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第24話 ちょ、ちょっと急に何を言い出すの!?

「カラオケ行く前にさ、せっかくだから3人でプリクラ撮ろうよ」


「賛成」


「……分かった」


 プリクラを撮る事には正直抵抗のある俺だったが玲緒奈と里緒奈は既に撮る気満々であり、今更嫌とは言え無さそうな空気になっていたため大人しく従うことにした。

 俺は2人と一緒にプリクラ機の中へ入るわけだが、今まで一度もプリクラを撮った事が無かったので何をどうすればいいか全く分からない。心配そうな表情を浮かべていると彼女達が話しかけてくる。


「操作とかは全部私がやるから心配しないで」


「お姉ちゃんは慣れてる」


 玲緒奈は手慣れた様子で機械を操作し始め、あっという間に撮影画面まで進んだ。

 そしてすぐに撮影のカウントダウンが始まったので何か適当なポーズを取ろうとしていると突然左右から玲緒奈と里緒奈に抱きつかれる。


「ちょっ!?」


 突然の事に驚く俺だったが、その瞬間カウントがゼロになりシャッター音が鳴り響いた。そのまま5回ほど撮られたところで撮影が終了し、画面に撮った画像の一覧が表示される。


「涼也君凄い顔になってるね」


「かなりレアな表情」


「急に抱きつかれたら誰でもこんな顔になるだろ」


 俺は抗議するような視線を送るが、2人はどこ吹く風といった感じで画面を操作して目を大きくしたりタッチペンを使って落書きしたりしていた。


「おいおい、そんなに目を大きくする必要あるか? まるで宇宙人みたいになってるんだけど」


「えっ、でもこれがプリクラの醍醐味だよ?」


「そう、皆んなやってる」


 人生初めてだったから全然知らなかったが、どうやら女子の間ではこれが普通らしい。


「玲緒奈も里緒奈もめちゃくちゃ美人だから別に自然なままでも可愛いと思うけどな……」


「ちょ、ちょっと急に何を言い出すの!?」


「……いきなりそんな不意打ちは卑怯」


 思った事をボソッと小声でつぶやく俺だったが、彼女達には丸聞こえだったようで顔を真っ赤に染めてしまった。

 ゲームセンターの騒音などで俺の声はかき消されると思っていたのだが、そうはいかなかったらしい。


「涼也君がそこまで言うなら目とかはそのままでいいかな」


「……今回は落書きだけで我慢する」


 そう言い終わると玲緒奈と里緒奈は相変わらず顔を真っ赤にしたまま黙って落書きを再開した。しばらく落書きしてからプリクラ機を出た俺達はカラオケの受付へと向かい始める。


「時間はどうする?」


「とりあえず2時間くらいでいいんじゃないか? 歌い足りなかったら延長も出来ると思うし」


「涼也に賛成」


 それから受付で手続きを済ませた俺達は早速ルームへと入室する。中は割と狭かったため2人とかなり密着して座る事になりそうだ。


「今日は何歌おうかな」


「私はもう決まった」


 玲緒奈がタブレットで曲を探し始める様子を見て、俺も何を歌おうか考え始める。

 何気に家族以外とカラオケに来るのは今回が初めてなので、こういう時に何を歌えばウケが良いのか分からない。

 本当はアニソンなど、趣味全開の曲を歌いたかったが、それは避けた方が無難な気がする。彼女達が知らない曲を歌っても反応に困るだろうし。

 俺がそんな事を考えているうちに玲緒奈が歌う曲を決めたようでマイクを持ってシートから立ち上がる。

 マイクを握りしめて立つ玲緒奈の姿はめちゃくちゃ様になっていたが、すぐに残念な気持ちにさせられてしまう。


「おいおい、マジか……」


 玲緒奈が歌い始めたのは今流行りのラブソングだったのだが、はっきり言ってかなり下手だったのだ。

 音程が全然掴めていなかったり、リズム感が全く無いなど色々と致命的だった。何でも得意そうなイメージのあった玲緒奈の意外な一面を知ってしまった気がする。


「お姉ちゃんは子供の頃からこんな感じだから」


「……なるほど」


 里緒奈曰くどうやら玲緒奈が音痴なのは昔からのようだ。そんな玲緒奈の歌声をBGMにしながらタブレットで歌う曲を探し始める。

 そして予約を終えたタイミングで玲緒奈が歌い終わったわけだが、彼女はかなりスッキリしたような表情になっている。


「やっぱりカラオケは楽しいね」


「あ、ああ」


 流石に歌が下手だったという感想を面と向かって言う事はできないため、適当に相槌を打っておいた。


「じゃあ今度は私の番」


 マイクを手に取った里緒奈だったが玲緒奈とは違って座ったまま歌うつもりらしい。さっきの玲緒奈の件があったため身構える俺だったが、その期待は大きく裏切られる。

 最近流行っているドラマの主題歌を歌い始める里緒奈だったが、なんと想像を遥かに超えるレベルで歌が上手かったのだ。


「……いやいや、いくら何でもこれは上手すぎるだろ」


 思わず言葉を失ってしまうレベルであり、いつまでも聞いていたい気分だった。 里緒奈の歌声を作業BGMにしたいと思うほどだ。


「里緒奈、歌うのめちゃくちゃ上手いでしょ。本当凄いよね」


「これは歌手になれるレベル」


 俺はそう正直な感想をつぶやいた。そのくらい里緒奈の歌声に俺は魅了されてしまったと言える。だから里緒奈が歌い終わって名残惜しい気持ちにさせられた事は言うまでもない。

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