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オルゴール

私は緊張していた。


緊張して早く起きてしまった。

私は昨日髪の毛がボサボサだったのを見られたことを思い出し、ブラシで念入りにとかした。


悪魔にもらったこの姿は美しかった。

(本当はブスなんだけどね)


朝食を済ませ私はバッグにオルゴールを入れた。

もしものためにムイにお金ももらっておいた。


セキは赤いハムスターに変身して準備万端だった。

アリはその姿がどうにも気に入らないらしく「変なの!」とずっとブツブツ言っていた。


私は「何があっても本来の姿にはならないように」と念を押した。


2匹のハムスターは揃って「はーい!」と返事をした。

あまりにも可愛い姿に私はニヤニヤしてしまった。


2匹をアリの籠に押し詰めた。

「狭いよー!」と文句を言うがいつもセキが入ってるバッグにはオルゴールを入れてしまった。

「我慢して。」


遠視でダンジョン付近を見るとまだキリナは来ていない。

村の方へ視点を移動させるとキリナが歩いていた。


私は急いでダンジョン入口付近に瞬間移動をする。


すぐにキリナは私をみつけ「お待たせしました。」と言った。

「私も今来たところです。」

と言うと「私も瞬間移動のスキルが欲しいなぁ〜」とキリナは言った。


ダンジョンを進みながら

「キリナさんはどんなスキルが得意なんですか?」と聞いてみた。


「攻撃系のスキルも何個かありますが私が得意なのはサポート系ですね。」

と言って「トラップはあそことあそこに…」と探知のスキルを披露してくれた。


サソリが現れると杖を振りかざし何か攻撃魔法を出した。


私は後ろからついていくだけだった。

それはなんだか新鮮だった。


しばらく進むとこの前の崩れた場所に出た。

キリナは天井を指差して見せた。

暗くてよくわからないがかすかに通路のようなものが見える。

私は炎を飛ばして通路を照らしてみた。


「便利な炎ですね!」キリナは興奮気味に言った。


「問題はここをどう登るかなんですよね。」


私はキリナの腕を掴み天井の通路へ瞬間移動した。


「その手がありましたね!」キリナは嬉しそうだった。


少し進むと開けた場所に出た。

(ボスエリアだな)


キリナは真剣な顔つきで「主がいるようです。」と奥を指差した。


私は頷き慎重に近づいた。

サソリはこちらの気配を察知したのかものすごいスピードでこちらに向かってくる。


「主を倒すとダンジョンは崩れると聞きましたが!」

サソリをかわしながらキリナは叫んだ。


「瞬間移動で外に出るので問題ないです!」

サソリに雷攻撃を当てながら私も叫んだ。


「なるほど!」とキリナは叫んでサソリに杖を向けて視えない刃を当てた。


私はそこに毒攻撃を撃ち込む。

サソリは苦しそうにもがいている。


しかし致命傷ではないようだ。

キリナはすぐさま尻尾の先にも刃を放った。


私もそこに向けて炎を飛ばす。

サソリは勢いよく燃え、もがいていた。

やがてシューシュー音をたて動かなくなった。


「やったのか?」

キリナはサソリに近づこうとする。


地面がぐらっと動いた。


「崩れる!」

私はまたキリナの腕を掴みダンジョンの入口から少し離れたところに瞬間移動した。


ガラガラと音をたててダンジョンは崩れていった。


「こんなに早く崩れてしまうのですね…」

驚いた顔をして崩れゆくダンジョンをみつめていた。


「今までうっかり主を倒すことがなかったみたいで…よかったです。」キリナは私を見て笑っていた。


私は返事をしようと思ったが声が出なかった。

(これは…魔力切れか…)


私はその場に倒れ込んだ。

「シアさん!!」


私は「少し休めば大丈夫です。」と言ったがキリナは私を背負った。


「村がすぐ近くにありますから!」

キリナは私を背負って村まで走っていった。


────

村につくとすぐに家に飛び込み、

「ばあちゃん!水ちょうだい!」

と言って私を長椅子に寝かせてくれた。


私は水をもらい「ありがとうございます。」となんとか言った。

キリナが回復魔法を唱えようとしたので止めた。

「魔力を使いすぎただけなので…」


おばあさんはククルの苦団子と同じ臭いがする黒くてドロドロした液体を飲ませてくれた。

(苦団子と同じ味がする)


私はみるみるうちに元気になった。


私は起き上がり「シアと申します。お世話になりました。」と頭を下げた。


おばあさんは「孫の命の恩人です!シアさんありがとう!」と私の手を握った。


私は食卓テーブルの方に案内され、今度は美味しいお茶をいただいた。


「先日いただいたあの黒い菓子ですが…」

(チョコレート!お口に合わなかったのかな)


