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最後の仕事

私は城の会議室のような場所にいた。


国王を先頭に近衛騎士団の偉い人たちが集まっていた。

マイルも末席にいた。


「本日は先日みつけたダンジョンについてみなの意見を聞きたいと思っている。」

国王はそう言うとマイルに目配せをした。

マイルは立ち上がり昨日のことを報告した。

「早急に対処せねばなりません。」と強い口調で結んだ。


「まずはその穴をどうにかしないといけませんね。」

集まった人たちは様々な意見を出した。

最終的には

・安全面

・ダンジョンの有用性のさらなる調査

の2点に絞られた。


「では早急に入口の整備を進めます。」

マイルが担当するようだった。


国王は「シア殿、マイルを手伝っていただけませんか?」と頼んできた。

私は「承知しました。」と言って受けた。

(ネイチェル怒りそうだな)


────


私がネイチェルに報告するとやはり怒り出した。

「お父様ったらシアをなんだと思っているのよ!」

ネイチェルは私の手を握り、「早く片付けて帰ってきてちょうだいね。」と言った。

私は微笑んで頷いた。


すぐに私はマイルの馬で現地へ向かった。

穴は囲われていたがこれでは心もとない。


「子供がいたずらで覗いて落ちるようなことがないようにもっと囲いをしっかりとつけないといけませんね。」

マイルは頷き、大工に指示を出した。

大工たちは近くの木を切り出した。

(材料は現地調達ですか)


「ハシゴでの昇り降りでもいいと思いますが長期的に見るなら階段かスロープ状になっていると楽かもしれませんね。」

マイルは頷き、連れてきた男たちに指示を出した。

「下に降りやすいようにこっち側を掘って傾斜をつけたい」とマイルが言うと、男たちのリーダーのような男が「お前ら!ここを掘るぞ!」と言って掘り始めた。


私はこっそりスコップに向かって(よく掘れる 素晴らしいスコップ)と念じた。

作業はサクサクと進んでいく。


「中の調査が厄介ですね。」


「あの森からの帰還方法がわからないうちは立入禁止にするのがいいでしょうね。」

私がそう言うと、あの魔法陣のある壁の周辺にも囲いを作った。

マイルは『帰還不可 触るべからず』と看板を立てた。


私は洞窟内をザッと調べた。

目をつぶる私をマイルは黙って見ていた。


「この洞窟内には貴重な鉱石や植物はないようですね。魔物退治くらいしか有用性はないと思います。」と報告した。

「資源があるとしたらあの森ってことですね。」

私は頷いた。


「転移の魔法陣を描ける魔法使いはこの国にいますか?」

私はマイルに聞いてみた。

マイルは首を傾げて「そんな高度な魔法を使える人いたかな?」と言っていた。


「あの森はかなり広いし、強い魔物もいるようです。帰還アイテムを持って入ったとしても油断すると帰れなくなるかもしれません。」

私が言うとマイルは頷いた。


「少し私が調査してきてもいいですか?」

「シア殿が一人で?!」

私は「一人の方が動きやすいので…」と申し訳なく言った。

マイルは笑い、私に帰還アイテムをくれた。

「危ないと思ったらすぐに戻ってくださいね。」


私は魔法陣に触れた。

ぐにゃりとする感覚がして私は森へ飛ばされた。

相変わらず自然豊かな美しい森だった。


私はとりあえず遠視で何かないか探してみた。

珍しい薬草や岩場には珍しい鉱石もあった。

(うまく活用できたら人間のためになるかもしれない)


数km先に洞窟の入口があった。

(ここが怪しいな)

私はそこに瞬間移動した。


────


中は真っ暗で魔物もいるようだった。

私は炎魔法で照らしながら進んだ。

先には扉があった。

開けると部屋になっていて真ん中に魔法陣が描かれていた。

他には何もない。

私は魔法陣を踏んでみた。

またぐにゃりとする感覚があった。


私は商人たちを助けたあたりの洞窟に出たようだった。

(これで戻ってこれるというわけか)

私は地面に大きくバツ印をつけた。


入口の方へ戻りもう一度魔法陣に触れた。

森に戻った。

(あの魔法陣のある洞窟にみんなが行けるようにしないと)


私は洞窟前に瞬間移動した。


遠くからでもここを目指せるようにしないといけない。

大きな木を生やそうかとも思ったがここにはそんな木がたくさんある。

私が悩んでいると「花でも植えたら?」とアリが言った。

確かにこの森には花がほとんど咲いていない。

「でも遠くから見えないよね。」

私が言うと、「木に花をつけたらどうかしら?」とチュンが言った。

私は桜の木を思い出した。

「それいいね!」


私は地面に向かい(花畑になれ)と念じた。

美しい花たちが現れた。

続けて洞窟の入口の上に大きな桜の木を具現化した。

ピンク色の桜が咲いている。

私は桜の木に向かい、(この桜は枯れない 一生花をつけたまま この桜を傷つけようとするものには悪いことが起こる)と呪いをかけた。


私は少し離れた場所に移動して桜の木が見えるか確かめた。

角度によっては見えない場所もあったが、少し高い位置に来るとピンク色が見えた。


「派手だね!」アリがニコニコしながら桜を見た。

「こんな木見たことありません。」とルアンが言った。

「私の元いた世界ではよくみかけてた木だよ。」

私は桜並木を思い出してちょっとキュンとした。

荒んだ私の心にも響いた美しい風景だった。


「これでとりあえず帰り道はわかったね。」

私はマイルのところへ戻った。


森に洞窟があり、そこに戻れる魔法陣があること。

その洞窟はピンク色の花が咲く木の下にあること。

を報告した。

「そんな木があったとは気がつきませんでしたね。」

とマイルは頭を掻いていた。

(なかったけどね)


