外伝② 一夫多妻制になって2人との新婚生活をする涼也の話
今からほんの数年前、世間を震撼させるような大事件が起きた。それは裁判官の許可を得られた場合にはなるが、一夫多妻が日本で認められた事だ。
俺も詳しい事は全く分からないが、どうやら近年深刻化する少子化対策の一環として民法が改正されたらしい。
俺が生まれる前も47都道府県を廃止して9道州を設置する廃県置州などを当時の政権が強引に推し進めたと中学や高校の公民の授業で習っていたが、恐らく今回も同じだろう。
ただ一夫多妻が認められるためには厳しい審査があるとの事で、世の中にいる多くの男性にとっては関係がない。
だから俺も無関係だと思っていたのだが、現実は違った。なんと大学を卒業するのと同時に玲緒奈と里緒奈の2人と結婚する事になったのだ。
いつの間にか俺の両親や親戚など、各所に対して徹底的に根回しされていた。その上どんな手段を使ったのか分からないが、一夫多妻の厳しい審査にもなぜか通ってしまったため結婚しないという選択肢は取れそうになかったのだ。
ちなみに玲緒奈と里緒奈曰くしばらく3人の新婚生活を楽しみたいとの事なので子供を作る予定は今のところは無い。
ただし2人から毎晩のようにエッチを求められているため我が家にあるコンドームは凄い勢いで消費されていっている。
「涼也、新婚旅行はどうする?」
「国内もいいけど海外にも行ってみたいから、正直どっちにするかめちゃくちゃ迷うよな」
「あっ、私ハワイに行きたいな」
「私は北海道がいい」
寝室にあるベッドの中で俺達はそんな事を話していた。ハワイに行きたい玲緒奈と北海道に行きたい里緒奈で完全に意見が割れてしまっている。
出会った時からそうだが、この2人は相変わらず意見が一致しない。どちらも魅力的なため両方行きたいというのが本音ではあるが時間やお金的な問題を考えるとどちら1つに決める必要があるだろう。
「……もう夜も遅いしさ、その話はまた今度にしない?」
「そうだね、涼也君と愛し合って疲れちゃったからまた今度にしよう」
「激しかったから流石に疲れた」
とりあえず新婚旅行の件は一旦先送りにして今日は眠る事にした。いくら俺が20代前半でまだまだ性欲旺盛とは言え、何度も2人の相手をした後では流石に体力的な限界があったからだ。
「じゃあ涼也君、おやすみ」
「おやすみ涼也」
俺は2人におやすみのキスをした後、ゆっくりと瞼を閉じた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「涼也君、おはよう」
土曜日の今日、目覚めると先に起きていたらしい玲緒奈からそう声をかけられた。俺はゆっくりと ベッドから起き上がる。
「おはよう玲緒奈……里緒奈は相変わらずだな」
「里緒奈は子供の頃からずっとこんな感じだからね」
俺の隣では里緒奈がすやすやと眠っていた。かなり早起きな玲緒奈とは対照的に里緒奈はめちゃくちゃ朝が弱い。
だから休みの日は中々起きてこないのだ。玲緒奈と里緒奈は一卵性の双子だというのに、その辺りは色々違っているらしい。
キッチンに移動した俺と玲緒奈は2人で朝食の準備を始める。平日は仕事があるため簡単に済ませているが、今日のような休日はしっかりと料理するようにしていた。ちなみに今日は和食なため玲緒奈と手分けして作っている。
「こうやって一緒に料理しているとまさに新婚って感じだよね」
「確かにな、それにしてもまさか2人と結婚するなんて思ってもみなかったよ」
「私と里緒奈がいなかったら涼也君は一生独身だったかもね」
玲緒奈はちょっと意地の悪そうな顔でそう茶化してきた。だがぶっちゃ玲緒奈の言う通りな気がする。
多分2人がいなければ俺は結婚どころか未だに童貞だったはずだ。そして色々と拗らせていたに違いない。
そんな事を考えていると里緒奈が目覚めたらしく、ダイニングにやってきた。まだめちゃくちゃ眠いのか目を擦っている。
「2人ともおはよう」
「里緒奈、おはよう。もうすぐ朝食の準備ができるからもう少しだけ待っててくれ」
「いつも通り後片付けはよろしくね」
俺達の言葉を聞いた里緒奈は黙って頷いた後、ゆっくりとダイニングテーブルに着席する。起きるのが一番遅い里緒奈はいつも後片付け担当なのだ。
少しして朝食が出来上がったため3人で仲良く食べ始める。さっきまでかなり眠そうだった里緒奈だが、ようやく目が覚めてきたらしい。
「涼也、今日は3人でどこか遊びに行こう」
「ああ、たまにはそういうのも大事だよな」
「ここ最近はずっとバタバタしてたもんね」
ここ数ヶ月間は結婚の手続きや引越し、入社した会社の新入社員研修などで3人ともかなり忙しかった。ここにきてようやくゆとりが出てきたというわけだ。
それから俺達は朝食を食べながら何をして遊ぶか話し始める。ここでも遠出をしたい玲緒奈と近場がいい里緒奈で意見が割れてしまったが、今日は遠出して明日近場に行くという事で話がまとまった。
とりあえず今日は横浜のみなとみらいまで車を使って行く予定だ。俺と彼女達の新婚生活のとある1日はこうして始まった。