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キツネの修行

私はまだ震えていた。

目を閉じるとあの赤い瞳がこっちを向いているように感じた。


魔王は私の隣に座りホットミルクを差し出した。

「少し落ち着いたかのぉ?」

私の顔を覗き込む。


私は血の気が引いているのがわかった。

(早く伝えないと)


わかっているが言葉が出てこなかった。

みんな私を心配して駆けつけて来てくれた。


私がまだ震えているのでアリとセキは何も言わずにしがみついていてくれた。


レイもなんとなく空気を読んだのか隅でおとなしくしている。


「城に…大陸の向こうの城に…」


魔王は「ゆっくりでいいぞよ。」と、優しく待っていてくれている。


「騎士の格好をして…あいつが…あの目が…」


そこまで言うと魔王は私を抱き寄せ、

「がんばったな。偉かったぞ。」

と、頭を撫でてくれた。


私はわけがわからなくなり涙が止まらなくなった。


「うんうん、怖かったな。」

魔王は頭を撫でながらそう言った。


(そうか、怖かったんだ)


泣き続ける私の頭をアリとセキも撫でていた。

いつの間にかレイも隣にいて寄り添っていた。

私がそれに気がつきレイの頭を撫でると小さな声で、

「お姉ちゃん、泣かないで。」

と泣きそうな顔で言った。


私は涙を拭った。


魔王はやっと私を解放してくれた。

「詳しく教えてもらえるかの?」


私はテーブルのマップを操作して今見てきた城を映した。


さっき見た部屋にはもう誰もいなかった。

「探してきます。」と言うと魔王は止めた。

「今日はもう十分じゃよ。」


ゆっくり休めと言い魔王と悪魔は部屋から出ていった。

レイはまだ心配しているようだった。


私はレイを撫でて「ありがとう。」と言った。

レイは猫のように喉をゴロゴロ鳴らして喜んだ。


(こんなかわいい子が私を傷つけるはずない)


ムイがもう寝ましょうと言って寝室まで送ってくれた。


私がベッドに入るとレイがやってきて「一緒に寝る」と言った。

すぐにレイはチーターのような模様の美しい猫になった。

背中を私にピッタリくっつけレイはすぐに寝てしまった。

ふわふわの毛は触り心地がとてもいい。


「ずるいよ!」と言ってアリとセキも布団に入ってきた。

「みんなで一緒に寝よう。」


その日私はもふもふに囲まれて眠りについた。

(1匹ゴツゴツしていたけど)


────


翌日は朝から例の城を探った。

ムイに「慎重にお願いしますね。」と言われたので生霊を飛ばすのはやめた。


王都のときは遠視も通らなかったが今は遠視で見ることができる。


騎士たちをみつけた。

王が立派なあの椅子に座り、貴族のような男と話をしている。

その横に昨日のように隊列を組んでいる騎士たちがいた。


私は最大限気配を消す努力をし

騎士たちを観察した。


すぐにその男をみつけた。

今日は赤い瞳をしていない。


その男はそこで普通に騎士として生活しているようだった。


他の騎士たち同様に城の中を見回り、普通に食事を取っていた。


ムイとキリナはこれが本当に?とわからない様子だった。

魔王は私と同様にすぐに見抜いていた。


「城に紛れ込んで何をするつもりじゃろう。」

魔王は「疲れたじゃろ、もうよい。」と言って私の意識を戻した。


賢者の目をも欺くその姿はあの城の誰をも騙しているのだろう。


「監視は程々にするのじゃよ。」と言って魔王たちは部屋から出ていった。


キリナも「調べものをしてくる。」と図書室へ向かった。

ムイは少し休みましょう。と言ってクッキーを持ってきた。

レイたちは美味しそうに食べていた。

私は食べる気になれず「三人で食べな」と言うと2匹とレイは食べるのをやめて私の顔をみつめた。


私は心配させてると感じで「やっぱり食べるね!」と言ってクッキーを口に詰め込んだ。


私は自信が欲しかった。

しかしまだ弱かった。


精神を鍛えないと。


私はキツネを探した。


────


キツネは聖女と礼拝堂のようなところにいた。

礼拝堂とは言ってもここは魔王城である。

崇めているのはおそらく神ではなくもっと禍々しいものだろう。


私は聖女に挨拶をし「花の守護神様にご指導いただきたい。」とお願いした。


二人は頷きキツネは廊下へと歩いていった。

私もあとに続いた。


廊下に出ると「精神の修行ですね。」と言ってきた。

キツネはいつも私の1歩先にいた。


私は「お願いします。」と真剣な顔で頼んだ。


キツネは私のおでこをツンと突いた。


すぐに地震のときのような揺れる感覚がした。

私がバランスを取ろうとするともうそこは花畑だった。


(聖女の花畑)


