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聖女の隠れ家

国王が亡くなったことを人間たちは知らなかった。

それも王都にほとんど人がいなかったからだ。


街は荒れ放題だった。

人間によってその故郷を追われた魔族の村のようだった。


私は魔王城に来ていた。

魔王に自分のせいでこんなことになってしまったと謝りに来ていた。


魔王は「シアのせいではない。わしが甘い考えであ奴らを生かしておいたせいじゃ。」と言ってくれた。


私は「勇者を倒しに行きます。」と進言してみたが魔王は首を横に振るだけだった。


今行っても返り討ちに遭うだけだろうと言われた。


屋敷に戻ると悪魔の執務室に賢者が呼ばれていた。

私も呼ばれた。


賢者は「聖女様を探しましょう。」と言った。

悪魔は少し嫌な顔をして「何故に?」と聞いた。


賢者が言うには聖女にしか使えないスキルが復活した魔王に効くんじゃないかという。

少なくとも狂ってしまった勇者を正気には戻せるんじゃないかと。

(最初から狂ってたようなものだけど…)


悪魔は私が死んだのは聖女のせいだと思っているのでいい顔をしない。

しかしよく考えれば聖女は呪われたという自覚も呪い返しをしたという自覚もない。

ただ生まれたときにもらった加護が知らない間に勝手に発動していただけだ。


私は「デメリットもないのでは?」と悪魔に言った。

少し悩み「シアがいいのならそうしよう。」と言った。


悪魔は魔王に報告してくるといなくなった。


私は賢者と”勇者と魔王”に気がつかれないように聖女探しをするための作戦会議をした。


私は「私たちの魔王と復活した魔王、どちらも魔王だから話していてなんだかややこしくなるね。」と言った。


賢者が「どちらかの呼び方を変えましょうか?」と言った。

(こちらの魔王の名前はなんだっけ…)


なんだか舌を噛みそうな名前だった。


「ミュキラス!」

私は思い出して思わず叫んでしまった。


「こちらの魔王様のお名前ですね。」

賢者は知っていたようだ。


「キリナは復活した魔王の名前を知ってる?」


「その魔王が太古の昔に封印された魔王であるならば、その名はガオルですね。」


(こっちの方が呼びやすいな)


「では私たちの魔王はそのままで勇者の魔王をガオルって呼ぶね!」


賢者は「了解しました。」と、にこやかに言った。


(私には必要なことだったんだよ)

こんなことでやりきった感を出してしまったことを少し恥じた。


「では気を取り直して…聖女の居場所だけど…」


私はテレビにマップを映して見せた。

賢者は「ほぉ…」と興味津々だった。


テレビをタブレットのように使うのは少し不便だった。


私はテーブルの板面を液晶の画面にした。

「これは!すごいですね、シアさん!」

キリナは次々と出てくる新しいものに「どんな仕組みで…」と反応していた。


私はテーブルの液晶にマップを出した。


私はスマホを操作するように指で動かし拡大したり縮小したりした。

賢者も触ってみては「これは面白い。」と言った。


試しにタナカの村をみつけ最大限まで拡大してみた。

そこには動いている人々が見えた。


「これはリアルタイムですか?」

賢者は驚いている。


「どうやらそうみたいだね。」

いつの間にか遠視のスキルとマップ機能が合体したようだった。


「ここは?」と聞かれ、私は兵士たちの話をした。


「だからガオルが復活したのは私のせいかもしれない…」

と暗い顔をしてしまった。


賢者は「シアさんが復活させたわけではありませんよ。」と優しく言ってくれた。


ムイが飲み物を持って下りてきた。

「私も聖女探しを手伝うように言われました。」

ムイはテーブルのマップを見て感心したように動かしてはタナカ町の人たちを見ていた。


「この規模の町を一瞬で作ってしまうなんて…シアさんはやはりすごいですね。」

ムイはマップを拡大させたり縮小させたりしてそう言った。

(奥に亜空間もあるけどね)

ムイにやりすぎと怒られそうだったので言わなかった。


「うまくいけばこのマップ上に聖女の姿が映し出されるかもしれませんね。」


賢者はそう言ったが広い王国をしらみつぶしに探すのは大変な作業だろう。


「居そうなところをピンポイントで探してみよう。」

とりあえず他に手がなかった私たちは隠れ場所になりそうなところを探してみた。


上空からの角度の映像しか映らなかったので見えない場所は私が遠視で探した。


「シアさんは便利なスキルをたくさんお持ちですね。」


そう賢者に言われなぜかムイが「そうだろう。」とでも言いたげなドヤ顔をしていた。


「見えなくなるような結界を張られているかもしれませんね。」

とムイが言った。


この屋敷や魔王城も確かにそこにはあるのだがマップにはまったく映らなかった。


「そうなるとお手上げだね。」

私はため息をついた。


私たちは少し休憩することにした。


アリとセキがテーブルの上で相撲を始めた。

「セキ!ずるいよ!ボクと同じ大きさになりなよっ!」


「しかたないなー」とセキは赤いハムスターになった。

2匹の取っ組み合いはとてもかわいくて和まされた。


2匹がテーブルを移動するたびにマップはグイングインと動いた。

(酔いそう…)

