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復活

私は勇者を観察していた。


一晩で兵士30人すべてを失った勇者を。


勇者は森のテントに行くと誰もいないことに気づいた。

「どこへ行った?」

と怒鳴りまわりを探していた。


「みつけたらただじゃすまんぞ!」

と怒り心頭の様子だった。


(そりゃそうだ)


勇者は城に戻り国王の部屋に怒鳴り込んでいった。

幹部たちに止められたがそれも吹き飛ばしていた。


「兵士たちをどこへやった?!」


怒鳴る勇者の前で国王はかたまっていた。

「どこにもやってませんぞ。」

国王は震えながら答えた。


勇者は喚き散らしながら城の中を探し回っていた。

城の中はガランとしていて国王の側近である幹部たち数人とその従者たちと聖女とその従者たちくらいしか残っていなかった。


幹部の一人が国王に「賢者様を呼び戻しては…」と言った。

国王は「そうじゃな。」と言い、すぐに賢者のところへ使いを送った。


国王もさすがにこの勇者は使えないと気がついたのだろう。

「勇者を送り返すにはどうしたらよい?」と幹部の魔法使いに相談していた。

「そのようなことは今までにありませんので…」

と残念そうに言った。


「魔王にやられてしまわないかの。」

とひどいことまで言い出した。


(こいつら終わってるな)


私はタナカの町を見に行った。


そこでは汗を流し農作業をする者や小川で子供と釣りをする者、洞窟に探検しに行く者などみんなそれぞれやりたいことをしていた。


(今のところは大丈夫そうだな)


私は念のため町をぐるっと塀で囲い(住人以外入れない)という呪いをかけた。


(低い塀だから乗り越えようとすればできるとは思うけど)


これでは不便だと思い隣の街へ行ける道の近くとその反対側に門を作った。


(住人以外はくぐれない)という呪いをかけ、(タナカの許可があれば通れる)と付け足した。


(あの人たちも呼んであげたいのだけれど…)

王都のまわりの街でホームレスになってる人たちのことを思い出した。


人数が増えればそれだけ問題も増えるだろう。


私は一時的にでもお腹が満たされるように街の協会をまわった。

神父の見ていない隙を狙って食べ物を出し『家のない人たちに配ってください。』と手紙を残した。


神父はそれをみつけると「神よ!ありがとうございます!」と祈りを捧げていた。


(シアver.2神になる)


そんなことを考えまたプッと吹き出した。


神父は通りにいるホームレスたちに声をかけていた。

ホームレスたちはぞろぞろとゾンビのように教会を目指す。


食べ物をもらっても死んだような目をしていた。


(根本的な解決には程遠いな)


私はタナカの町に戻った。


(これ以上大きくすると見つかってしまうかもしれない)


私はこれはもうハピリナ2作戦を決行するしかないと心に決めた。


私はタナカ町の奥にある岩山にゲートを作った。

タナカ町の複製版の亜空間をその向こうへ作った。


ゲートを通ってみるとタナカ町がもう1つあった。

私はそのままそのタナカ町を亜空間の中で複製した。

家は60件になった。


この亜空間はハピリナよりも広そうだ。

しかし町の向こうはただの荒れた土地だった。

(せめて狩りのできる森くらい出してやるか)

私はハピリナの森を思い浮かべ荒れ地に出した。


さすがに魔力量は半分になっていた。

(またムイに怒られてしまう)


私はタナカを呼びつけ、この空間の説明をざっくりとした。

「この先は魔法で作られた空間なのでこちら側からは見ることができない。」


そして馬車と馬を出した。


「王都のまわりの街にいるホームレスの中に移住したい者がいないか探してほしい。」

と頼んだ。


タナカは目を輝かせて「それは願ったりです!かつての仲間がいると思います!」とさっそく支度をして馬車に乗り込んで行ってしまった。


(馬の餌がないな)


私は亜空間に牧草地も作った。


ワタベを呼び、ゲートをくぐらせた。

ワタベは「これは?!何事だ!」と驚いていたが「私が魔法で作った。」と言うと、「クロ様が。なるほど。」とすぐに納得してしまった。


私は亜空間側にもゲートと同じようなドアをモヤモヤのところに出した。

「このドアで行き来ができます。」


あとはタナカ町と同じだと説明した。

「あ、馬の餌もちゃんと育ててね。」

とお願いするとワタベは「承知しました。」と笑顔でこたえた。


タナカが連れてきた人たちにここを与えてほしいということ。

秩序を乱すものがいたら町から追放して『住人ではない』という烙印を押すこと。

家が足りなくなったら私に連絡すること。

といくつかお願いをした。


そして「ここの存在は他言無用。」と強く念を押した。


ワタベは私に尊敬の眼差しを送ると「クロ様は神様のお使いですか?」と真顔で聞いてきた。


(いいえ、魔王の使いです)