「それはそれは美味しい食べ物でした。」

とおばあさんは感慨深げに言った。


「あのような食べ物は見たことも食べたこともありませんでした。」

おばあさんは尊敬の眼差しで私を見つめる。


「あれは…私の村で作っているもので…たくさん作れるものではないので他の街では流通してないでしょうね。」

と答えた。

「そんな貴重なものを!」

おばあさんは「ありがたやありがたや」と私に向かって合掌した。


キリナは見かねて「ばあちゃん恥ずかしいよ…」とやめさせた。


私はオルゴールを取り出し壊れてないか確認した。

大丈夫なようだった。


私はおばあさんに差し出し

「あの美しいネックレスのお礼です。大事なものをありがとうございました。」と言って渡した。


おばあさんはキリナを見てから「いいのかのぉ?」と言い受け取った。


「ネジを回してから開けてみてください。」


おばあさんは言われたとおりやってみた。


開くとバレリーナが出てきて美しい音楽が流れた。


二人はびっくりしてオルゴールをみつめた。

「これはいったい…」


私は二人が喜んでいるようで嬉しかった。

おばあさんは止まるたびにネジを回し、じっとオルゴールを眺めていた。


「こんな高価そうなもの…わしなんかがもらっていいのかい?」

おばあさんは申し訳なさそうに言う。

キリナもうんうんと頷いていた。


「おばあさんのために作ったものですから、ぜひもらってください。」

と言うと「シアさんが作ったと!」すごいすごいと褒められて私はなんだか照れくさくなった。


(具現化しただけなんだけどな…)


おばあさんは夕食を食べていくようにすすめてきたがさすがに断った。


家の外まで出てきたキリナは

「あんな楽しそうなばあちゃん久しぶりに見たよ。」

としみじみと言った。


「よかったらまた遊びに来てください!」

とキリナは手を振った。


私も「今日はありがとうございました!」と手を振り屋敷に瞬間移動した。


帰るとムイが心配そうに待っていた。


「大丈夫でしたか?」


私は「人を連れて瞬間移動するとすごく魔力を使うみたい!」と話した。


ムイは眉間にシワを作り「気をつけてくださいね!」と言って階段を上がっていった。


「キリナもばあちゃんもいい人だったね!」とアリが言うと赤いハムスターのままのセキも「そうだね!いい人!」と言った。


私は2匹に「おとなしくできて偉かったね!」と褒めた。


また連れて行く約束をさせられた。


その日は早めにベッドに入った。


(いい人たちだった)


私は今日の出来事を思い出しながら眠りについた。


────


キリナは3日に1度のペースで連絡してきた。


村の反対側に新しいダンジョンができたから一緒に行こうだとか、ばあちゃんが会いたがっているので遊びに来てほしいだとか、

(本当に友達みたい)


私はキリナの家に行くたびに新しいものを持って行った。

野菜や果物、そしてカリナの作る生クリームたっぷりのケーキ。


二人ともいつも驚きこれは何かと詳しく聞きたがった。

私はそのたびにハピリナのことを濁しながら説明をした。


「いつか行ってみたいな…」とキリナは言う。


私は困った表情をしたのだろう。すぐに

「人を連れて瞬間移動するのは魔力消費が激しかったのでしょう?」とキリナは言った。


そして「いつか自力で行ってみたいです。」と笑った。


さすが賢者だった。

たいていのことは当てられてしまう。


私が使うスキルの数々も言い当ててしまう。

「シアさんのスキルの量はすごいな…」


(まだ半分も使って見せてないけど…)


私はキリナを鑑定してみた。

キリナは私よりレベルが高くてほとんど情報が見れなかった。


おばあさんがウトウトと居眠りをしだしたので私は少し切り込んでみた。


「新しい勇者様はすごい方らしいですね。」と。


キリナは一瞬ビクリとしたが少しずつ話をしてくれた。

自分は賢者であること

王都で働いていたこと

勇者に追い出されたこと


そして「私は今の王都の人たちが好きではありません。」と言った。


私は頷き「私もそう思います。」と言った。


少し沈黙が流れたが「やはりシアさんは王都でお仕事を?」と聞いてきた。


私は違うけど勇者の素行の悪さを目の当たりにした。と伝えた。


キリナは間をおいてこう言った。


「何もしてこない魔王を討伐しようとしている意味がわからない。」


悪魔の推察通りだった。

賢者は魔王から何も仕掛けてきていないことに気がついていた。


「私がその件を勇者様にお伝えすると勇者様は怒りだして…故郷に帰るように言われました。」


と悲しげに話し、すぐに笑顔になって

「故郷に帰れてよかったと思っています!」と明るく言った。


私も「きっとそうだと思います。」と笑顔で言った。


「あー!スッキリした!」とキリナは腕を伸ばした。


「秘密を抱えるのは気持ちのいいものじゃありませんね。」と言った。


私もそう思う。

だけどまだ全部を話すわけにはいかない。


その日はまた来ますと約束をして帰った。


────


(この人になら全てを話してもいいかもしれない)


私は魔王のところへ向かった。



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