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イチゴのケーキ

「賢者はどうだった?」

悪魔はいつものようにニヤニヤしながら聞いてきた。


私は「フレンド登録をしました。」と教えた。


悪魔は「それはなんだ?」とムイに聞いている。

ムイは身分証の機能の1つであり、登録しておくと離れた場所でも会話ができるということを説明した。


悪魔は「便利なものがあるのだなぁ。」と感心していた。


そういえば長老とフレンド登録をした覚えはない。

しかしフレンド一覧には長老の名前があった。


「アリがやってくれたの?」と聞くと「そうだよ!偉いでしょ!」とエヘヘと笑うので撫でてやった。


「それで賢者は王都について何か言っていたか?」


「賢者は私に賢者であることを言いませんでした。」

(あなた賢者でしょ!なんて絶対に言えない。)


「なるほど…」

悪魔は頷き「脅威を感じないならそのまま引き続き探りを入れてみてくれ。」


私は「相手が連絡してくるのを待ちます。」と言い地下室に戻った。


(社交辞令で連絡先を聞いてくれただけかもしれない)


私は元の世界を思い出した。

ドラマか何かで『女性に連絡先を聞かないのは失礼だ』みたいなことを言ってるのを見た気がする。


私はやりたいことがあったのを思い出しハピリナに向かった。


────


ハピリナは今日も平和だった。


「シア様!ごきげんよう!」

元気に話しかけてきたこの女性は料理上手な魔族、カリナだ。


「カリナ!いつもチョコレートをありがとうね!」

カリナは照れくさそうに「お役に立てて光栄です。」とはにかんだ。


「カリナにお願いがあるんだよね!」

と言うとカリナは目を輝かせ「喜んで!」と言った。


私はどうしても『イチゴのショートケーキ』が食べたかった。

なぜかというとおそらくもう少しで私の誕生日だからだ。


この世界にある月日の数え方は独特で私には難しかった。

だから自分でカレンダーを作り今がだいたい何月何日かと言うのを把握してみた。


私がこちらに来てから7ヶ月経とうとしていた。


誕生日がいつなのかはっきりしないけれどこれだけは譲れなかった。


そう、イチゴのケーキである。


この世界にはマドレーヌやクッキーのような焼き菓子はあるが生クリームがない。

もしかしたらバターもないのかもしれない。


生クリームとバターがあれば…この世界はもっと素晴らしいところになるはず…


私はカリナに生クリームとバターの説明をした。


牛乳はある。

これはどうやったら生クリームになるんだろうか?


私はカリナと試行錯誤した。


牛乳を温めたり振ったりしてみた。

牛乳はなんとなく層に分かれた。


これだ!

濃い部分と薄い部分に分けてみる。


舐めてみるとそれは甘くない生クリームだった。


バターは生クリームを振ったらできると何となく知っていた。

瓶に生クリームと思われる液体を入れ激しく振ってみた。

段々と塊ができてきた。


塊を取り出し食べてみる。


味のしないバターだった。


「これは大成功だよ!」

私はカリナにそう言うとカリナはとても嬉しそうにした。

二人とも汗だくだった割にできた量はちょっぴりだった。


「冷蔵庫はある?」


カリナに聞くと「それはなんでしょう?」と言った。

確かにこの世界で冷蔵庫は見たことがない。


「氷はどうしているの?」

氷はこの世界にも存在している。


「氷魔法を使える人が出してますよ。」

と当たり前のように言った。


(氷魔法…私は使えないや…)


「冷やさないと生クリームは完成しないんだよ…」

私は悲しみに打ちひしがれた。


「この村にも氷を出せる者がおりますよ!」

カリナは「呼んでまいります!」と言って家を飛び出していった。


私がバターに塩を混ぜているとカリナは男の子を連れてきた。


男の子は「どこに出すの?」と言うので私は冷凍庫を思い出し具現化した。


カリナと男の子は驚き「タンス?ではないですよね…」といろんな角度から見ていた。


私はそれを開けてここに出してと中の下の段に桶を出した。

「おまかせください!」と男の子言うと何か呪文を唱えちょうどいいサイズの氷を出した。


「でもすぐに溶けてしまいますよ…」


確かに。

この子に氷を出し続けさせるのは可哀想だ。


私はあるスキルを試してみた。

『物質変換』である。


私は溶けない氷をイメージした。

(お前は溶けない…溶けないけど冷たい…)


見た目は変わらなかった。

私は触ってみた。


冷たいが手が濡れることはなかった。

「溶けない氷の完成!」


二人は拍手してくれた。


「この氷はこの中を冷やす専用だから決して食べないように。」と言い聞かせた。


カリナは「もちろんです!」と言って氷を触っては不思議がっていた。


私はさっき塩を混ぜたバターをこの冷蔵庫もどきに入れてみた。


「あとは…量産できないのが残念だね…」


そこまで言って私は気がついた。

物質変換すればいいだけだと。


私はたっぷりの牛乳を運びその全てを生クリームに物質変換した。

そしてその半分をバターにした。


冷蔵庫は生クリームとバターでいっぱいになった。


「なくなったら私が作っておきますね!」とカリナは言ってくれたがなかなか大変な作業だ。

(食べたくなったら作りに来ればいいか)


