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第15話 涼也君、別に遠慮しなくてもいいんだよ

「今日は朝から色々あり過ぎてマジで疲れた……」


 俺は風呂場で湯船に浸かりながら一日の出来事を思い出してそうつぶやいた。

 朝から玲緒奈と里緒奈に家へと押しかけられたり、倉本に絡まれたり、夜になってまたまた2人が家に押しかけてきたりと、本当に色々な事があったと言える。

 ちなみに風呂に入るまでの間も色々とあって大変だった。とりあえず夕食に出前でピザを頼んだ後、彼女達を俺の部屋に案内してから勉強の続きをしていたわけだが、俺がピザを受け取るため部屋を離れた一瞬の隙に事件が起こったのだ。


「……ちゃんと見つからないように隠してたはずなのにな」


 配達員からピザを受け取って部屋に戻ると、ベッドの下に隠していたオナホールとローション、コンドームが机の上に置かれていた。

 それを見た瞬間、さっと血の気が引いた事は言うまでもない。俺の姿を見た玲緒奈と里緒奈は不機嫌そうな表情を浮かべて詰め寄ってきた。

 そして2人はそれらを何の目的でどうやって使っていたのかを細かく追求してきたため、俺の口から具体的に語る羽目になったのだ。

 特にコンドームを何故持っているのかについてはしつこいくらい聞かれ、本当にオナニー以外で使っていないか何度も確認された。


「童貞の俺には他に使い道が無いって言ったらやっと納得してくれたけど、同級生の女子に自分の下半身事情を話すってどんな羞恥プレイだよ……」


 多分生まれてから今までの中で一番恥ずかしかったかもしれない。

 当然勉強会を続けられるような空気では無くなったため一旦ピザを食べて落ち着く事にしたわけだが、さっきの事があったせいで気まずい空気が流れていた。

 だから俺は大急ぎで自分の分を食べ終え、そのまま逃げるように風呂場までやってきたというわけだ。

 それにしても例の事件に巻き込まれて入院する前からは考えられなかったような事ばかり起きている気がする。まるでラブコメライトノベルの主人公になったような気分だ。


「……もし俺が主人公のライトノベルがあったとしたらどんなタイトルになるんだろう?」


 何気なく思った事だが真面目に考え始める。ラノベなら玲緒奈と里緒奈を助けた事をきっかけに物語が始まりそうな気がするため、その辺はタイトルに入れていいかもしれない。


「何の取り柄もない平凡な俺が美人双子姉妹を命懸けで助けた結果、2人とめちゃくちゃ仲良くなった件……とかかな?」


 最近流行りの長文タイトルで考えてみたが、割とそれっぽい気がする。だがあまりしっくりこなかった。

 なぜかよく分からないが大切な何かが抜けてしまっている気がするのだ。一体何が抜けているのかを考え始める俺だったが、突然脱衣所の方から物音がしたため思考を中断させる。


「ひょっとして誰か脱衣所に来たのか……?」


 玲緒奈か里緒奈のどちらかに違いないが、一体脱衣所に何の用があるのだろうか。そんな事を思っていると勢いよく扉が開かれ赤と青のビキニを着た2人が浴室へと入ってくる。

 一瞬何が起こったか理解できない俺だったが、とんでもない状況になっている事に気付き慌てて目を閉じ前を隠す。


「お、おい。一体何のつもりだよ」


「さっきは色々と申し訳ない事をしちゃったからお詫びに涼也君の背中を流してあげようと思ってさ」


「私達に任せて」


 どうやら勝手に俺の部屋の中を物色した事については一応悪いと思っているようだ。だが今浴槽から立ち上がる事は絶対にできない。

 なぜなら下半身が激しく勃起してしまっているからだ。はっきり言ってこの状況で勃起するなという方が到底無理な話だろう。


「いやいや、それは別に間に合ってるから」


「涼也君、別に遠慮しなくてもいいんだよ」


「綺麗に洗ってあげるから」


 そんな事を言われたとしても無理なものは無理だ。しばらく攻防を繰り広げる俺達だったが、とうとう痺れを切らしてしまったのか2人は強硬手段に出る。

 なんと彼女達はあろう事か俺の腕を掴んで引っ張ってきたのだ。目を閉じている中、突然腕を引っ張られた事に驚いた俺は思わずその場に立ち上がってしまう。


「……えっ?」


「嘘っ……」


 しまったと思った時にはもう既に時遅く、玲緒奈と里緒奈の驚いたような声を聞いて俺は全てが終わってしまった事を悟る。

 迂闊に立ち上がったせいで2人に俺の勃起した下半身を見られてしまったのだ。彼女達は年齢的に男が勃起している事の意味を知っているはずなので、自分達が性欲の対象になっていると気付いたに違いない。

 これは完全に嫌われてしまった。そう思う俺だったが、玲緒奈と里緒奈は平然としていた。むしろどこか嬉しそうにすら見える。


「やっと立ち上がってくれたね。じゃあ背中を流すからこっちに来て」


「ここに座って」


「……ああ」


 ひょっとしてこれは夢なのではないかと考え始めた俺は、もうどうなっても構わないと思い大人しく2人に従う事にした。

 ちなみにこれが夢では無く紛れもない現実であると俺が認識するのはもう少しだけ後の話だ。


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