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生き残り

「新しい作戦司令室です。」


私は海外ドラマで見るような大きな画面に囲まれた部屋を作った。

実際は魔王城の1室を借りていただけだが。

自由に使ってよいと言うので大改造したのだった。


いろんな場所を監視できるように壁にたくさんの液晶画面をつけた。

王都のあった場所や屋敷のあった場所、タナカ町のライブ映像もそこに流した。


テーブルも相変わらず液晶にしてマップや監視映像を映した。


ムイの希望でコーヒーメーカーも出した。


魔王は私と同じように「なんじゃこの苦い水は!」とコーヒーを嫌ったが、私がコーヒー牛乳を飲ませると美味しそうに飲んだ。

(コーヒー牛乳 初勝利)


「シアが言ってたアレじゃな!」

魔王は喜んだ。

「また温泉にいこうな!」


(いつ行けるかわかりませんが)


────


私たちはガオルの形跡を探した。

私とキリナが探知スキルを使ったがまったくその気配はなかった。


(遮断スキルが強いのか、まったく動いていないのか)


王都のあった場所は相変わらず赤黒く渦を巻いていた。

遠視も通さない。


(やっぱりここにいるのかな)


しばらく動きはなかった。

私たちは動向を探りながら鍛錬も怠らなかった。


キツネはあれからずっと消えずに聖女に寄り添っていた。


聖女はたえず祈りを上げていた。

あれが聖女なりのレベリングらしい。

私がスキルを使うとレベルアップするのと同じ原理のようだ。


私は亜空間でキツネを相手にレベリングしていた。

全く歯が立たなかったキツネの動きが見えるようになってきた。


「強くなりましたね。」

キツネは珍しく褒めてくれているようだった。


「花の守護神様のおかげです。」

そう言うとアリが出てきて「ボクもがんばってるよ!」と言い、セキも「ボクもえらいよ!」と出てきた。


2匹ともさらに強くなっているのは目に見えてわかった。

「ふたりとも強くなったね。」

と褒めると2匹は嬉しそうにしていた。


まだまだ足りない気がする。

うちの魔王より強いというからにはレベルは2500を超えているだろう。

私は自分のレベルを確認する。


900になろうとしていた。

(あれ?悪魔を超えちゃった?)

と思って鑑定すると悪魔は1277になっていた。


(悪魔もレベル上げしてたのか)


悪魔ほどのものがレベリングなんてしたらこの世界は壊れてしまうんじゃないか。

私はコーヒーを愉しんでいた悪魔に聞いてみた。


「お前の亜空間に似たようなところがある。」

と、『冥界』というものが存在していると言った。


魔王や悪魔クラスになるとその門が開くらしい。

悪魔は私をみつめて、「お前ならもしかしたら行けるようになるかもしれんの。」と言った。


私は「遠慮しておきます。」と言ってその場を去った。


(冥界って死んだ人が行くところじゃなかったのか…)


私は司令室に戻り異常がないか確認をした。

ムイが相変わらず監視を続けてくれていた。


私はムイに「飛べるなんて知らなかった。」と言って睨みつけた。

ムイはビクッとして「あんな姿見られたくなかった。」と言った。


「えー?かっこよかったよ?」と私は思ったまま言った。


ムイは一瞬目をぱちくりさせて「あんな醜い姿がかっこいいと?」と不思議がった。


私は私のイメージするヴァンパイアの話をした。


黒く美しい髪の毛、白く艷やかな肌、吸い込まれそうなほど美しい瞳、そしてキラっと輝く鋭く伸びた犬歯。

漆黒をまといし羽は艶やかに伸び、月明かりを受けて飛び回る。


私が力説してるのにムイはクスクスと笑いだした。

「こちらのヴァンパイアはそんなにいいものじゃないですよ。」と言った。

私は血を吸って生きてる悪いやつだよ。と付け加えた。


私はムイが勇者の黒いモヤモヤを吸収しているように見えたと話した。


「それは…」と私の知ってるヴァンパイアが生き血をすするように私たちはいろんなエネルギーを吸収して生きている。と教えてくれた。


「ときどきシアさんのも頂いておりますよ。」

と言われ、ゾワッとした。


変な目でムイを睨むと「幸せそうなエネルギーが溢れているときに少しいただいているだけです!」と慌てて言った。


ムイにそんな習性があるとは知らなかった。

「お腹が空いたらいつでも吸っていいからね。」

と、私はムイの手を握りしめて言った。


「あ、ありがとうございます。」

ムイは首を傾げていた。


(ちょっと違ったかな)


ガオルの動いている兆候は相変わらず何もない。

私はタナカ町を見てみた。


何やら揉めているようだった。

私は見に行くことにした。


────


住人たちは一人の子供を取り囲んでいた。

「こいつ!魔族だ!」

男がその子を蹴ろうとしていた。


「やめて!」

私はその男を動けなくした。

振り上げた足は宙でかたまり、バランスを崩して倒れてしまった。


私が「どこから来たの?」と言うと違うところから子供の鳴き声がした。


「私が…私の…」

泣きじゃくる子供を落ち着かせて話を聞くことにした。


「みんなはいつもの生活に戻って!」

私が一喝すると住人たちは渋々戻っていった。


その女の子はサーマルという名前だった。

サーマルはここに来る前に森で小さな猫を拾ったのだと言う。

猫にはレイという名前をつけて大事に育てたという。

それが突然今の姿になってしまったというのだ。

サーマルはレイと話ができて嬉しかったという。

しかし母親に見つかってしまい、さっきの状態になってしまったという。


「レイを殺さないで!」

また涙を浮かべるサーマルに「そんなことしないよ!」と言った。


「でも一緒に住むのをまわりは許してくれないだろうね…」

と言うとサーマルはまた泣きだしてしまった。

レイも悲しそうな表情を浮かべ、「泣かないでサーマル。」と頭をなでている。


私はレイを鑑定してみた。


・名前 レイ

・年齢 8歳

・種族 魔族 サーバル種

・レベル 72


(レベル72とは…あのバカ勇者より高い…)


