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66話 キモオタ・メリーゴーランド

 飛び掛かる僕にサクラちゃんは剣を振る。

 この剣が当たるほど、僕はもう弱くはない。


 攻撃をかわし、僕は剣を振り下ろす。

「くっ!」

 当然、サクラちゃんにもこんな攻撃は当たらない。

 しかし、その一瞬で僕はサクラちゃんの背後に回り込む。


「アンタね、私のマネしかできないの!?」

 サクラちゃんは背中の僕に斬りかかる。

 僕はこの攻撃を受けつつ、サクラちゃんの足首を掴む。

「え!?」


 サクラちゃんの足を引っ張り、持ち上げ、振りまわす。

「キャーーー!!」

 僕を中心にグルグルと宙を舞うサクラちゃん。

「ははは! まるでメリーゴーランドだね! サクラちゃん!」

「やめてぇぇえ! 放してぇぇぇえ!」

 この体制では、さすがのサクラちゃんも抵抗出来ずに回り続ける。

「サ、サクラ……」

 妹が僕に文字通り振り回され、複雑な表情のアスカさん。


「ふふ、しかたない」

 僕が足首を握る手を放すと、サクラちゃんは勢いよく飛んで行った。

「キャーーー!」

 部屋に転がるサクラちゃん。


「くっ……アンタね!! あれ? いない……?」

「サクラちゃん、僕の勝ちだ」

「!!」

 起き上がるサクラちゃんの首筋に剣を近づける。

「くっ……」


「よし、そこまでだ!」

 アスカさんが試合を止める。


「ア、アタシはまだやれるわよ!」

「サクラ、お前の負けだよ」

「でも……」

「サクラ、木本君はまだ魔法を使ってないぞ」

「あ……」

「魔法を使えばもっと簡単にサクラに勝てただろうに、剣だけでお前に勝ったんだよ。完敗だな」

「うぅ……」

 悔しがるサクラちゃん。

 リベンジマッチは僕の勝利で終わった。



「本当に成長したな木本君」

「いえいえ、みんなおかげですよ」


 本当にみんなのおかげだ。

 サクラちゃんのおかげで実戦経験の少なさを知り、アスカさんの連れてきてくれたこの施設でバーチャルモンスターとの戦えた。


「もちろん、サクラやバーチャルモンスターとの戦いも効果はあっただろう。

 それでも普通はここまで一気に成長したりすることは無い。木本君の元々のレベルの高さが土台にあってのことだろう」

「そうですか……」

「まあやっとレベルに強さが追いついたと言ったところか?」

「い、いやぁ……」

「まだですよ!」

 照れる僕にガイドはすかさず言う。


「え?」

「キモオタ君は魔法の使い方が下手すぎます!」

「ああ……確かに……」

 さすが精霊、僕の弱点を的確に見抜いている。


「剣に比べて魔法を使わなすぎです。魔法を使うとすぐバテちゃうじゃないですか」

「うぅ……」

「うーん……たしかに魔法を使い過ぎると気を失うからな……よし! ここで魔法も鍛えておこう」

「は、はい……。ちなみに魔法の訓練っていうとなにをするんですか?」

「魔力を上げるにはとにかく魔法を使いまくることです! 使いまくって魔力を空っぽにする。回復したらまた魔力を空っぽにする。その繰り返しで魔力は上がっていきますよ」

「なるほど……だいぶ疲れそうなトレーニングになりそうだな……」


 こうして、剣での戦いを極めた? 僕だが、次は魔法の訓練に移っていった。


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