私が目を離していると急にアリが叫んだ。


「ここに何かいる!」


私たちは目を凝らしてよく見たがそこは何もない空き地だった。


「アリ、何も見えないよ?」


アリは「おかしいなぁ、でもここから何かを感じるんだよね。」と言った。


私たちは現地に行ってみることにした。


その前に私はよく刑事ドラマなんかで使っているインカムを思い出した。

(離れると使えなくなるんだっけ)


私は(どんなに離れていてもすぐに会話できる)と念じてインカムを出した。


賢者とムイに渡し、耳につけるように言った。

二人はまた出てきた怪しげなものに戸惑いながらも耳につけてくれた。


「ここにあるボタンを押すと起動します。」

二人は押してみた。

私は少し離れた場所でヒソヒソと話をしてみた。


「シアさん!聞こえます!」

賢者は嬉しそうに叫んだ。

ムイも「聞こえます。」と驚いていた。


「これで離れていても常に会話ができます!」

二人はパチパチと拍手をしてくれた。



────


ムイは留守番をすると言った。

「マップに変化がないか見張っておきます。」


私は賢者を連れて近くに瞬間移動した。


気配を消す。

賢者も気配を消したようだ。


アリが言う場所に近づいていく。

(何もないな…)


アリが小声で「シア!近いよ!」と言った。


私は(何もないのにな)と思いながら慎重に進んだ。


すると急に壁にぶつかった。

壁というか、ボヨンと見えない大きな風船のようなものにぶつかった。


賢者も不思議そうに見えない壁を押したり叩いたりしている。

「これはなんでしょうね?」


私もよくわからなかったが”悪いもの”という印象は受けなかった。

何かほのかに暖かい、優しいものに思えた。


私たちがボヨンボヨンとしているとアリが出てきて見えない壁を触った。

その瞬間眩しい光に包まれて私たちはグニャリとする変な感覚を覚えた。


「シアさん!大丈夫ですか?!」

ムイがインカムで叫んでいる。


あまりの眩しさに目を閉じていたがだんだん周りが見えてきた。


(ここ、見覚えがある)


そこは美しい花畑だった。


丘の上には大きな木が1本。


セキが出てきて、「ボク、ここ知ってる!」と言った。

(そうだ…セキが出てきた宝箱があった場所だ)


「シアさん!どこに行きましたか?」

と、ムイが焦っている。


「どこかに飛ばされたみたい…」

私はまわりの様子をムイに伝えた。


「マップ上には確認できませんね。」

ムイは私たちを必死で探しているようだった。


キリナはうっとりとした顔で花畑を眺めている。

「キリナさん、大丈夫ですか?」


キリナはハッと我にかえり、「大丈夫です!ここはどこなんでしょうね?」と言った。


私たちはとりあえず木の根元まで行ってみることにした。

セキは嬉しそうに飛び回っていた。


アリは籠から身を乗り出して「あいつがいる!」と叫んだ。

(あいつ?)


すぐにその正体がわかった。

目の前が金色に光りだしたからだ。


(花の守護神)


そこには金色のキツネがいた。


「お久しぶりですね。」


隣を見るとキリナが震えていた。

「お前は…勇者の敵…」


私はどうしていいかわらなくなった。

呆然として目の前にいる金色のキツネを見ていた。


ムイが「大丈夫ですか?」と叫んでいる。

私はここの映像をムイに見せようとテーブルの液晶に映るよう念じた。


「これは…」

ムイもこの状況がつかめずに絶句した。


キリナはキツネに向かって飛びかかろうとした。

アリは巨大な黒い熊になってそれを阻んだ。


「守護神様、何を?」


アリはキリナに落ち着いて話を聞くようにお願いした。


キツネの方に振り返り、「説明して。」と言った。

キツネは語りだした。


前の勇者の話だった。

彼女はガオルにその身を乗っ取られる寸前だったという。

勇者は必死に抵抗していたが「時間の問題だった。」とキツネは言った。


「そんなわけ!」とキリナは叫んだが、すぐに押し黙った。

どうやらその兆候があったのかもしれない。


「だから乗っ取られる前に主人の命令で殺した。」

キツネは顔色1つ変えないで言いきった。


(主人?ダンジョンを作っていると言ってた人のことかな?)

