マンガ肉
「お姉ちゃん!早く来て!!」
レイが慌てて私を引っ張る。
「え?なに??どうしたの?」
私はレイについて行った。
城の近くの森にあるあの場所だった。
(レイ、まだここに通ってたんだ)
私は心がギュッとされたようで痛かった。
レイが「見て!」と円型に開けた場所の中心を指差している。
(そこは枯れた花を埋めたところだね)
近くに寄って見てみる。
「え???芽が出てる?!」
レイの話を聞くと毎日ここに来てお水をあげていたのだと言う。
(枯れているように見えて種をつけていたのかな?)
私は魔王に伝えるべきか否か悩んだ。
この芽がうまく育つとも限らない。
期待した挙句にまた枯れたら相当なダメージになりかねない。
私はここにまだ結界があるのを確認し、レイに「このまま毎日お水をあげてくれる?」と聞いた。
レイは頭を縦にブンブン振り、「わかった!」と言った。
(メメちゃん…いるなら出てきて…)
────
ムイはマップで相変わらずガオルの形跡を探していた。
「気配を消されてる今、顔を変えられていたらお手上げですね。」
あの黒いモヤモヤの能力がわからない以上、何が起こっているのかわからない。
何も情報がない今はいろんな可能性を探るしかない。
「ムイにばかり負担をかけてごめんね。」
疲れた顔をしていたムイに声をかけた。
「いいえ、私にはできることが少ないので。」
と少し暗い顔をした。
私は「そうだ!」と思いつき、ムイに「あの北にある城の城下町に行ってみない?」と言って誘ってみた。
(なんなら雪だるまも作っちゃおう)
ムイは少し考えたが「あの奇抜なコートは勘弁してくださいね。」と笑った。
私は目立たないように遠視で住人たちの服装を見てきて似たようなコートを出した。
「これが北の街の流行の最先端です。」
と茶色の地味なコートを渡した。
「これなら悪目立ちはしませんね。」
ムイは着ながら真剣な顔をしていた。
(まじめね)
金髪は目立ちそうだったので髪をまとめ上げてフードをかぶった。
「いかがでしょうか?」
ムイは「完璧です!」と答えた。
私たちは路地裏の人の気配のないところへ出た。
この街もこんなに寒いのに活気のあるいい街だった。
通りにはいくつもの店が並び、見たことのないものがたくさん売られていた。
(あ、お金忘れた)
私たちは注意深く街中を見て回った。
雪がちらちらと降ってきて二人で大興奮した。
「怪しまれます。」
私たちは声に出さないで雪を楽しんだ。
一通り回ったが怪しいところはなかった。
ガオルが騎士だったときのような気配も全く無い。
「帰りましょうか?」と言われたが私は立ち止まった。
「ムイ、お金持ってきてる?」
ムイは財布を取り出した。
「このお金、この国で使えるでしょうか?」
私は遠視で人々がお金を使う様子を見た。
「大丈夫!多分同じ!」
「お金で何を?」
私は不思議そうにしていたムイを引っぱって食堂のような店に入った。
中からすごくいい匂いがしたからだ。
私は戸惑うムイを無理やり椅子に座らせた。
「情報収集だよ。」
店員が来ると隣のテーブルを指差して「あれと同じものを2つ。」と注文をした。
ムイは「了解しました。」と小声で言うと聞き耳を立てているようだった。
(あの骨付きの肉が食べたかっただけなんて言えない)
私も一応店の中にいる人の会話に聞き耳を立てた。
店内は席の半分ほどが埋まっていた。
総勢10人というところだろうか。
ほとんどがどうでもいい話をしていた。
(そりゃそうだ)
10分ほどで注文の品がやってきた。
元の世界の人なら誰でも憧れる両手で持てるタイプの骨付き肉だった。
「食べないと怪しまれるよ。」
と小声で言うとムイも食べ始めた。
(ジューシーで美味しい!!)
私が夢を1つ叶えたところで奥から話し声が聞こえてきた。
「腕のいい魔法使いを探してる男がいたぞ、お前どうだ?」
「どんな仕事だい?」
「詳しくは知らないが報酬はかなりいいらしいぜ!」
「なんだかきな臭い話だな。」
「うまい話には落とし穴があるってか?」
「とんでもない魔物退治とかかもしれねえなぁ。」
「堅実に仕事してるのが1番だな。」
「でも気になるならその男を探すといいよ。弓を担いだ若い男だったよ。」
私はムイを見た。
ムイも頷いている。
(あいつがこの街にいたのは確かだ)
私たちは店を出た。
ムイは財布の中身が空っぽになって悲しんでいた。
「帰ったらお金返すよ…」
「要りませんよ…」
人の気配のない路地裏をみつけ私たちは司令室に帰った。
────
帰ると私はすぐに遠視で街中を探した。
弓を担いでる男はいなかった。
「他の街や村を拠点にしているのでしょうかね?」
ムイが近くの小さな村や街をリストアップしてくれた。
しばらく探したけどみつけることができなかった。
私は「少し休憩しよう。」と言って長椅子に横になった。
天井を見るとレイの生霊がいた。
「ちょっといってきます!」と言ってどこかに行ってしまった。
私は疲れた目を休めようと目を閉じる。
急に雪道を歩くビジョンが見えた。
まわりは木々がそびえ立ち、道なき道を進んでいた。
『ミュキラスめ…』
(魔王の名前??)