私はそして大事な話をした。


「あの森には人間にとって有益なものがたくさんありました。

しかし欲を出して必要以上に採るとすぐに資源は枯渇することになるでしょう。

ダンジョンなので生態系がこちらと同じとは限りません。

魔物も倒しすぎると生態系が変わる恐れもあります。

採れていた植物たちもとれなくなる危険もあります。

その辺を考慮してどうすべきか今一度偉い人たちと話し合ってほしいのです。

うまく活用できればここの人たちの生活はもっと豊かになるでしょう。

うまくこのダンジョンとつきあえれば、ですが。」


私が話し終えるとマイルは黙って頷いた。

「今だけではなく、未来を考えるということですね。」

マイルはぼそっと言った。


私たちは城に戻ることにした。

囲いもスロープも完璧にできていた。

男たちは早く終わった仕事に満足そうだった。

「みなさん一度城に戻ります!報酬は城でもらってください!」

みんなは片付け、城へと帰っていった。

私はまたマイルの馬に乗せてもらった。


(ネイチェルがイザトと乗った馬とはなんか違うな)

私は振り落とされそうになりながらそう思った。


────


私はネイチェルのところへ戻った。

「早かったのね!」と喜んでくれた。

「ドロドロだから今日はもういいわ、下がって。」と言われた。

確かにドロドロだった。


私は着替えを持ってお風呂へ向かった。

先客がドロドロの私を見て嫌な顔をして出ていった。

(早く屋敷に帰りたい)


部屋に戻る途中にマロウに会った。

「シアさん!帰って来たと聞いて探してました!」

私はドロドロの服を持ったまま、マロウと詰所に向かった。


マロウは帰ってきてからの家のことを話してくれた。

兄弟たちがどれほど喜んだか、両親がどれだけ心配していたか。

終始ニコニコで止めどなくよく喋った。

そして最後に、「私たち家族の恩人です。」と言った。

「私は調査団についていっただけなので。」

と言ったがマロウはニコニコしていた。

「とにかくシアさんがいてよかったです!」

マロウは私の手を握りまたブンブンと振った。

「お疲れのところ呼び止めてすみませんでした!」

私は首を横に振って、

「みんなが本当の笑顔に戻れてよかったです。」と言った。

マロウは涙ぐんでいた。

「おやすみなさい。」と言って私は部屋に戻った。


────


あの穴さえどうにかなれば行方不明になる人はいなくなるだろう。

あとはダンジョンをうまく使えるかどうかになるだろう。

甘く見ると痛い目にあう。

しかし得られるものも多い。

(私の仕事は終わった 早く帰りたいんだけど)


ネイチェルはどうするんだろう。

「大変だわ!!」

手紙を読んでいたネイチェルが叫んだ。

メイドたちは何事かとネイチェルに駆け寄った。


「大事な話があるって。今日来るって書いてるわ。これってもしかして…ねぇ、どうしましょう!」

ネイチェルは驚きと喜びでピョンピョン飛び回った。


かと思うと両手を顔にあて、

「おつきあいできませんって言われる可能性もあるわよね…そうよ、そうかもしれないわ…」

と一気に暗くなった。


「私なんかと結婚なんてしたくないわよね…」

メイドたちが慰めようとしても「あっち行って」と落ち込んでしまった。


私たちは見守るしかできなかった。

下手なことを言って期待を持たせてダメだったときが怖い。


そのまま時間は過ぎ、イザトは城にやって来た。

「イザト様が謁見の間でお待ちです。」

「お父様の前で…」


ネイチェルは悪い想像しかできないようだった。

顔色は悪く、足取りも重かった。


やっとのことで王の隣につくとイザトは大きな声で言った。


「私、イザト・エドモンドはネイチェル様をお慕いもうしております!正式におつきあいさせていただきたくお願いに参りました!私などの身分で厚かましいと思われるかもしれませんが…」

イザトが話している途中にネイチェルはイザトの前に立った。

「イザト様!私と結婚してください!」

イザトは目を丸くしてネイチェルをみつめた。

そして「はい」と答えた。


王は笑いだした。

「ネイチェルの結婚が決まったぞ!」

まわりにいた従者たちは拍手をした。

イザトはまだ信じられないという顔をしていた。


「父に報告して参ります。」と言って、イザトは帰っていった。

ネイチェルはさっきまでこの世の終わりのような顔をしていたのに今はくるくる回って喜んでいる。

(これでやっと帰れるな)


部屋に戻ったネイチェルはまだふわふわしていた。

私はここぞとばかりに、

「明日帰ろうと思います。」

と言った。

ネイチェルは固まり、「結婚式はどうするのよ。」と言った。

「私にお手伝いできることはもうないかと。」

ネイチェルは私をみつめた。

「シアにも祝ってほしいわ。」

「私が嬉しくないとでもお思いですか?」

私は微笑んだ。


「わかったわ。帰っていいわ。でも結婚式には来てね。」

ネイチェルは私の手を掴んでそう言った。

「呼んでいただけるなら飛んでまいります。」

ネイチェルは私を抱きしめて「ありがとう」と言った。


私は帰り支度を始めた。

冷蔵庫も電子レンジも小さくした。

特に荷物もないのですぐに終わった。

机の上の花をトランクに入れた。

(別れの挨拶は苦手だな)


────


翌日、ネイチェルとメイドたちにだけ挨拶をして城を去った。

(みつかると面倒だからさっさと帰ろう)

私は裏門を出てすぐの木の影から瞬間移動して屋敷に戻った。


(ネイチェル、幸せになってね)




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