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第28話 まさか涼也、私とお姉ちゃんに嘘をついてた……?

「やっぱり玲緒奈と里緒奈はどこ行ってもモテモテだな……」


「昔からこんな感じだったから私も里緒奈も慣れちゃった」


「うん、いつもの事」


 俺達は学食で昼食を食べながらそんな話をしている。大学に到着した後俺達は学校紹介とキャンパスツアー、個別相談に参加したわけだが、とにかく2人の人気が凄かった。

 キャンパスツアーや個別相談の時に周りからめちゃくちゃ男性から話しかけられたのだ。話しかけてきたのは俺達と同じくオープンキャンパスに参加していた高校生であったり、ツアーガイドや相談員の大学生だったりと様々だった。


「それにしても初対面の相手に対して連絡先の交換をしたいなんてよく言えるよな、ちょっと俺には真似できそうにないわ」


「だよね、毎回理由をつけて断るのが大変だから勘弁して欲しいよ」


「私もお姉ちゃんも結構困ってる」


 今日だけで彼女達は片手で数えられないくらい連絡先の交換を求められたのだ。しかも連れの俺が一緒にいてもお構い無しだった。

 まあオープンキャンパスに参加している女子の中で玲緒奈と里緒奈は飛び抜けて美人だったため仕方がない気もするが。


「あーあ、もっと身長が高くて超絶イケメンだったら俺も女の子から連絡先交換して欲しいとかって言われたのかな」


 2人があまりにモテ過ぎていて羨ましくなってしまった俺はついそうつぶやいた。身長180cmくらいあって超絶イケメンなら女の子の1人や2人と連絡先を交換するくらい余裕なはずだ。すると彼女達の顔からすっと表情が消える。


「もしかして涼也は女の子と連絡先を交換したいの?」


「連絡先なんか交換して一体涼也君は何をするつもりなのかな?」


 玲緒奈と里緒奈の言葉遣いはいつも通りだったが、謎のプレッシャーがあって正直めちゃくちゃ怖い。


「……いやいや、今のはちょっとした冗談だからな。別に交換なんかしても特に話すことなんてないしさ」


「そう、なら良かった」


「涼也君は今のままで良いと思う、これからもずっと」


 慌ててそう話すと2人の体から出ていた冷たいオーラがぴたりと止まった。そこで俺はすかさず話題を変える。


「そう言えばこの後は模擬授業だよな。俺は経済学部で2人は外国語学部の授業になるから一旦別行動になるけど、終わった後の合流はどうする?」


「学校紹介を聞いたホールの前とかでいいんじゃない? あそこなら分かりやすいと思うし」


 玲緒奈の提案に俺も里緒奈も特に異論は無かったため模擬授業が終わった後はホール前で合流する事になった。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「おい、玲緒奈大丈夫か!?」


 経済学部の模擬授業が終わった後、ホール前で2人と合流したわけだが、そこでちょっとしたハプニングが起こってしまった。なんと3人で歩いている最中に玲緒奈が右足に履いていたヒールが折れてしまったのだ。


「足は大丈夫だけど、ヒールが折れたままだと歩けそうにないかな……」


「この近くにコンビニがあるっぽいから応急処置用の瞬間接着剤を買ってくる。里緒奈は玲緒奈のそばにいてくれ」


「分かった」


 そう言い残した後、俺はキャンパスマップを見ながらコンビニへと向かう。そして瞬間接着剤を購入すると彼女達のもとへと戻った。


「お待たせ、買ってきたぞ」


「涼也君、ありがとう」


「ついでにヒールも俺が直してやるよ」


 俺は玲緒奈が脱いだヒールを手に取ると、折れた部分を瞬間接着剤でくっつけて修理し始める。すると俺の様子を見ていた里緒奈が口を開く。


「……涼也、ヒール直すの結構手慣れた感じがする。もしかして経験者?」


「ああ、ヒールは昔から時々直してたからな」


 そんな俺のつぶやきを聞いた瞬間、玲緒奈と里緒奈の顔から先程と同じように表情が消える。


「……彼女いた事もない涼也君がどうしてヒールなんか直した事あるの?」


「まさか涼也、私とお姉ちゃんに嘘をついてた……?」


「み、澪の……妹のヒールを直してただけだからな」


 2人のあまりの迫力にちょっと怖気付きながらもそう答えた。実際に澪は昔からヒールをよく履いていて折れることも度々あったので、そこで修理方法などを覚えたのだ。


「……なんだ、そう言う事だったんだ。あんまり驚かさないでよね」


「うん、ちょっとびっくりした」


 俺の言葉を聞いてとりあえずは納得してくれたらしい。今日は玲緒奈と里緒奈の地雷を何度か踏んでしまったため、自分の発言には注意をしようと心に決めた。


「よし、これで直った。ただあくまで応急処置だから俺としては新しい靴を買った方がいいとは思うかな」


「そうだね、倉敷美観地区の観光に行く前にどこかで靴を買おう」


「駅前にデパートがあったから、あそこなら買えるはず」


 里緒奈の言う通り倉敷駅前のデパートなら問題なく手に入るだろう。品揃えも豊富なため玲緒奈の満足する靴がきっとあるに違いない。


「じゃあこの後はとりあえずバスで倉敷駅に戻ってからデパートへ行こう」


「オッケー」


「了解」


 こうして俺達のオープンキャンパスは終わりを迎えた。

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