「さて、あとはスポンジケーキを…」


『計量は菓子作りの基本』とどこかに書いていたのを思い出した。


材料はなんとなくわかるが分量は全くわからない。

「カリナ、がんばろう!」

私とカリナはまた試行錯誤でスポンジケーキを作ろうとがんばった。


(白身を泡立てるはず)


私はステンレス製のボウルと泡立て器を具現化した。

黄身と白身を分けて思いきり泡立ててみる。


小麦粉や砂糖を混ぜた生地に泡立てた白身を入れる。

私は丸い型を出し、そこに出来上がった生地を流し込む。


「これを焼菓子を作るときみたいに焼いてみて。」

カリナはオーブンのようなところに入れて焼いてくれた。


私はホイップクリームに取りかかった。

これは簡単だ。

砂糖を入れて混ぜるだけだ。


よく冷えた生クリームは美味しそうに泡立った。

舐めてみるとそれは私の知っているホイップクリームだった。


私はボウルごと冷蔵庫に戻すと「イチゴを探してくるね。」と言って畑に向かった。


イチゴはすぐにみつかった。

畑仕事をしていた男にイチゴをわけてもらった。


カリナの家に戻るといい匂いがする。


「シア様!焼けたみたいです!」


型から取り出してみると私が知っているスポンジケーキではなかった。


しかし食べてみるとそれは美味しかった!

カリナは「成功ですか?」と聞いたのでスポンジケーキとは…と改良点を話した。


カリナは「また作ってみますね!」とやる気満々だった。


「これはこれで美味しいから今日はこれを使いましょう!」


スポンジケーキが冷えるまで私はカリナと元の世界にあった食べ物について話を聞かせた。

カリナはときどきメモを取っていた。

「作れるものがあるかもしれません!」と目を輝かせていた。


(次はカレーライスかな…)

私は新たな野望をいだいた。


スポンジケーキっぽいものが冷めたので私は仕上げをした。

中にクリームとイチゴを挟み、外側にもたっぷりクリームを塗りたくった。

上にイチゴをたっぷり乗せた。


「シア様!なんと美しい料理でしょうか!」

カリナはこの不格好なホールケーキを見て喜んでいる。


「食べてみよう!」

私とカリナはカットしてそれを皿にのせた。


一口食べてみる。


(美味しい!)


カリナを見ると泣いていた。

「シア様…素晴らしいです…」


私が知っているイチゴのショートケーキではなかったがこれはこれですごく美味しい。


アリとセキも「美味しい美味しい!」と言って食べた。


今まで当たり前のようにケーキ屋でケーキを買って食べていた。

感謝なんてしたことはない。


しかしケーキ1つ作るのにかなりの労力を使った。

私は元の世界で(感謝が足りなかったな)と思った。


当たり前なんてない。

物を生み出すということは本当にすごいことだったのだ。


私は残りの半分をさっきの男の子と食べてと置いてきた。

カリナは「またお料理しましょうね〜」と手を振ってくれた。


今日が誕生日なのかわからないけれど…


(ハッピーバースデー私!18歳おめでとう)

と心の中でつぶやいた。


「ママまた作ってね!」とセキにお願いされた。

私は「そうだね。」と返事をした。


帰ろうとする私に農作業をしていた男がたくさんの野菜を持たせてくれた。


「いつも本当にありがとうね!」


────


いつものように野菜を渡すとククルは喜んだ。

(美味しい料理をお願いします)


私は地下室に行くのをやめ部屋で休むことにした。

泡立て器を回しすぎて腕が筋肉痛になっていた。


私は回復魔法を使えることを思い出し腕に向かって(治れー)と念じた。

すぐに腕は楽になったが疲労感はある。


とても心地よい疲労感だった。


私はベッドに横になるといつの間にか昼寝をしてしまった。

アリが「賢者から連絡が来てるよ!」と私を起こした。


私は急いで応答した。


「はい!シアです!」


画面の向こうにいるキリナは私が大声を出すのを見て少し笑っていた。


「シアさんこんにちは。」


優しい口調だった。

私は明日ダンジョンに行こうと誘われ「ぜひ!」と返事をした。


寝起きで髪の毛がボサボサだった。

(恥ずかしい…)


私はおばあさんにネックレスのお礼に何かプレゼントしようと部屋を探した。


何もなかった。

確かにこの部屋は寝るだけの部屋だ。


地下室に行けば悪魔がくれたいろんなものがあるが…

私はスノードームの記憶を思い出し、やめておこうと思った。


(何か作るか)


私は小さい頃持っていたオルゴールを思い出した。

バレリーナの人形がクルクル回るやつだった。


私はそれをしっかりと思い出し具現化させた。


ネジを回すとちゃんと音も流れた。

なんていう曲名か知らないが優しい曲だった。


(明日渡そう)


私はすぐにダンジョンの下見に行った。

生霊として行くわけにはいかないから今のうちにトラップの場所を把握しておかないと!

槍でも刺さったら死んでしまう。


私は慎重に探知をしてトラップの場所を覚えた。


(生身の体って不便だな)


私はしみじみそう思った。




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