『誰だ!?』
急にまわりをキョロキョロと見回している。
私はそこで目を開けた。
(これは…)
嫌な予感がした。
今見ていたのはガオルの見ていたものなんじゃないかと。
声は違っていたがあの言い方はガオルにそっくりだった。
私はみんなに報告しようか迷ったがただの夢だったらいけないと思い、誰にも言わなかった。
────
そこから数日間、必死の捜索にも関わらず弓を担いだ男の姿はなかった。
酒場や食堂でときどき『魔法使いを探している男』の話が聞こえたが決定的なものはなかった。
(もう少しなのに…)
私は気分転換にレベリングをすることにした。
呪詛のレベルを上げておきたい。
私は一人で近くに作ってもらったダンジョンに向かった。
そこはとても広い草原のようなダンジョンだった。
(珍しいタイプだな)
どこからともなく風が吹いてくる。
私は目を閉じて気配探知をした。
前方から何かが来る。
(止まれ)
(潰れろ)
私は探知し、念じては倒し、を繰り返した。
あの足枷の呪いも練習した。
見つからないようにその存在を消しながらしっかりと印をつける。
バランスがなかなか難しかった。
数時間私はそれらを繰り返した。
魔力がそろそろ尽きようとしてきたので帰ることにした。
(呪詛はやはり魔力消費が大きいな)
この草原のダンジョンはシンプルで集中するにはピッタリのところだった。
(聖女様さすがだな! いや、手抜きかな…)
私はムイにお金を返していないことに気づいた。
(適当に薬草っぽいものを採っていこう)
私はまっすぐ帰らずにダイオの城下街に来た。
薬草を取り扱っている店をみつけ、さっきの薬草っぽいものを出した。
「この中で買い取ってもらえるものはありますか?」
店の男はその草を見て驚いていた。
「これはかなりレアな治療に使われる薬草だよ!こんな貴重なものをいいのかい?」
と聞かれたので、「お願いします。」と全部置いてきた。
店主は袋に銀貨をたくさん入れて渡してくれた。
「また採れたら持って来てくれ!」
と見送ってくれた。
(あの草がこんなにたくさんのお金に…)
私はニヤニヤしながら魔王城に帰った。
帰るとムイに袋ごと銀貨を渡した。
「まさか、具現化か複製ですか?!」
と驚いて聞いてきたので、
「自分の力で稼いだお金だから心配しないで!」
と言った。
(草を採っただけなんだけど)
ムイは「こんなにたくさん要りませんよ!」と言ったが「また今度財布を忘れたときに奢って。」と言うと、
「しかたないですね。」と少し照れた顔で袋を受け取った。
────
次の日、留守番ばかりだった2匹とレイを連れて例のダンジョンに行くことにした。
アリとセキは久しぶりのお出かけを喜んだ。
「ここなら広いから好きに飛び回っていいよ!」とセキに言うと喜んで飛び回った。
しばらくみんなで魔物退治をしていると急にセキが光りだした。
眩しくて目を開けていられなかった。
「セキ…大丈夫??」
光がだんだん弱くなってきたのでゆっくりと目を開けた。
目の前に金色に光る物がゆっくりと降りてきた。
私は思わず両手を出しそれを受け止めた。
(これは!!)
おそらくそれは以前長老が見たという『金のウロコ』であった。
(若返るって言ってなかったっけ?)
私は自分の手足を確認する。
特に異常はない。
私は金のウロコを手にしたまま呆然としてしまった。
アリとレイもびっくりして口をパクパクしている。
「あれ?セキは?!」
レイがびっくりしたまま指を差している。
私はその方向を見た。
「え??誰???」
そこには裸の赤い髪をした美少年が倒れていた。
(もしかして攻撃が当たった?!)
人の気配などまったくなかったのに。
私は急いで近寄る。
とりあえずマントを出しかけてやった。
なぜ裸なのだろうか?
セキの炎で服が燃えちゃったのだろうか?
私はパニック状態にになっていた。
とりあえず回復魔法をかけてみる。
赤い髪の少年はゆっくりと起き上がろうとした。
(よかった!生きてる!)
私の方を見ると、「ママ、何があったの?」と言った。
私はこの子の母親もいるのか!とまわりを見渡した。
誰もいない。
「ママ、ボク、なんか変だ!」
その子はガバッと立ち上がった。
マントが脱げそうになったので慌てて着せ直した。
「人間になったみたい!」
アリとレイはまだポカーンとしていた。
私もまだ状況がわかっていない。
「もしかしてセキ?」と聞くと、「そうだよ!」と言って飛びついてきた。
私はその場に尻もちをついた。
セキが人の形をしている。




