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第20話 それって一体どういう意味だ……?

 教科書を隠された日から数日が経過したわけだが、予想していた通り倉本からの嫌がらせは今も続いている。

 配布されたプリントを俺に回してこなかったりするなどの比較的軽い嫌がらせから、ロッカーの鍵穴に瞬間接着剤を流し込まれるなどの悪質な嫌がらせまで様々だ。

 だが倉本から嫌がらせを受けるたびに玲緒奈と里緒奈が色々と助けてくれたため問題は全く無かった。

 倉本も自分の嫌がらせがきっかけで俺と2人の絆をさらに深める事になってしまうとは思ってなかったに違いない。


「もはやここまでくるとわざとやってるとしか思えないんだけど」


 倉本が俺と玲緒奈、里緒奈の距離を縮ませる手助けをしてくれているのではないかと思い始めるレベルだった。もしかして実は倉本ってめちゃくちゃ良い奴なのではないだろうか。

 そんな事を思いつつ、俺は更衣室で制服から体操服に着替え始める。これから体育の授業でサッカーをするわけだが、ぼっちの俺には練習のペアを組んでくれる相手がいないため正直憂鬱だ。


「……まあどうせいつもみたいに余った奴同士でペアを組む事になるだろうし、多分どうにかなるだろ」


 それから着替え終わった俺はグラウンドへと向かい、チャイムが鳴るのを待つ。しばらくして授業が始まり、全員で準備体操をした後体育教師から2人組を作れというぼっち泣かせの指示が出される。

 ペアを組めたら座っていく方式になっているため、俺のようなぼっちはいつも最後まで立ったままだ。

 だからいつも通りになると思いきや、今回はそうならなかった。なぜなら俺とペアを組みたいという奴が現れたからだ。


「八神、俺とペアな。分かってるとは思うけど当然お前に拒否権は無いから」


 ニヤニヤとした表情でそう声をかけてきたのは倉本だった。絶対何か企んでいるに決まっているが、残念ながら拒否する事はできそうにない。


「……ああ」


 それから教師の指示でボールのパス練習をやり始めたわけだが、倉本はいきなり嫌がらせを仕掛けてくる。


「ごめんごめん、ちょっとボールのコントロールをミスったわ」


「……いやいや、絶対わざとだろ」


 なんと倉本はわざとめちゃくちゃな方向にボール蹴って俺をひたすら走らせたり、逆に顔を狙ってきたりしてきたのだ。

 しかも周りから見たら偶然にしか見えないように狡猾に立ち振る舞っていたため本当にたちが悪かった。

 まあどうせペアで練習するのは最初だけで、すぐにチームを組んで試合をする事になるので少しの辛抱だ。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇





「痛っ!?」


 ペアでの練習を終えて試合が始まってから少し経った頃、相手チームにいた倉本から思いっきりタックルをされて地面に転んでしまい膝を擦りむいてしまった。


「八神ごめんな、わざとじゃないから許してくれ」


 倉本は一応口では謝罪していたが、全くと言っていいほど気持ちがこもっておらず、むしろ俺を嘲笑っているようにすら見えたため絶対にわざとに違いない。

 試合は一時中断となり俺は教師から保健室へ行くよう命じられた。すると倉本が保健室まで付き添うなどと言い始めたのだ。当然拒否する俺だったが強引に押し切られてしまった。

 それから俺達は保険室に向かって歩き始めるわけだが、教師の目が届かなくなった途端倉本は俺に対して悪態をつく。


「玲緒奈さんと里緒奈さんから助けてもらって調子に乗ってるみたいだけど、お前にこんな幸せがいつまでも続くと思うな」


 俺に対して一方的に好き放題言い放った後、倉本は明らかに保険室ではない方向に向かって歩き始める。


「……おい、どこに行こうとしてるんだよ。保健室はそっちじゃないぞ」


「まさか本当に保健室までお前の付き添いを俺がするとでも思ってたのか? そんな訳ないだろ、勝手に1人で行ってろよ」


 倉本は俺を残してそのままどこかへ歩き去ってしまった。あいつは今が授業中という事を忘れてしまっているのだろうか。

 そんな事を考えつつも擦りむいた膝が痛かったため俺はそのまま保健室に向かい、中にいた養護教諭から手当を受ける。

 そして再びグラウンドに戻った頃には授業の残り時間は5分となっていてクラスメイト達は片付けをしていた。

 どうやら手当を受けていた間に結構時間が経っていたらしい。適当に片付けに参加しているうちに授業の終了を知らせるチャイムが鳴った。

 未だに膝が痛かったためゆっくりと歩いて更衣室に向かっていると、めちゃくちゃ嬉しそうな表情の倉本から話しかけられる。


「お前の高校生活はこれで終わりだから」


「それって一体どういう意味だ……?」


「どうせ後少しすれば分かる。せいぜい最後の学校を楽しめよ」


 倉本はそう言い残すと上機嫌な態度で俺の前から走り去る。あいつが何を言っているのか全く意味が分からなかったが、とにかく物凄く嫌な予感がした。

 もしかして俺に付き添うふりをしてどこかに行っていた事が関係しているのだろうか。何事もなければ良いが、倉本がわざわざあんな言葉を俺に言ったくらいだから絶対に何かあるはずだ。

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[気になる点] 物語序盤で「監視アプリ」なるものをダウンロードさせた描写があるにも関わらず主人公が悪質な嫌がらせを受けてるのは把握してる筈なのに双子が放置してるのがモヤモヤしました。 ギリギリまで追い…
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