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小さなシア

最近私のまわりの人たちは飲み込みが早い。

少し説明しただけですぐに理解してもらえる。


特にレイは説明の途中でも「こうするんだよね?」と理解している。


なんて楽なんだろうか。


「何か変わりはある?」


隣の大陸を見ていたムイに声をかけた。

ムイは「特に何もない」と言った。


私は例の城、『ダイオ』という国の城に生霊を飛ばしてからはマップの開拓をしていなかった。


(そろそろ行くか)


私はムイに「ちょっと行ってくるね。」と言った。

いつもならあれやこれやと指示をされて「絶対に無理はしないでくださいね。」と言われるのだが、今日は少し眉間にシワを寄せただけですぐに「いってらっしゃい。」と言われた。


少し気持ち悪い。

私の心配をするのに飽きたのだろうか。

(それはそれでいいことか)


私は生霊を飛ばした。

それに向かってレイが「いってらっしゃい!」と言っている。

私はそっと手を振った。


ダイオの城まで一気に飛んできた。

(さすがに城の中まで行くのはやめておこう)

今日の目的はマップ開拓だ。


私はすごいスピードで飛び回る。

所々にダンジョンの入口みたいなのが見える。

(聖女様、がんばってるな)


聖女はいつも文句を言いながらダンジョン生成をしている。

嫌いな仕事のようだった。

「敵が強いとか宝箱が少ないとか文句ばっかり言われるのよぉ〜嫌になっちゃうわぁ〜」といつも言っている。


ダンジョン生成も亜空間のように一瞬でできるようだった。

様々な地形に様々なトラップやギミック、進むたびにレベルアップしていく魔物たち。

考えることが山のようだ。

(私には向いてない仕事だな)


目の前に美しい大きな湖が現れた。

陽の光を受けてキラキラ輝いていた。


(キラキラ?ギラギラ??)


明らかに様子がおかしかった。

よく見ると湖の上で何か燃えているようだ。


私は慎重に近づく。


燃えているものの正体は鳥のようだった。

その姿は赤く所々金色でそれはそれは美しいものだった。


鳥はどうやら罠にかかってしまったようで足に鎖のようなものが絡まっている。


(水の上で燃えながらもがいているってどういう状況なの?)

私には火炎耐性がある。

このくらいの炎ならへっちゃらだろう。


「ごめんね、今取ってあげるからね。」


鳥を捕まえたがもがいていてうまくいかない。

私は鎖に向かって(バラバラになれ)と念じた。

鎖はすぐにバラバラになり、自由になった鳥は飛んでいってしまった。


(ツルの恩返しとはいかないか)

私は気を取り直してマップの開拓に励んだ。


1時間もかからずにこの大陸を見終わってしまった。

そんなに大きな大陸ではなさそうだ。


街もそんなに多くない。

小さな30人規模の村がポツポツあってときどき大きめの街がある感じだった。


全体的に森が多く、山も多かったので開拓するのは大変なのだろう。


私は海沿いを飛んで帰ることにした。

波打ち際の岩場で1匹の亀のような生き物がひっくり返ってもがいていた。


(今度は浦島太郎?)


私はそっと持ち上げて元に戻してあげた。

亀は勢いよく海に入っていき私に水をかけていった。


(玉手箱は?)

ビショビショになった。


いい事をしてるはずなのにさっきからずっとモヤモヤする。

(何かしてもらったら『ありがとう』でしょうが)

言葉を使わない魔物たちには無理な話である。


私は海沿いを進んだ。

(いつか船を出して船旅もいいな)


船酔いすることを思い出してちょっと気持ち悪くなった。

(シアの船旅 終了)


少し沖を見るとマグロのような大きな魚がすごいスピードで泳いでいた。


(魚料理…レイが喜びそう)


私はすぐに追いかけた。

銛をイメージして魚にぶつける。

何度かやってみるがなかなかうまくいかない。

(漁師のみなさんに感謝だな)


10分ほど追いかけ回した私はやっと捕まえることができた。

(でかい…重い…)


