41話 シン・キモオタ・ストラッシュ
ドラゴンが僕に襲い掛かる。
鋭い牙に爪、切り裂かれたらひとたまりもないだろう。
ドラゴンの爪を剣で受け止める。
『キンッ!』
「うん、大丈夫だ!」
ドラゴンの動きもハッキリと見える。
僕は爪を剣で斬り落とす。
よし、僕の攻撃はドラゴンにも通用する!
暴れ回るドラゴンは炎を吐く。
「ひいぃぃい! キ、キモオタ君! 炎がきますよ!」
慌てるガイド。
「大丈夫! 試してみたかったことがあるんだ」
僕はドラゴンに手のひらを向ける。
『光魔法』
手のひらから光の弾丸が飛び出し、ドラゴンの炎をかき消す。
「光魔法!? すごい!」
「ああ、初めての使うけどいい感じだ……うっ……結構、体力使う……」
レベルアップした僕の光魔法は懐中電灯から成長したようだ。
しかし、慣れない魔法は体力の消耗が激しい。
「木本君……すごいな……」
アスカさんも遠くから見守っている。
ひるむドラゴン。
僕は剣を逆手に構え、飛び掛かる。
いつか精霊のダンジョンでスライムに使い損ねた必殺技。
いくぞ……!
「くらえ……! キモオタ・ストラーーーッシュ!!」
剣は硬いドラゴンの皮膚を切り裂く。
『ぐおぉぉおお』
ドラゴンは倒れる。
「はぁはぁ……やった!」
ドラゴンを倒すことが出来た……!
しかし、魔法のせいかクタクタだ……
慣れていかないとな。
「木本君、よくやってくれたぞ!」
アスカさんも褒めてくれる。
「いやぁ……それほどでもぉ!」
珍しく褒められてニヤニヤが止まらない……!
「……せっかくカッコよかったが相変わらず気持ち悪いな……。しかしすごいな、私だってドラゴンはそうとう手こずるぞ……?」
少し前までレベル0だった僕がここまで強くなれるとは……
感無量だ!
◇
「姫島さん、大丈夫?」
落ち着きを取り戻した姫島さん。
「う、うん……ありがとう……キモオタ君、メチャメチャ強いんだね……」
「いやぁ……それほどでもぉ!」
「……うーん……やっぱりキモいなぁ……」
苦笑いの姫島さん。
話を聞くと別荘に来ていたが家族は出かけていて一人留守番だったようだ。
ドラゴンの雄叫びを聞いた姫島さんの家族はすぐに別荘に戻ってきた。
ボロボロになった別荘に驚いた姫島パパだったが、他にも別荘はたくさんあるようで気にしていないようだった。
金持ちはすごい。
「そうだ。姫島さんとやら」
「は、はい!?」
アスカさんが姫島さんに話しかける。
「木本君が強いことは他言しないように頼むぞ」
「え? なんで……」
「いいから黙ってろよ!?」
「は、はい……」
口止めをするアスカさん。
僕が強いことがバレてしまうと魔王討伐に支障が出る恐れがあるからだろう……が怯える姫島さん。
「キモオタ君……」
「ごめんね、姫島さん」
「ううん……でも、あのおばさん、メッチャ怖いね……」
僕に耳打ちをする。
「お、お、お、おばさん!?!?」
トップ冒険者は耳もいいのだろうか?
剣を抜こうとするアスカさん。
「だ、ダメです! アスカさん!」
いよいよ合宿もラストスパートだ。
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