ていた。


水田を出すのは簡単だ。

しかし他の畑と違って米は育てるのが難しいだろう。

とりあえず水田を出してみた。


近くにため池も作り、水の出し入れもできるようにした。

近くで農作業をしていた魔族の人たちが集まって来た。

「シア様!これはなんですか?」

私は水田と米の話をした。

一人がメモってくれている。


「私らにお任せください!」と言ってくれた。


カレーライス1つ作るのにかなり苦戦している。

元の世界でならお湯で温めるだけで美味しいカレーを食べられた。

しかしその陰にはたくさんの人の努力や苦労が詰まっている。

簡単に作り出せるものなんて何もないんだ。


お米だってそうだ。

植えておけば実るものではない。

たくさん手をかけてやっと美味しいお米になる。


私は生産者たちに感謝をしてハピリナを出た。


────


屋敷に戻ると留守番をしていたセキが「遊ぼう!」と言ってきた。

(セキの謎)についてはほとんどが解明されていない。


「よし!遊ぼう!」


私は訓練用の亜空間に移動した。


ここはセキにやりたい放題させたのでひどい有様になっている。


私はリクライニングチェアを出して座ると、「好きな魔法を好きなだけ使っていいよ!」とセキに言った。


アリは黒い熊になり、「ボクにあててごらんよ!」と戦闘態勢だった。


二人はキャッキャ言いながらすごいスピードで飛び回っていた。


2匹のハムスターが取っ組み合いをしていたのを思い出して懐かしんだ。


あの頃の二人はもういない。


アリも闇魔法で応戦していた。


(ふたりとも強くなったなぁ)


お腹がすくまで暴れまわった。

いつの間にか泥だらけになっていた。


ククルにみつからないように部屋にまっすぐ行こう。


────


屋敷に戻ると廊下が騒がしかった。

私がドアを開けて覗くとムイが焦った様子で、

「シアさん!そこにいましたか!大変です!!」

と言った。

私は泥だらけのまま悪魔の執務室に向かった。


悪魔とニヤは深刻な顔をしていた。


私はガオルのスノードームが割れたのかとドキドキしていた。


「勇者が召喚された。」


勇者が?今なんのために??

詳しく聞くとその勇者は雪の中のにある城で召喚されたという。


「嫌な予感しかしないな。」

悪魔はため息をついた。


「また探ってくれるか?」と言われ、私もムイも「はい。」と頷いた。


────


地下室は魔王城の司令室のようになった。

モニターをたくさん並べた。


ムイはすぐに雪の中の城の映像を映した。


城下町は勇者の歓迎モードだった。


ガオルの噂を聞きつけて勇者を召喚したのならいいけど。

(勇者を召喚した理由を探らないと)


私は遠視で城下町をぐるっと一周回った。

特に変わったところはない。


慎重に城の中に進んだ。


この城は『リビルド』という王国にあった。

世界の北に位置するこの王国は1年の大半を雪と共に暮らしていた。


過酷な土地が多く他の大陸との交易はあまりないようだった。


城の中は城下町とは違って静かだった。

私は人の気配を探った。


国王はリビングのような部屋にいた。

ソファのようなゆったりとした椅子に座ってリラックスしていた。


その向かい側に金色短髪の容姿端麗な青年が座っていた。

青い目に通った鼻筋、スラリと伸びた手足。


(主人公とはこういう男のことを言うのだろう)


その男はやはり勇者だった。

気配を探ってみたが威圧感が強くていいものなのか悪いものなのかよくわからなかった。


(鑑定してみようかな)

と思った瞬間、こちらを見た。


目が合ってしまった。


私は急いで意識を戻した。


────


今までは気配を感じ取られているな、という感覚はあったが目が合うことはなかった。

レイにも「遠視の姿は見えない。」と言われていた。


(この勇者かなりできる人だ)


女性の勇者もかなりすごい人だと思っていたが、彼女の比較にならないほど強いと思う。


(敵だとかなりまずいな)


と思ったが、勇者の敵は魔王である。

と言うことは、勇者は私の敵である。


私は悪魔に見たことを伝えに行った。


────


「目が合った?」

悪魔は難しい顔をしている。

今までにそんなことはなかったと伝えると、

「警戒しておいて損はないな。」と言ってニヤと魔王城へ行ってしまった。


地下室に戻るとセキが「封印する?」と聞いてきた。

アリは「人間を封印なんてできないよ!」と怒っていた。


私は恐ろしいことに気がついた。


(私、勇者に封印されるかも)


すでに完璧な呪物として完成している感がある。

いつの間にか特級呪物から『超弩級呪物』にランクアップしていた。

(超弩級なんて聞いたことない)


ガオルを前回封印したのも勇者だ。


目が合ってしまったので見に行くのが怖い。

次行ったら捕まえられるかもしれない。


私はさっきまでカレーを作っていたことが遠い昔のように感じた。


(カレーライスは保留だな)




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