このキツネはダンジョンを作ってる人に名前をもらったと言っていた。


「それって…」と言うと木の後ろから一人の女が出てきた。

真っ白い髪の毛に真っ白いドレスを着ていた。


「聖女様!」

キリナは叫んだ。


「お久しぶりですね、賢者様。」


聖女は「お茶でもしましょう。」とテーブルに案内してくれた。

それは見たことがある光景だった。

(よく庭でお茶をしてたっけ)


私は言葉も出せずに聖女に従った。

三人は花畑でお茶を飲んだ。


アリはいつものハムスターに戻っていた。

セキはまだ飛び回って遊んでいた。


「何から話しましょうかね。」


聖女は「まず、あなたを殺してしまって本当に申し訳ないことをしました。」と、頭を下げた。


私は驚いて、「こちらこそ!ひどい呪いをかけてごめんなさい!」と慌てて言った。


聖女はやはり呪われたという自覚がなかったという。

髪の毛が白くなったのでもしかして?と気がついたそうだった。

悪魔のことを聞くと「そういう悪魔がいることは知っている。」と答えた。

呪いの効果はまだあるようだった。


聖女は私が思っていたバカ女ではなかった。

(申し訳ない)


国王が殺されたのを知り、すぐにここに逃げ込んだという。

「ここはいったい…」

私が聞くと、


「ここは私の夢の場所。」と答えた。

聖女もよくわかっているわけではないらしい。


「私が理想とする私だけの場所。」


私はセキと出会ったときにここに来たと話した。


聖女は笑って、「私の意思を無視してここに入り込むのはあなただけよ。」と答えた。


セキのことを聞くと「私の意思ではない。」と言った。


「では、花の守護神が?」と聞くと、キツネも首を横に振り、「私にはそのような力はありません。」と答えた。


(セキについては謎のままだな)


ダンジョンのことを聞くと、「あなたがボコボコ壊してしまうから大変だったわ!」とちょっと怒っていた。


「ガオルを倒すためには強き者が必要だ。」と言う。

それを育てるためにダンジョンは必要だと言った。


(ボコボコ壊してごめんなさい)

私は崩れていく数々のダンジョンを思い出していた。


「私は逃されたということですか?」

キリナは震えながらキツネに聞いた。


キツネはゆっくり頷き、「ガオル討伐にあなたが必要。」と答えた。


キリナは俯いてしまった。

殺された他の仲間を思い出したのだろう。


どうやら国王が殺されるずっと前からガオルの復活を危惧していたらしい。


私とキリナは言葉を失っていた。

あまりの展開に頭がついてこない。


「キリナさん、聖女様がガオルを倒せるスキルを持っているかもと言ってましたよね?」

私は思い出し聞いてみた。


キリナは聖女をみつめ、

「『浄化』の上位スキル『昇華』をお持ちですよね?」

と聖女に聞いた。


聖女はゆっくりと頷いた。


(昇華って個体が気体になる現象?だっけ?)

私は科学か何かの授業で習ったのを思い出した。


「そのスキルがあればガオルを倒せませんか?」


沈黙が流れる。


聖女は、「不可能ではないと思う。」と言い、「私が詠唱を終えるまで生きていられたら。」と付け足した。


昇華は詠唱が長いスキルだという。

詠唱している間は無防備になってしまうという。


「この場所から発動できないか?」と聞くと、


「ここはまやかしの場所。存在していない虚ろな存在。」

と言った。


(亜空間に似ているけど性質はまったく違うな)


とにかくガオルと対峙した状態で発動しないと意味がないと言う。


「詠唱している聖女様を守れたらいいのね?」


私がサラッとそう言うと聖女は笑い、

「簡単に言うならばそういうことです。」

と言った。


ガオルの力は強大で私たちの魔王ミュキラスよりも遥かに強いという。


「ミュキラスでも押さえ込むのは無理でしょうね。」


私たちは愕然とした。


それほどにも大きな敵と対峙しなくてはいけないと言うことだった。


聖女は「今すぐには無理でしょうが…」と言い私とキリナを見た。

「あなたたちがもっと強くなって力を合わせれば…」


(もっと…強く…)

私が常に思っていたことだった。


私は立ち上がり、「わかりました!」と言った。

「猶予はどのくらいですか?」

と聞くと、「まずは人間たちを守らないと…」と聖女は悲しそうに言った。


「ここに皆を連れてこれたらよかったのですが…」


私は「いい考えがあります!」と言って亜空間の話をした。

ムイが途中で「さすがにその規模はシアさんに負担が大きいです!」と叫んだ。


「そんなこと言ってられないよ!」と私も叫び返した。


聖女は「魔力を心配しているなら私が力になれますよ。」とニッコリ笑った。


(そうだった)


聖女は癒やしの存在。

魔力回復なんて朝飯前だ。


「ではすぐに取りかかりましょう!」


私たちは第一段階『避難』を開始した。



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