「レイの家族は?」と聞くとついに泣きだしてしまい、

「人間に殺された。」と言った。


私はサーマルに「レイはここにいたら幸せになれないから、仲間のいるところに連れて行くね。」と言った。

サーマルはレイを抱きしめて「幸せになってね…」と言った。

レイは「今までありがとう、サーマル。」と状況を受け止めたようだった。


私はとりあえずハピリナに連れて行こうと思った。

「クロ様!お待ちください!」と家に帰ったはずのサーマルが走ってきた。

手にはボロボロの熊の人形のようなものを持っていた。

「レイ、これ好きだったでしょ!あげる!」とレイの手に押しつけた。

レイはそれを受け取り、「大事にするね。」と言って笑った。

サーマルもニッコリ笑って手を振った。


なぜだか私が1番号泣していた。

レイを抱きしめて「こんな世界でごめんね。」と言った。

レイは軽く頷き私の手を握った。

「行こうか。」

私はハピリナに向かった。


────


ハピリナは今日も平和そうだった。

城下町から避難してきた人たちものびのびと生活しているようだった。


私は長老のところへレイを連れて行った。

長老はレイを見て「珍しい種族じゃな。」と言った。

この村には同じ種族の者はもういないらしい。


レイはキョトンとしている。

長老にレベル72であることを伝えると、長老も驚いていた。

「8歳で72とは…」

レイに「ここはみんな優しい人たちばかりだよ。家族みたいなものだから安心して暮らしてね。」と言った。

レイはニコリとして「お姉ちゃんありがとう。」と言った。


とりあえず長老の家で暮らすことになった。

カリナにも様子を見てあげてほしいと頼んだ。


(あの二人ならうまくやってくれるでしょ)


私はカリナにブラウニーをもらい魔王城に戻った。


────


私は司令室に戻った。

ムイとキリナはコーヒーを飲みながら休憩していた。

私はちょうどよかったとブラウニーを渡した。


私はサーマルとレイの話をした。

「サーバル種とは珍しいですね。」

ムイもそう言った。


毛皮が人気で人間たちに狩り尽くされたのだという。

「猫型と人型、自由に変身できる種です。」

ムイは「小さなうちに両親を亡くして変身のしかたがわからなかったのかもしれませんね。」と推測した。


(毛皮のためにそんなことをするなんて…)

人間は身勝手な生き物である。

毛皮がなくたって死んだりしないだろう。


キリナはブラウニーをみつめ悲しい顔をしていた。

(おいしくなかったかな)


「人間は手に入れてもさらに欲しがる生き物ですね。」


そう言ってみつめていたブラウニーをおいしそうに食べた。

(おいしいのか)


休憩を終えて私たちはそれぞれやるべきことを再開した。

ムイは捜索の範囲を広げて隣の大陸の様子まで見ていた。


キリナと私は亜空間で魔法の練習をすることにした。

お互いの得意な魔法を教え合い、スキルも増えていた。


「この前の槍に風魔法を込めるやつは私の刃陣魔法に似ていますね。」


私は詠唱しないから適当なんだよね。と言うと驚いていた。

「無詠唱なのは知っていましたが、そこまでとは…」

なぜか白い目で見られている気がした。


「チェーンソーみたいなグルグル回る感じのやつ出したいんだよね。」

私がキリナに相談すると首を傾げるので実物を出して見せた。


「これで木を切るの。」

キリナはなるほどと言って自分の得意な刃を飛ばすスキルを見せてくれた。


「これを応用して繰り返し斬るようなイメージでやってみてはどうでしょうか?」


私は言われたとおりにやってみた。

初めはうまくいかなかったが練習するとそれらしいものになった。


「なんていうスキルになりました?」

私は身分証を確認してみるがそれらしきものはなかった。


「えっと、チェーンソーアタック」

(そんなものはない)


キリナはすごいなぁ〜と自分も出そうとしてみたがうまくいかなかった。

「いつか覚えたいですね!チェーンソーアタック!」

(いや、そんなものはない)


私たちは次から次へとスキルの複合技を試した。

キリナは何個かうまくいって上位スキルみたいなのを覚えた。


魔力の消費が激しく、キリナはおばあさんの苦いドロドロを飲みながらやっていた。

私は苦団子を食べすぎると体に毒であるということを思い出した。


「今日はこのくらいにしておこう。」


「そうですね、いつでも臨戦態勢が取れるように魔力は残しておかないといけませんね。」


(臨戦態勢…ガオルは全く姿を表さない…どこで何をしているのか)


私たちは魔王城へ戻った。


その日も何事もなく終わった。

いつまでも安心できない日々。


(温泉に行きたいな…)



私は夢の中で魔王とコーヒー牛乳を飲んでいた。




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