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異世界悪役生活の始まり

小鳥の囀る声…


澄んだひんやりとする空気…


光を感じる…そうだ、これは眩しい朝の光だ。



私は重いまぶたをゆっくりと開けた。

何か嫌なことがあった気がする。

思い出したくもない記憶。

真っ暗な…闇の記憶…



私の目の前には見慣れない部屋の光景があった。

簡素な造りの簡素な部屋。

質素な家具が置いてある。

今寝ていたこのベッドもお世辞にも上等なものとは言えないだろう。



ここは…どこだろう…


キョロキョロと見回してみるがまったく記憶にない。

震える足を奮い立たせ、私はベッドをあとにした。


古くさいドアを開けてみる。

ドアの先には長い廊下があった。

似たようなドアがいくつか並び、奥には鉄でできたドアがあった。


私は恐る恐るそのドアに近づく。

この先には行っては行けない気がする。


私が躊躇していると突然その鉄のドアが開いた。



そこには闇があった。



「やっと目覚めたか、シアよ」


(シア?)


聞き覚えのある言葉だった。


「あなたは…」


そう言いかけて声の主を見るとそこには美しいモノが立っていた。

二本の漆黒の角を携えた銀色の美しい髪の毛。

吸い込まれそうな青い瞳。


そうだ、悪魔がどうとか言ってたっけ。

召喚したとかなんとか…


私はポカンとその美しいモノを眺めていた。


「まだ覚醒してないのか…よかろう、とりあえずついてこい。」


そう言うと私に背を向け、ドアの向こうへ歩いて行ってしまった。


しかたなく私は後を追う。


鉄のドアの向こう側は先ほどの廊下とは違い上品な造りになっていた。

派手ではないがしっかりと美しい装飾を施された調度品が並ぶ。


広間のような部屋まで来ると座るように言われ、私は大きなテーブルにたくさん並んだ椅子の一つに腰掛けた。


「まだお前は自分の置かれている状況を理解していないのだろう?」


角の生えたその美しいモノは私に説明を始めた。


・この美しいモノは悪魔

・名前はライハなんちゃら(長くて覚えられなかった)

・呪物を召喚したら私がやってきた

・私が醜かったので自分好みの姿に変えた

・悪魔が私につけた名前は「シア」

・私はこの悪魔の奴隷

・私はこの悪魔のために働かなくてはいけない

・どうやら私は元の世界で死んでここに転生した


以上、私が理解できたことである。


いや、まったく理解なんてできないし1ミリだって飲み込めない。

世間で流行っている小説やアニメの ”異世界に転生したら○○でした♡” みたいな状況になっているようだ。


私は一生懸命飲み込もうと頭を抱えていたが悪魔はしびれを切らしたようで


「あとはこの男の指示に従え。」


と言い残し去っていった。


見上げるとそこには短髪黒髪の端麗な男がいた。

この男もまた美しい。


(この世界は美しいものしか存在しないのか…)


「私はここの第二執事のムイと言います。シアさんの指導をするように旦那様から言いつけられております。どうぞよろしくお願いいたします。」


さっきの悪魔とは違い穏やかに話すこの男には好感が持てた。


「よろしくお願いします。」


私は素直にこのムイという名の男に従うことにした。


「まずは身支度をしましょうかね。」


そう言われ私は自分の姿を見た。

白く伸びる細い手足に金色の髪の毛。

ボロ雑巾のような布を纏っているだけだった。


見覚えのない自分の姿に「私好みの姿に変えた」という悪魔の言葉を思い出した。


ムイは先ほど私が目覚めた部屋まで戻るように言った。


「この先は屋敷に仕える使用人達の棟になっております。」


(使用人…だから質素なのね。)


部屋に戻るとムイはクローゼットを開き、黒いワンピースを私に渡した。


「こちらにお着替えください。ドレッサーに髪留めもありますので髪も整えてくださいね。」


用意ができたら広間に戻るように言い、ムイは部屋を出て行った。


黒いワンピースに着替え、ドレッサーの前に来た私は初めて自分の姿を見た。



なんて美しいんだろう!!!



そこには金髪で色白な美少女がいた。

まるで人形のような…

サラサラのきれいな髪をなびかせてみる。

化粧もしていないのにこの美しさはなんだろうか。

長いまつ毛に琥珀色の瞳。

ツヤツヤでぷっくりした唇。

きれいに通った鼻筋に大きすぎず高すぎない鼻頭。


理想そのものの姿がそこにあった。


(もしかしてこれは人生をやり直すチャンスなんじゃ!)


私は自分の姿に見惚れ、心が躍った。


これからきっとワクワクするような楽しいことが起きるに違いない!そう思わずにはいられなかった。


ムイに言われたとおり銀色の花の形をした髪留めでハーフアップにし、部屋を出た。

足取りは軽い。


(こんな美少女に生まれ変われるなんて幸せ♡幸せのシアちゃんだわ!)


美少女に姿を変えられたというだけで私はこの世界を受け入れる気持ちになった。

なんて簡単な女だろうか。


”最強のブス” だった私がブスではなくなった。

もう呪いなんてしなくても生きていくことができそうだ。


第二の人生をもらってウキウキな私を待っていたムイはすぐに違う部屋に私を連れて行った。


そこは屋敷の地下だった。


さっきまでの上品な造りと違い、ゴツゴツとした岩の壁で照明も少なく薄暗かった。

何よりも空気がジメジメしていてどんよりと重い気がした。


ウキウキ気分が半減してしまった。


「ここがシアさんの仕事場です。」


洞窟のような丸くえぐられた広い空間にたくさんの本棚と大きな机と椅子があった。


(仕事…場… ここで働くの?)


「私の仕事とはなんでしょうか?」


恐る恐る聞いてみる。


ムイはニコリと笑い言った。


「シアさんのお仕事は旦那様の邪魔者を呪うことですよ。」



(邪魔者を呪う???)



────


こうして私の異世界悪役生活は始まったのである。



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