表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/102

悪魔の屋敷

私は久しぶりに身分証を確認してみた。


レベルはいつの間にか700を超えていた。

攻撃系のスキルもかなりレベルアップしていた。

体力や防御力などのステータスも見たことがない数値になっていた。


キリナのレベルもかなり上がったようで見た目もなんだかゴツくなっていた。

「武闘派ではなかったのですが…」

と筋肉のついた腕を眺めて恥ずかしそうにしていた。

「私も攻撃系のスキルをたくさん覚えましたよ。」

と聞き覚えのないスキル名をズラリと並べ上げた。


アリとセキも最初とは比べ物にならないほど強くなっていた。

キツネに攻撃のあれこれを習い、身のかわし方やカウンターの打ち方など実戦的な指導を受けていた。


ムイは強くなっていく私たちを見ては悔しそうにしていた。

「私も戦えたらいいのですが。」

ニヤはそんなムイに、「私たちができるのは他の人にはできないことだよ。」と慰め、サポートに徹してくれた。


────


私たちは順調に準備を進めていた。

王都のあった場所の周りからは人間たちがいなくなっていた。

そのほとんどが亜空間に避難していた。


来たる決戦のときのために私とキリナはレベルアップに励んだ。


すべてが順調に行っていると思っていた。


それは急に現れた。

屋敷は急に赤黒い闇に包まれた。


悪魔は急いでみんなを集め、ククルや非戦闘の従者たちを私にハピリナに送らせた。


じわじわと暗闇は深くなっていく。


「みーつけたぁ〜」

と気持ち悪い声が聞こえてきた。


目の前に操り人形のように不格好に手足を曲げて空中に浮いている勇者が現れた。


「ぐふふ…」と気持ち悪く笑っている。


細く鋭かった目は赤く、ギョロギョロと動き、その視点が定まることはなかった。


私たちはその不気味な姿に圧倒された。


勇者は杖をこちらに向けた。


「危ない!」

ムイとニヤは前に飛び出した。


真っ黒な翼を広げて。


(真っ黒な翼?)


二人はまるでコウモリのような翼を広げていた。

犬歯はすっと伸び、私の知っているヴァンパイアのような姿になった。


私は一瞬その姿に目を奪われた。

「シアさん危ない!」

私はキリナに突き飛ばされてハッとした。


私がいたところには大きな穴が開いていた。


ムイとニヤはその翼で勇者の攻撃を私たちのいない方向に誘導しているようだった。


悪魔も漆黒の羽根を広げて勇者に向かっていった。


(悪魔も飛べるんだ)

私はその美しさにまた目を奪われた。


セキが私とキリナを乗せて空に舞い上がった。


勇者は真っ黒な何かを飛ばし屋敷はガラガラいいながら崩れていった。


「危なかったね!」


セキは少し離れたところに私たちを降ろしてくれた。


キリナは「空中歩行」と唱え空を駆け上がって行った。


(キリナも空を飛べるんですか)


私は地上でポツンとしてしまった。

アリも本来の姿になり私に向かってくる攻撃に攻撃を与えて無効化させていた。

(ふたりともすごいな)

と関心していたが、


(私も戦わないと!)


と勇者を睨みつけた。


私は勇者を捉え(動くな)と命じた。

勇者はその場でジタバタしている。


(完璧には効かないな)


ジタバタしている勇者にすかさず悪魔とキリナが攻撃をいれる。


勇者は何か呪文を唱えまた黒い何かを飛ばしてきた。

ムイとニヤが悪魔とキリナを庇い、翼に黒い何かを受けていた。

よく見るとその黒い何かを吸収しているようだった。

とりあえずダメージはなさそうだった。


すぐに私は勇者に向かって(口を閉じろ)と命じた。


勇者はモゴモゴとしながら何か呪文を唱えようとしている。


魔王が聖女を連れてやってきた。


魔王は杖を突き上げ何かを唱えた。

私たちのまわりはドームのような結界で囲まれた。


(被害を最小限にするためだね)