私はすぐに瞬間移動で魔王城に帰った。

まっすぐ調理場に向かう。


魔王城には料理人がたくさんいる。

その中でも料理長の『ハジト』という男の腕はすごい。

なにやら料理系のスキルをたくさん持っていた。


ハジトはすぐに私の元へやって来た。


「シアさん、これはいったい?」


「海にいた。毒はないよ。」

私は鑑定で食べられるかチェック済である。


ハジトは仲間に手伝わせまな板に乗せた。

どう見てもはみ出ている。


私は空いてる調理台の上に大きなまな板を出した。

「助かります!」

男たちは大きな魚と格闘していた。


「濡れた床の掃除もよろしく!」

ハジトは私に向かって「着替えもしなさい。」と言った。


見ると床がビショビショになっていた。

モップを借りて掃除をする。


部屋に戻りシャワーを浴びた。

このシャワーも私が勝手に取り付けたもので(適温の湯が出る)と念じて作ったものだった。

見たことのないシャワーヘッドは細かな穴がたくさん開いていて元の世界でも味わったことのない気持ちよさだった。

(きっと高級ホテルなんかに装備されてるやつだな)


新しい服に着替えドライヤーで髪の毛を乾かす。

ドライヤーも私が作り出した。


(いいスキルがたくさんあるな)


(スキルも増えたしそろそろ確認しておこうかな)


────

現在のスキル


・生霊操作

・念動力

・物体干渉

・呪詛

・使役

・遠視

・火炎耐性

・水耐性

・雷耐性

・毒耐性

・気配感知

・付与魔法

・調教

・召喚魔法

・テレパシー

・サイコメトリー

・憑依

・火属性攻撃

・水属性攻撃

・雷属性攻撃

・闇属性攻撃

・回復魔法

・気配遮断

・瞬間移動

・身体強化

・透明化

・亜空間生成

・物質変換

・具現化

・鑑定

・複製

・呪い返し返し

・物体創造

・空間制御

・捕縛

・スキル調合

・発明

・悟り

・獣使い

・不死鳥の恩恵


────


またよくわからないスキルが増えている。

(『獣使い』はレイのおかげかな)


私が最近ハマっているスキルを混ぜるイメージでやってるのが『スキル調合』というスキルになったようだった。

『発明』はver.2になってからいろんな新しい物を出しているせいだろう。

『捕縛』は勇者をグルグル巻きにしたとき。

『空間制御』はわからない。


(『不死鳥の恩恵』ってもしかして…ツルの恩返し?!)


よくわからないスキルは持っていても使えないと思っていても、無意識に使っているのものもたくさんあっていつの間にかレベルアップしている。

私が適当だから何がどうそうなってできているのかイマイチ理解していない。


物を具現化するときだってもしかしたら物質変換や物体創造なんかのスキルも関わっていそうな気がする。

(キリナに言ったら喜んで研究しそうだな)

私は一瞬考えたが、(めんどくさいからやめておこう)と、思った。


ドアをノックする音が聞こえ、「シアさんいますか?ご飯ですよ。」と、ムイがやってきた。

「すぐ行きます!」

(さっきのお魚おいしいかな)


食堂に行くと珍しくみんな揃っていた。

「シアが珍しい魚を捕ってきたというのでな。」

魔王は楽しそうだった。


目の前に魚料理がズラっと並んだ。

「新鮮だったから生でもいただけます。」

料理長はペコリとお辞儀をして出ていった。


(お刺身が食べられるなんて!)


私は醤油を探す。

醤油…。


この世界に醤油はなかった。

私は明らかに絶望した。


(よし、それならば物体創造だ!)

私は小さな皿に向かって(醤油よ出てこい!大豆から何かして作る黒くてしょっぱい液体!醤油よいでよ!)と念じてみた。

なんと大成功した。

(わさびは辛いからいらないや)


一口食べてみる。

それは元の世界で食べたマグロのお刺身そのものだった。

私が小さくガッツポーズをしていると「わしにもよこせ」と魔王が醤油を試してみた。


「ほぉ、これはなかなか。」

他のみんなも「おいしい!」と好評であった。


それからしばらく魔王城では”和食”が大流行した。

ハジトは私にどんな料理がいいかと相談してきた。

私は味噌の開発にも成功した。


(魔王城で味噌汁をいただける日が来るとは…)


────


私はいつものようにマップの開拓に行こうかと思い生霊になった。


「一緒に行く。」という声が聞こえた。

振り返るとそこにはレイが飛んでいた。


(飛んで…飛んで?!)


