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第34話 ひょっとしてまさか涼也君、誰かとキスした事あるんじゃ……

 ジェットコースターを終えた俺達はその後も色々なアトラクションに3人で乗り続け、気付けば夕方となっていた。


「帰る時間を考えるとそろそろ最後のアトラクションだよね」


「……時間経つのが早い」


「じゃあ約束通り観覧車へ行こうか」


 最後のアトラクションは観覧車にしようと来る前から決めていたので、俺達は乗り場へと向かい始める。

 しばらく歩き続けて観覧車の前に到着した俺達だったが、結構人が並んでいる姿が目に入ってくる。


「やっぱり人が多いな」


「でも15分待ちくらいだし、ジェットコースターと比べたらめちゃくちゃ早いよ」


「15分ならすぐ」


 ジェットコースターよりも観覧車の方が圧倒的に回転率が良いため待ち時間が短いのだろう。そして3人で雑談をして待っているうちにあっという間に15分が経過した。

 ついに俺達の番となり、係員の指示に従ってゴンドラに乗り込むと、そのままゆっくりと上に上がり始める。


「涼也君、里緒奈見て見て。あれって一番最初に乗ったバイキングじゃない?」


「本当だ。あっちにはジェットコースターとかコーヒーカップ、ボートの池も見えるな」


「上から見るとまた違った感じに見える」


 外を眺めていると色々なアトラクションが目に入ってきて、俺達3人はしばらく観覧車から外の様子を見て盛り上がっていた。

 そんな中、外を見ていた玲緒奈と里緒奈が突然顔を真っ赤にして黙り込んでしまう。

 2人が一体何を見たのかと思い後ろを振り返ると、なんと隣のゴンドラで抱き合ってキスをするカップルの姿が目に飛び込んできたのだ。


「おいおい、俺達からは丸見えなのにあいつら気付かないのかよ」


 呆れたような表情でそう話すと、2人は相変わらず顔を真っ赤にしたまま口を開く。


「……涼也、なんでそんなに落ち着いてるの?」


「そうだよ、いくらなんでも冷静すぎるよ」


「いや、だってただのキスだし……」


 普段からかなり過激なエロ動画を見て抜いている俺からすれば、ただのキスを見たくらいでは何とも思わない。すると彼女達は俺に対してとんでもない事を言い始める。


「ひょっとしてまさかとは思うけど涼也君、誰かとキスした事あるんじゃ……」


「涼也、本当なの? 今すぐ正直に答えて、嘘や隠し事は許さない」


「おいおい、どうしてそうなる」


 玲緒奈と里緒奈はそんな事を話しながら俺の座っている席に激しく詰め寄ってきた。ちょうどそんな時、強風が吹いて俺達の乗っていたゴンドラが激しく揺れる。

 俺に対して前のめりに顔を近付けていた玲緒奈はその衝撃でバランスを崩してしまう。そしてそのまま玲緒奈は俺の方へと倒れ込み、唇と唇が重なってしまった。

 

「っ!?」


 言葉にならない叫びを上げた玲緒奈は、顔を真っ赤にしたまま慌てて俺から離れる。


「り、涼也君とキスしちゃった……」


「ご、ごめん」


 なんと俺のファーストキスは不慮の事故だったとはいえ、玲緒奈に奪われてしまったのだ。


「……お姉ちゃんだけずるい。私も涼也とキスしたかった」


 里緒奈が何かつぶやいていたが、声が小さすぎてよく聞こえなかった。結局観覧車が下に到着するまで気まずい空気が流れていた事は言うまでもない。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「楽しかったわね」


「ああ、でも流石に遊び疲れたよ」


「もうクタクタ」


 観覧車を降りた後、色々とお土産を買った俺達は倉敷ミラノ公園を出て東京へと帰り始めていた。今は新幹線の中で駅弁を食べながら昨日と今日撮った写真を3人で見返している。

 窓の外は暗いため景色を楽しむ事は出来そうになかった。まあ、その辺は昨日の朝しっかりと堪能していたため特に問題はない。


「そう言えば涼也は夏休みの宿題ちゃんと進めてる?」


「……いや、実はまだあんまり手をつけてないんだよな」


 里緒奈の言葉を聞いて嫌な現実を突き付けられた。夏休みの宿題は昔から後回しにしがちであり、後半になってから慌てるタイプなので、今年もそうなりそうな気しかしない。


「ならさ、私達と一緒にやらない? もし涼也君の分からないところがあっても私と里緒奈がいれば教えられるしさ」


「えっ、いいのか?」


 玲緒奈からの提案は正直めちゃくちゃ助かる。毎年分からない問題のせいでかなりの時間を費やしていたため、教えてくれるなら圧倒的な時間の短縮になるのだ。


「勿論だよ、場所は私達の家で別にいいよね?」


「ああ、それで大丈夫」


「じゃあ早速明日集まってやろう、どうせ涼也には何も予定なんて無いと思うし」


「……おいおい、俺の事を何だと思ってるんだよ。まあ、その通りで予定なんて何も無いけどさ」


 里緒奈はさらっと俺に向かって毒を吐いてきた。観覧車の一件があってから俺に対する当たりがいつもより強い気がする。

 まあ、大好きな姉である玲緒奈と俺なんかがキスをした事に対して里緒奈は怒っているのかもしれない。実は里緒奈が嫉妬して当たりが強くなっていたわけだが、それを知る事になるのはかなり先の話だ。

 こうして俺達のオープンキャンパス兼倉敷旅行は幕を閉じた。

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また、次話から数話外伝を挟んで夏休み編の後半に入ります!

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