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第40話 涼也君ならそう言ってくれると思ってたよ

 風邪を引いたあの日から数日が経過して、俺の体調はすっかり良くなっていた。玲緒奈と里緒奈からの看病に加えて、澪からも色々として貰ったため3人には本当に感謝しかない。

 だから今日はお礼をするために玲緒奈と里緒奈を誘って俺の奢りで近所のスイーツバイキングに来ている。

 ちなみに澪も誘ってはいたのだが、剣城先輩達と一緒に行くのは嫌だと言われて断られてしまった。だから澪には別の形でお礼をするつもりで考えている。


「それにしてもお礼にスイーツバイキングを選ぶって、涼也君中々いいチョイスしてるよ」


「私もお姉ちゃんも甘い物は好きだからめちゃくちゃ嬉しい」


 玲緒奈は苺のショートケーキとチョコレートアイスを、里緒奈はマンゴーシャーベットとみたらし団子を食べながら幸せそうな表情を浮かべていた。


「2人が満足してくれてるなら良かったよ」


「実はスイーツバイキングは前々から行きたいと思ってたんだよね」


「うん、涼也は結構ナイスなタイミングで誘ってくれた」


 女子は甘い物が好きだろうという超安直な理由でスイーツバイキングを選んだわけだが、どうやら正解だったらしい。

 まあ、俺自身が結構な甘党のため純粋に行ってみたかったからという理由も実はほんの少しあったりするわけだが。

 雑談をしている間も2人は片っ端から店内に置いてある色々なスイーツを食べまくっている。細い体のどこに吸い込まれていっているのか不思議なくらいだ。

 もしかしたらこの店のスイーツを全制覇してしまうのではないだろうか。そんな事を考えていると玲緒奈が口を開く。


「そう言えば涼也君ってさ、今週末の土曜日って暇?」


「……ごめん、悪いけどその日はもう既に予定があるから」


 今週の土曜日は前々から澪と一緒に夏祭りへ行く約束をしていたため、俺には珍しく既に予定がある。


「だよね、涼也君だから何の予定もない……えっ、今何て言った?」


「予定があるって聞こえたような気がするのは私の気のせい?」


 彼女達は俺の発言が信じられなかったようでそんな反応をしていた。いくらなんでも俺のことを馬鹿にし過ぎではないだろうか。


「だから今週の土曜日は予定が入ってる言ったんだよ、別に里緒奈の気のせいなんかじゃないぞ」


「えっ、涼也君に予定!?」


「ちょっと信じられない……」


「いやいや、別にそんなに驚かなくてもいいだろ。流石にぼっちの俺にだって予定くらいあるから」


 玲緒奈と里緒奈がかなり驚いた表情を浮かべた様子を見て俺は思わずそうつぶやいてしまった。すると2人は今までスイーツを食べていた手をピタリと止めてめちゃくちゃ真剣な顔になる。


「ちなみに涼也君は一体土曜日にどこで誰と何をする予定なのかな?」


「今すぐ正直に答えて」


「えっ、そこまで答えなきゃ駄目か?」


 突然の事に俺は咄嗟にそう答えてしまった。すると場の空気が一気に重くなる。玲緒奈と里緒奈の表情は特に大きくは変わってなかったが、2人とも目が据わっていてかなり怖かった。


「……ふーん、涼也君は私と里緒奈に隠し事をする気なんだ」


「まさか、涼也は私達には言えないような事をするつもり?」


 今まで感じた事が無いほと強いプレッシャーを感じ、俺は体が動かなくなってしまう。まるで蛇に睨まれた蛙のようだった。

 このままでは彼女達から捕食されるのではないかとすら思い始めた俺は、恐怖を必死に押し殺して理由を話し始める。


「こ、今週の土曜日は澪と近所の夏祭りに行く約束があるんだよ」


「へー、そうなんだ……なら私達も一緒に行くから」


 玲緒奈は俺に拒否権なんてないと言わんばかりに強い口調でそう話しかけてきた。だがそれを受け入れる事は到底できない。なぜなら澪が俺と2人きりで夏祭りに行く事を望んでいるからだ。

 それに澪は玲緒奈と里緒奈を一方的に敵視している事が今回のスイーツバイキングへの参加拒否で分かったため、一緒に夏祭りに行ってもトラブルが起きそうな予感しかしない。


「悪いがそれは無理だ。申し訳ないけど今回だけは諦めてくれないか?」


「ひょっとして涼也は私達を蔑ろにする気?」


 俺の口から出た言葉を2人が聞いた瞬間、このテーブル周辺の温度が明らかにさっきよりも下がった気がする。


「いや、そんなつもりは一切ないんだけど……」


「じゃあ私と里緒奈も一緒に行っても良いよね?」


「……あー、もう分かったよ」


 とうとうこの空気に耐えきれなくなってしまった俺は彼女達の同行を認めた。間違いなく澪がブチギレそうだがこうするしか俺が助かる道はなかったのだ。こんなにも弱いお兄ちゃんを許して欲しい。


「涼也君ならそう言ってくれると思ってたよ」


「やっぱり涼也が私達を裏切るはずがない」


 さっきまでとは打って変わって2人はかなり上機嫌になっていた。それに対して俺が激しく憂鬱な気分になっていた事は言うまでもない。

 澪にどう説明するかを考えただけでかなり胃が痛いため、正直家には帰りたくなかった。帰り道で異世界召喚でもされないかな。

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