私はキツネに目隠しをされた。

私は花畑に寝かされる。


「何があっても立ち上がらないでください。ここは虚ろの空間。ここにはあなたしかいません。」


そう言うと静かになった。

キツネの気配が消えた。


(ここには私だけ…)


────


私は教室にいた。

学校祭の係決めをしていた。


私は裏方にあたる仕事のところで手を挙げた。

私が手を挙げるとまわりの人が一斉に手を下ろした。


クスクスと笑い声が聞こえる。

「一人でやるのかな」「可哀想じゃん、誰か一緒にやってやんなよ」「ブスと一緒にいたらブスが伝染るじゃん」

クラスメイトたちのささやき声が聞こえてくる。


(やめて…私が何をしたっていうの?)


────


私はバスに乗っている。

満員状態のバスだ。

隣の男が私を睨みつけてくる。

「ったく、狭いんだよっ」

私の足を思い切り踏みつけた。

男はニヤリと笑い「デブがこっち見てんじゃねーよ」と言った。

私は痛みを我慢して下を向く。


(何もしてないじゃん…)

(私があなたたちに何をしたっていうの?)


────


今日は私の誕生日だ。

ケーキはないとしても好きなおかずくらいは作ってくれているだろう。

「ただいまー」

家の中は静まり返っている。

テーブルに1000円置いてあった。

『急にコンサートのチケットをもらったので三人で行ってきます。好きなものを食べて。』


(誕生日だよ…忘れているの?)

(私なんていらないの)

(私なんていなくてもいいの)


────


「ブス」

「デブ」

「キモい」

「臭い」

「死ね」

「死ね」


「‥‥」


(なんでそんなこと言うの?)

(許せない…)

(許せない…)


(だけど誰かを殺したいなんて思ったこともない)

(私のせいで誰かの存在が消えてしまうのは怖い)

(私が我慢すればいい)

(私なんて…)

(私なんて…)


いてもいなくても誰も困らない。


────


「シア!撫でて!」

「ママ!ボクも!」


「はいはい、順番にね」


「シア大好き!」

「ボクもママが大好き!」


(守らないと)

(この子たちの笑顔を守らないと)


(私なんていなくてもいい?)

(いいや、私がこの子たちを守らないと)


(必要にされているかなんてどうでもいい)

(私がこの子たちを必要としている)


────


「ブス」

「デブ」


(うるさい!)

(うるさい!!)


────


「シアさんのせいで魔王は復活しました。」


(ムイ、何を言ってるの?)


「シアさんのせいで悪魔は死にました。」


(キリナさん!どういうこと?)


「みんなみんなお前のせいで消えてしまう。すべては闇の中へ。」


(魔王まで、何を言ってるの?)


────


(嫌だ!)

(嫌だ!!)


(私は守りたい!大事な人たちを!)

(私は守りたい!この世界を!)


(もうお前なんて怖くない)

(守るものがないお前なんてちっとも怖くない)


(待ってろ、私がやっつけてやるよ!!)


────


花のいい匂いがする。


風が頬を撫でる。


日が差してあたたかい。


キツネの気配がする。

目隠しを取るようだ。


「お疲れ様でした。」

キツネはいつもの無表情でそういった。


「ありがとうございました。」


私は何が起きたのか覚えていない。

目隠しをして、寝かせられて。


何か夢を見ていた気がする。

悲しいような嬉しいような。


だけどこれだけは言える。

(私はガオルをやっつける)

(ボコボコにしてやる)


私は闘志で燃えていた。


キツネは首を傾げている。

(あれ、なんか違った?!)


私は礼拝堂にいる聖女にも感謝を告げた。

聖女は「あなた面白いわね。」とクスクス笑った。


髪の毛がぐしゃぐしゃだった。

私は恥ずかしくなって走り去った。


(聖女に笑われてしまった)

私は髪の毛を撫でつけながら歩いた。


(キツネのあの修行はいったいなんだったんだろう?)


私はステータスを確認した。

新しいスキルが増えていた。


・悟り


(ん?何かを悟っちゃった?!)

あとでムイに聞いてみよう。


私は軽い足取りで司令室に向かった。




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