隣で聖女が何かを唱えだした。

キツネは聖女の前に立ち、攻撃を跳ね返している。


勇者はジタバタしながらも杖を振り回し黒い何かを飛ばしていた。


私は杖に向かって炎を飛ばした。

炎は杖に当たったがすぐに消えてしまった。

雷も毒も試したが効く様子はなかった。


私は神経を集中し鋭い槍を想像して風魔法を放った。


槍は杖に直撃し先端にヒビが入った。


悪魔は「杖を狙え!」と叫び、キリナはそこに鋭い刃を放った。


私は杖に向かって(砕けろ)と念じた。


悪魔とキリナの攻撃が同時に当たった。

杖はボロボロと砕け落ちた。


それでも勇者は空中でジタバタしている。

黒い何かが勇者のまわりをグルグルと覆った。


「させるか!」

キリナはそこに金色の何かを放った。


黒い何かはヘビのように矛先をキリナの方へ向けて飛んでいく。

ムイとニヤはキリナを掴みものすごいスピードでそれをかわした。


私は勇者をロープでグルグル巻きにするイメージをし(拘束)と念じた。


勇者はジタバタできなくなりそのまま地面に落ちていった。


勇者は地面でイモムシのようにもがいていた。


急に空が明るくなり、勇者に向かって虹色の美しい光が差した。


(聖女様だ!)


「昇華!」

と聖女が唱えるとパチンっと鳴って、勇者のまわりの赤黒いものがキラキラとしたものに変わりそのまま空高く舞い上がって行った。


勇者は微動だにしなかった。


悪魔が勇者を蹴り飛ばしてみる。


ゴロンと転がり白目をむいた勇者の顔が見えた。


魔王は勇者をその場にプカプカ浮かせ、城に連れて帰る。と言って消えた。


悪魔は「やれやれ」と言って私たちを城に瞬間移動させた。


────


魔王城につくと勇者は文字通りのグルグル巻きになっていた。


「生きてるの?」

アリはいつものハムスターに戻っていた。


魔王は杖で勇者の頭を小突いた。


勇者は眠りから覚めたようにゆっくりと目を開けた。


「なんだこれ、体が、体中が痛い…」


勇者はもがき苦しんでいた。

勇者の瞳は以前の黒に戻っていた。


「お主、どこまで記憶がある?」


と聞かれた勇者はそっぽを向いて言う素振りがなかった。


私は(話せ)と命じた。


勇者はすぐに口を開き、「国王を殺したところです。」とお行儀よく答えた。


「ガオルの存在は?」と聞くと、「そんなもの知りません。」と答えた。


魔王は難しい顔をして、「あ奴には逃げられたようじゃの。」と言った。


(ガオルが逃げた)


実態を持たずにどこかにいるか、どこかで拠り所をみつけて寄生してるかどちらかだろうと魔王は言った。


悪魔が勇者を睨んだ。


「勇者くん、君をどう処分しようかね。」

と、ニヤニヤしながら杖でつついている。


「殺さないで!お願いします!」


暴れまわっていた頃の面影もなく勇者はイモムシの状態で命乞いをした。


魔王は「好きにするがよい。」と悪魔に任せてくれた。


悪魔はしばし考えて「お前なんぞ殺すほどではないわ。」と言い、指をパチンと鳴らすと勇者は跡形もなく消えてしまった。


「どこいったの?」

と聞くと、悪魔はいつものニヤニヤで「元の世界にお帰りいただいた。」と言った。


私は驚き、「そんな簡単に呼んだり戻したりできるの?!」と聞くと悪魔は真剣な顔をして、


「お前は帰りたいと思っているのか?」


と、聞いてきた。

私は悩むことなく頭をブンブン振り、

「帰りたくないです。」

と答えた。


悪魔はニッコリ笑い、「それではいいではないか、気にするな。」と言った。


(勇者は元の世界に戻された)


毎日怠けて過ごし人々を愚弄して過ごしていた。

元の世界でそんなことは許されない。


(ザマァ)


私は勇者が元の世界で馴染めずに惨めな姿でいるのを想像した。

(お前が人々を苦しめた分、お前も苦しめ)

と念じた。


元の世界まで届くかはわからないけれど、彼は自分のしたことを実感したほうがいい。


「ママ!悪い顔してる!」セキがほっぺをペチペチ叩きながら言った。

「シアを叩かないで!」とアリがセキに飛びかかった。


「お屋敷、なくなってしまいましたね。」

ニヤが悲しそうに言う。

ニヤもムイもいつもの姿に戻っていた。


「そんなもの、シアにかかれば一瞬よ。」

みんなの視線を感じる。


「作れるけど物を消したりできないから同じ場所では無理かも…」


魔王は「しばらくここで暮らすがいい。」と言って従者に部屋を案内させた。


豪華な部屋に案内されてフカフカのベッドに横になる。


私は(地下室とは大違い)と、あの地下室を思い出した。


気づかないうちに涙が流れていた。

それは止まることなく次から次へと流れてくる。


(ガオル、絶対に許さない)


私は今までになく強くそう思った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