(「」視界内の動き「」)
「これがまずその一つだ」
突き出されていた人差し指が上を向いた。
「投稿する回を分ける。前回までの語り分をリセットする方法だ。だがこれは続けて読めてしまう単行本などの形式には向かない。言うなればウェブ投稿や連載中にのみ限られる手法だろう」
目の前で上を向いていた指先が手首ごとぐるぐる回る。
「次に考えた手法は挟み込みだ。聞き手の反応、話者の様子や風景の描写、あるいは環境の動きなど様々な情報がある。そうした言外の情報は多くの場合、地の文を主観として観測されて描写されている」
その観測可能な情報のほとんどを片手で遮っていることを、わかって言っていますか。
「逆に言えばそれらの情報を小出しにしていくことで長尺の語りを分割することができる」
それならまず視界を遮っている手をどけてほしいですし、くるくると回すのをやめてくれませんかね。
「あるいは話者の言葉に対して、主観が何を感じるのかを地の文で語らせて、主観のキャラクター性に共感を持たせるのも一つの利用方法だろう」
なるほど。
なんだかよくわからないけれどもよく喋る人を相手に、聞き手としてそれに付き合っているいう状況を読者に共感して貰うわけですか。そんな変人は稀じゃないですかね。
「では。更に簡素に、何も考えずに使いまわせる方法をあげてみよう」
顔が見えないことに少しイラついてきたのだけれど、この状況はまだ続くらしい。