さすがにそうは言えずに、「神様ではないけれど似たようなものです。」と答えた。


そして私の懸念していることを話した。


「欲に溺れて他者を蹴落とそうとしてくるものがでてくるかもしれない。」


この町はハピリナほど豊かではない。

協力して維持していかないとすぐに寂れてしまうだろう。


「人間の良きところを見せてください。」


私はそう伝えると「あとはよろしく!」と屋敷に帰った。


ムイには見つかっていない。

私は念の為キリナのおばあさんにもらった苦いドロドロを飲んでおいた。


(やっぱり苦くてまずい)


私は合掌し「ごちそうさまでした。」と言った。

魔力がもりもり回復していくのがわかった。


────


次の日キリナから連絡があった。


「国王に呼ばれたのですが…」

キリナは迷惑そうにそう言った。


私は勇者や兵士たちのことを報告した。


「そんなひどいことになっているのですか…」


「使えないから帰したいだなんて、なんて自分勝手なんでしょうね…」

キリナは残念そうに言った。


「それでキリナはなんて返事をしたの?」


「勇者様がいる限り私が王都へ行くことはないでしょう。と言ってやりましたよ!」

と笑顔で言う。


(勇者が死んだら行くのかな?)

と、ふと思ったけどキリナには言わなかった。


「しかし町を1つ作ってしまうとは…やっぱりシアさんはすごいですね!」と目を輝かせてキリナは言った。

(ムイにはやりすぎだと叱られましたが)


私はまた何かあったら連絡すると言って画面を閉じた。


────


私が勇者をどうするか考えていると魔王がやって来た。


「国王が殺された!!」


私はすぐに犯人は勇者だろうと思った。

そのとおりだった。


魔王は「わしがほっといたせいだ…」とがっかりとうなだれていた。


私は遠視で城の様子を確かめた。


城の中は人気がなく、国王や幹部たちの亡骸がそこらじゅうにあった。

大広間は血だらけだった。


聖女の姿を探したがその従者も含め城の中にはいないようだった。


(逃げることができたのかな)

私は少しホッとした。


勇者は国王の椅子に腰かけ「わしが王だ!」と誰もいない大広間で叫んでいた。


顔も返り血で真っ赤になっていた。

そして細く鋭い目も…その瞳は真っ赤に染まっていた。


その後ろにおぞましいモノを見た。

黒く赤く渦巻く何かがそこにあった。


「シア!!!」

私は魔王に意識を戻された。


私は驚いて目を開けると魔王は震えながら、

「魔王が復活した…」

と言った。


(魔王が復活??魔王ってたくさんいるの?!)


「昔勇者と何年も争っている魔王がおってな…」


と歴史の本で見たような話をしだした。

その魔王はとうとう勇者に封印されたんだという。

(本にはそこまで書いてなかったな)


勇者がどこにどうやって封印したのか魔王は知らないと言う。


「あいつは本当にひどい魔王でな…」


とりあえず勇者のところには近づくなと言われた。

そして消えたかと思ったらキリナを連れてきた。

おばあさんも一緒に。


「賢者は真っ先に狙われるからのぉ。ここで隠れておれ。」

と言い残し消えていった。


キリナとおばあさんはポカンとしていた。


私は二人を悪魔の執務室に連れて行った。


私はみんなを集めて今魔王が話してくれた”新たな魔王”の話をした。


キリナもおばあさんも口を挟むことなく聞いていた。


私が話し終わると悪魔は、

「そういうことなのでよろしく、賢者よ。我が名はライハライト。この世界最強の悪魔じゃ。」

とニヤニヤしながら自己紹介した。

続けてニヤ、ムイ、ククルも自己紹介をした。


「スシス・キリナと祖母のエルザです。お世話になります。」

と二人は深々と頭を下げた。


さすが賢者だ。

この一瞬で自分の置かれた状況とこれからすべきことを理解したようだった。


悪魔はニヤに部屋を用意するように言った。


「賢者様とお祖母様。こちらへどうぞ。」

ニヤは二人を連れて行った。


私は情報の整理が追いつかず倒れそうになった。


ムイが「お部屋に行きましょう。」と支えてくれた。


私はベッドに横になった。

ムイは心配そうに「必要なものはないか」と聞いてきた。


私は「整理する時間がほしい。」と言うとムイは静かに部屋を出ていった。


怒涛の展開すぎてついていけなかった。


(あのバカ男が最悪な魔王を復活させた)


それだけは明白だった。


(私が勇者を怒らせたからこんなことに…)

私は絶望で押し潰れそうだった。


私は勇者の後ろで渦巻く赤黒いモノを思い出して身震いした。

肉体のない魔王はあのバカ男を媒体にするだろうか?


勇者の真っ赤な瞳を思い出して吐きそうになった。


私は目を閉じた。

逃げ出したかった。


しかし無情にもなかなか眠りにつけなかった。


あの真っ赤な瞳が私を睨みつける。




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