私はびっくりして本体に戻った。

レイは隣の椅子で目をつぶっている。


上を見るとレイがニッコリと手を振っている。

「レイ!1回戻って!!」


隣のレイがゆっくりと目を開ける。

私は鑑定してみる。


・生霊操作


いつの間に覚えたんだ…

「マネして覚えたの?」と聞くと「うん!」と嬉しそうに言った。


「お姉ちゃんと空を飛びたかっただけだよ!」

とレイは怒られると思ったのか悲しい顔になった。


私は深呼吸をする。

レイはいったいどこへ向かっているのだろうか。

このままでは『呪物』になってしまうのではないか。


「一緒に行っちゃダメ?」


(勝手に使われてどこかで迷子になっても可哀想だな…)


「わかった!一緒に行こう。でもまずは近くだけだよ。」


レイは喜んですぐに生霊になった。

私も生霊になる。

下を見ると二人でお昼寝しているようだった。


「まずは城の周りね。」


私はゆっくり移動した。

その横でものすごいスピードでレイは飛び回っている。


(もうこんなに使いこなしているのか)


「魔力の残りをこまめにチェックするんだよ。」

レイは「はい!」と元気よく返事をした。


私たちは城の周りを一周した。

試しに念動力が使えるか聞くと生霊のままで大きな岩を持ち上げた。


(私なんかよりはるかに飲み込みが早い)


「少し疲れた」と言うので本体に戻った。


レイはおやつを食べている。


私はムイに今の話をした。

「これは本当に…シアさんを超える呪物になるかもしれませんね…」

ムイは真剣な顔で怖いことを言う。


キリナが「そんな深刻な顔をしてどうしました?」とやって来た。

キリナにも同じ話をすると同じような反応をされた。

「図書室で少し調べてみます。」

と言っていなくなった。


私は本と聞いて魔王にもらった本のことを思い出した。

あれにはとても助けられた。


あの日屋敷は燃えていなかった。

もしかしたら地下室は無事かもしれない。


私は屋敷跡に行くことにした。

ムイも気になっていたようで一緒に行くという。


「危ないかもしれないからレイはお留守番ね。あと生霊は私がいるときにまた練習しようね。一人で練習したらダメだよ。」と言い聞かせた。


不服そうなレイをセキに預けて私たちは屋敷跡に向かった。


きれいに手入れの行き届いたあの屋敷は見るも無残な状態だった。

ムイはその光景を見て涙ぐんでいる。

私よりも思い出がたくさんあっただろう。


私たちは各自気になるところを探索することにした。

ムイは悪魔の執務室辺りを見るという。


私はまっすぐ地下室があった辺りを探した。


がれきを避けながら何かないかと探してみる。

屋敷の使用人の棟は2階部分がなかったので割とすぐにみつけることができた。

(地下室への階段)


私はゆっくりと中へ入っていった。

中は細かいがれきが転がってきていたがほとんどそのままの状態だった。


私は魔王にもらった本を探す。

ちゃんと本棚にあった。


私は魔王の本とスノードームを手に取ってムイがいる方へ向かった。

ムイは膝をつき泣いているようだった。

私はしばらく離れたところで待った。

ムイにも割り切れない気持ちがあるだろう。


数分固まったようにがれきを眺めていたムイは立ち上がってがれきを避けだした。

私はようやく近づいてそれを手伝った。


しばらくその作業は続いたがムイの求めているものがやっと出てきた。

悪魔の執務室にあった机である。

立派な作りで色んなところに彫刻や細工が施されている。


「ありました!」

二人で掘り出した。


魔王城に持ち帰るのもどうかと思ったので私たちは亜空間に作った草原の家に向かった。


デコボコとおかしな作りのその家は変わらずそこにあった。

二人で中に運んだ。

白い布を出しかけておいた。


「屋敷を建て直したら取りに来よう!」

と言うとムイは笑顔になった。

私たちは汗だくになっていた。

こういう労働も気持ちのいいものだった。


家を出ると草原に風が吹いた。

とてもいい気持ちだった。


世界がずっとこんなだったらいいのに。




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