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外伝③ 見た目は子供頭脳は高校生な涼也の話

「……何が起こったのか全く分からないんだけど」


「ちょっと理解が追いつかない……」


 私と里緒奈の目の前には涼也君をかなり幼くしたような姿をした子供が横たわっていた。頭が混乱してきたのでちょっと整理しよう。

 今日は昼過ぎから涼也君と一緒に模試の見直しを里緒奈の部屋でしていた。そして休憩中、結構疲れた様子だった涼也君に家の冷蔵庫に入っていた栄養ドリンクをあげたのだが、なんと飲んだ瞬間意識を失って倒れてしまったのだ。

 今回は睡眠薬など一切混ぜていなかったため私と里緒奈は激しく動揺した。とりあえず救急車を呼んだ方が良いのかなどと2人でパニックになりながら話していると、突然涼也君の体が縮み始める。

 非現実的な光景に驚きを隠せない私達だったが、涼也君が小学生低学年くらいの外見になったところで止まった。そして今に至るというわけだ。

 これからどうしようか2人で考え始めていると涼也君が意識を取り戻したらしくゆっくりと起き上がる。


「……なんか体に凄い違和感がある」


「り、涼也君大丈夫なの!?」


 私と里緒奈は涼也君に慌てて駆け寄った。すると涼也君は怪訝そうな顔をして口を開く。


「あれ、なんか部屋の中がめちゃくちゃ大きく感じるんだけど……」


「涼也、これを見て」


 里緒奈は手鏡を差し出した。それを受け取った涼也君は中を見た瞬間固まってしまう。


「えっ、これ俺か!?」


 鏡を見て自分の身に何が起こったのか、涼也君はようやく気付いたらしい。


「どうなってるんだよ……」


「それは私と里緒奈も聞きたい」


「栄養ドリンクを飲んで急に倒れたと思ったら涼也の体が縮んだ」


 里緒奈の言葉を聞いて私は栄養ドリンクが原因ではないかと思い始める。それは涼也君と里緒奈も同じだったらしい。


「……これ普通の栄養ドリンクじゃない」


「本当だ、ぱっと見栄養ドリンクにしか見えなかったから間違えて涼也君に渡しちゃったみたい」


 瓶に貼られていたラベルには英語で若返りドリンクと書かれていた。そのままラベルの説明を読んでいくと、どうやら24時間だけ10歳若返らせる効果があるとか。


「って事は今俺の体は7歳なのか、通りで周りが大きく見えるわけだ」


「でもなんでこんな若返り薬なんかが家の冷蔵庫なんかにあるんだろう?」


 私がそうつぶやいた瞬間、部屋の扉が開かれる。部屋に入ってきたのはママだった。


「2人とも冷蔵庫に入ってた栄養ドリンク知らない?」


「……なるほど、あれってママのだったんだ」


「涼也が間違って飲んだ」


 私と里緒奈の言葉を聞いたママは小学生くらいになった涼也君の存在にようやく気付いて目を丸くする。


「えっ、本物だったの!?」


 それから話を聞くとあれはママの友達が働く製薬会社が最近開発した新製品らしく、モニターを頼まれていたとの事だ。

 正直若返るなんて半信半疑だったようだが、実際に涼也君が若返った姿を見て信じる気になったらしい。


「ちょっと製薬会社の友達に電話して来る」


 ママはそう言い残すと興奮気味に部屋から出て行く。とりあえず涼也君が突然縮んでしまった原因は分かったため一安心だが、もはや模試の見直しどころでは無くなってしまった。


「今の状態を家族にどう説明しよう……」


「確かに24時間はそのままだもんね」


 そもそも涼也君の家族が縮んだ事を信じてくれるかどうかすら怪しい気がする。多分私なら信じられないと思う。


「その体だと家に帰れないと思うし、今日はうちに泊まって行ったら?」


 里緒奈は突然そんな事を提案した。涼也君は付き合っていない女の子の家に泊まるのは不健全などと話していたが、2対1には勝てずお泊まりが決定した事は言うまでもない。

 しばらく里緒奈の部屋で過ごす涼也君だったが、体が縮んだせいで色々と違和感があるらしく動きずらそうにしていた。


「そろそろお風呂にしよう」


 里緒奈の言葉を聞いてもうそんな時間になっていた事に気付く。私達が風呂場へ移動しようとしていると涼也君は動こうとしない。


「ああ、いってらっしゃい」


「何言ってるの、涼也君も一緒だよ」


「いやいや、それこそ絶対駄目だろ!?」


 涼也君は再び抵抗を始めるが、残念ながら数の力には勝てなかった。ちなみに男は皆んな狼だから危険だと言っていたが、今の体格差なら涼也君に絶対勝ち目は無いから大丈夫と伝えると黙り込んだ。

 そもそも涼也君は大きな勘違いをしている。だって狼なのは涼也君ではなく、私と里緒奈なのだから。

 風呂場に移動した私達はまず涼也君の体を洗い始める。かなり嫌がっていたが小学生の力では私達2人には勝てなかったようで最終的にはされるがままだった。


「じゃあ肩までお湯に浸かってちゃんと10秒数えてから出るんだよ」


「中身はちゃんと高校生なんだから子供扱いするなよ」


 ノリノリでそう話す私に対して涼也君はそう抗議をしてきたが、正直言って全く怖くない。それどころかむしろ可愛かった。まるで小動物に威嚇されているような気分だ。


「お姉ちゃん、凄い表情になってる。まるで獲物を狙う肉食動物みたい」


「……そういう里緒奈は鼻血出てるよ」


 私達姉妹は新たな性癖の扉を開いてしまったのかもしれない。結局私と里緒奈は涼也君が元に戻るまでその小さな体を堪能し続けた。

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夢のような展開! うらやましすぎる~
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