(「」仕草や反応「」)
真意を探られるのを避けるように先輩は携帯をしまって視線を逸らした。見つめていると顔も背けられて、首から顎へのラインで唇が隠される。
その首筋をなぞりたくなり、誤魔化すように動かしていた指先が捕まれた。顔を背けたままの先輩からはいつものように言葉がこぼれる。
「実際問題として蛇が発見されたことが問題として大きい。無害無毒な蛇だと説明しても歪んだ悪評は容易には解毒できない上に何度でも毒にかかるのだから毒蛇より質が悪い。そんな不安がおもしろおかしく風聞になってしまい、居もしない学内で飼育された蛇なんてものが生まれている。
いやいないよな? もし知っていたなら教えてほしい。できる限り近寄らないように注意する。知っているのにあえて連れて行くなんてしたら」
痛みを感じて手に視線を落とせば、捕まれた手に爪痕がついていた。
「多少の苦痛は甘受してもらおう。私が話していると寝そうな顔になるキミの頬を思い切りつねってやりたいというくらいの嗜虐心は私にだってあるんだ。
柔らかそうで良く伸びそうだし。犬の頬もそうだな。あぁ、学内で発見された犬も野良犬ではなくて、猫や蛇と同様に飼い主がいたと思われる。まぁ犬の場合は数日しか学内では目撃されていないが。帰巣本能があるから、もうとっくに飼い主目掛けて飛んで行ってのだろう。
こんな風に」
捕まえられた手を辿って、飛びつくように上腕へと移るのを見守る。握られたままの手は動かせないから、それを捕まえることもできない。
「いくつかのケースは自己解決しているが、流言飛語はまだ残っている。そのせいで学内で所有者がはっきりしていない動物は一度全て処分してはどうかなどという暴論まで飛び出してな。
弁士論考部は条例と判例で喧喧諤諤と殴り合って、論破サークルは自治権と合意形成で集団浅慮を煽り合って、不干渉な生徒たちは相変わらずレストランで餌を与えて可愛がっていても里親になる素振りもない。
それならせめてだべさーとして私たちくらいは事態解消に何が望ましいのか当事者である猫から話を聞いてみようと考えてみたわけだ」
ふんふんと繰り返す確認を止めるように首に手をやり、そっと引っ張ると少し襟元がつられた。その手をそのまま、未だ顔を背けたまま語り続けている先輩へと近づける。
「だべさーって何だっけとは言うまいね。
私があの日、サークル勧誘の現場にいて適当に思いついたサークルを語ったことは事実だが実際に手を取ったのはキミだからね。他に募集をした覚えも宣伝もしたこともないが、こうやって活動を重ねていると考えたら立派に継続されていると言えるんじゃなかろうか。
まぁそれを置いたとしても下手をすれば殺処分されるかもしれない猫たちを保護するために多少は何かできないか考えてみるくらいは悪いことではないと思うんだ。
もしキミに意見や異論があるのなら聞かせてもらおうか?」
言いたいことに一区切りがついたらしい先輩が、逸らしていた顔をこちらへと向けた。
少し満足気な表情が呆然としたものに変わり、視線を逸らせないまま、
「にゃー」
当事者の主張が始まった。
先輩の言葉の合間に地の文で行動しているのは大部分が当事者()です。




