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第26話 すみません、アイスコーヒー2つ……それからカップル限定特大パフェを1つ

 フェイズワンで遊んだ数日後、俺は玲緒奈に誘われて学校近くにあるショッピングモールに来ていた。待ち合わせ場所に到着すると玲緒奈が手を振ってくる。だが里緒奈の姿はどこにもなかった。


「……あれ、玲緒奈だけなんだな珍しい」


「うん、里緒奈は今日用事があるみたいだから」


「なるほどな」


 いつも一緒に行動しているイメージがあったためちょっと意外だ。まあ、たまにはそういう日もあるのだろう。


「じゃあ、早速ショッピングしよう。今日は涼也君に一日中付き合って貰うから」


「オッケー、任せろ」


 俺達は2人並んでショッピングモール内を歩き始める。学校近くにある事から帰りによく寄り道もしていたため頻繁に来る場所だが、今日は玲緒奈と2人きりなためなんだか別の場所のように思えた。

 それから色々買い物をしながら歩いていると玲緒奈が何かを見つけたようで立ち止まって話しかけてくる。


「涼也君見て、猫カフェだって」


「へー、こんなところに猫カフェなんてあったんだ」


「私猫大好きなんだよね、ちょっと入ってみない?」


 玲緒奈からそう誘われた俺は特に断る理由も無かったため一緒に中へ入る事にした。

 入り口で受付を済ませ、ドリンクを注文して猫カフェの利用に関する注意事項を聞いた俺達は、早速猫達のいるエリアへと入っていく。


「猫ちゃんだ、やっぱり可愛いな」


「猫カフェって来るのは初めてだけど、中はこんな風になってるんだな」


 玲緒奈が猫をもふっているのを見つつ、俺は物珍しそうに辺りをキョロキョロと見渡している。


「ちなみに猫ちゃんに近づく時は姿勢を低くした方がいいよ、姿勢が高いと威圧感とか恐怖感を与えちゃうから」


「そうなんだ、全然知らなかった」


 玲緒奈からそう教えてもらった俺は姿勢を低くくして近くにいた猫に近づいていき、ゆっくりと体を撫でる。


「ふわふわで柔らかいな」


「でしょでしょ、撫でてるだけで幸せな気分になるよね」


 しばらく猫を撫でていた俺だったが、おやつの入ったガチャガチャが店内に設置されている事に気付く。


「おやつをあげる事もできるのか」


「そうみたいだね」


「せっかくだし、やってみよう」


 俺はガチャガチャにお金を入れておやつを購入した。そしてカプセルの中からおやつを取り出したわけだが、なんと匂いに釣られたのかたくさんの猫達の元へ大挙して集まってきたのだ。


「めっちゃ寄ってきたんだけど!?」


「やっぱりこうなるよね」


 その光景に驚いている俺に対して玲緒奈は冷静だった。多分猫カフェに何度も来たことがあるらしい玲緒奈は初めからこうなる事が分かっていたのだろう。


「猫達がおやつに釣られてきたって分かってても、こんなに擦り寄ってこられたら嬉しい気持ちになるな」


「ちょっと複雑だけど可愛いから許せちゃう」


 おやつが全て無くなると猫達は興味を失ったかのように俺達から離れていった。それからしばらく猫と戯れる俺達だったがいつの間にか結構時間が過ぎている事に気づく。


「……そろそろショッピングに戻ろうか」


「私も十分満足したし、そうしよう」


 俺と玲緒奈はゆっくりと立ち上がると出口に向かって歩き始める。


「猫ちゃん、またね」


 それから俺達はレジで会計を済ませると、ショッピングの続きを始める。こうして俺の猫カフェデビューは終わった。





◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





 玲緒奈と猫カフェに行った翌日、里緒奈から一緒に行きたい場所があると朝から家に呼び出されていた。


「今日は里緒奈だけなんだな」


「お姉ちゃんは友達と遊びに行った」


 そう言えば昨日ショッピングしていた時に明日は友達と遊ぶと言っていたような気がする。そんな事を思っていると里緒奈が口を開く。


「じゃあ早速行こう」


「ちなみに今日はどこに行くんだ? まだ何も聞かされてないんだけど」


「それは着いてからのお楽しみ」


 どうやら里緒奈はどこへ行くか俺に教える気は一切無いようだ。果たしてどこに連れて行かれるだろうかと思いながら里緒奈と一緒に道を歩く。

 そして気づけば学校の近くまで来ていた。ひょっとしてまさか日曜日なのに学校へ行く気なんだろうか。そんな事を考えていると里緒奈はとある店の前で立ち止まる。


「涼也、目的地に着いた」


「……なんだ、ここに行きたかったのか」


 そこは登下校でいつも前を通りかかっているお洒落なカフェだった。わざわざ秘密にするくらいだからどんな場所に連れて行かれるのかドキドキしていたため、ちょっと拍子抜けだ。

 それから店内に入り席へと案内されるわけだが、周りはカップルらしき男女で溢れかえっていた。そのため凄まじい場違い感がある。


「……なんか落ち着かないな」


「気にしたら負け、それより涼也は何を注文するか決まった?」


「俺はアイスコーヒーでいいよ」


 俺がそう答えると里緒奈は既に注文が決まっていたらしく机の上に設置されていた呼び出しベルを押す。


「すみません、アイスコーヒー2つ……それからカップル限定特大パフェを1つ」


 カップル限定という言葉を聞いた俺が驚いたような顔をしていると、里緒奈はまるでいたずらが成功した子供のような表情になった。


「ち、ちょっと。カップル限定ってどういう事だよ!?」


「実は前々から食べてみたかった、ちなみに男女ペアじゃないと食べられないから涼也と来た」


 なるほど、里緒奈は初めからこれが目的だったらしい。目的地を頑なに教えてくれなかったのは多分俺に計画が悟られるのを避けるためだろう。


「……完全に嵌められた」


「結構大きいみたいだから涼也も一緒に食べよう」


 里緒奈は俺の呆れた表情なんてどこ吹く風だ。それからしばらくしてテーブルに運ばれてきた巨大なパフェを見て俺は絶句する。


「いやいや、想像より3倍くらい大きいんだけど……」


「これはかなり食べ応えありそう」


 驚く俺に対して里緒奈はキラキラと目を輝かせていた。恐らくよっぽど食べたかったのだろう。


「じゃあいただきます」


「……ああ、いただきます」


 俺と里緒奈は一緒にパフェを食べ始めたが、完食までにかなりの時間がかかった事は言うまでもない。

 ちなみに後日この話をうっかり口が滑って玲緒奈にしてしまいもう1度食べる羽目になったのだが、運悪く里緒奈と一緒に行った時と同じ店員に対応をされ、その際にゴミを見るような視線を向けられて悲しくなった事はここだけの話だ。

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