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2話 アイドルオタク

「村田君、おまたせやした! パン買ってきました」

 怒られないよう、急いで買ってきたパンを村田に献上する。

 惨めなものだ……


同級生なのに敬語を使うほど、この世界ではレベルの差は大きい。


「遅せえなキモオタ、そんなブクブク太った体だからノロマなんだろうな」


「は、ははは……そうですね……」

 僕は情けなく笑うことしかできなかった。


「村田君! 放課後ゲーセンに遊びに行こうよ」

 村田の周りにはいつも子分が付きまとっている。


「わりぃ、今日はギルドに呼ばれてダンジョンに行くんだわ」

 流石は期待の冒険者、ギルドからも引っ張りだこだ。


「ええ! 今日もダンジョンに!? すごい!」

 取り巻き達はいつも村田にゴマをすっている。


「へへっ、そりゃ俺様の才能を周りが放っておかないわな!」

 自信満々に言う村田。


「さすが村田君!」

 金魚のフンみたいな取り巻き連中が村田を持ち上げる。


「さすが村田君!」

 金魚のフンのフンみたいに僕も村田を持ち上げる。


「まあいつか俺様がすべてのダンジョンをクリアしてやるよ」


 悔しいが、幼い頃の僕が憧れていた姿が村田だった。



 レベル0と鑑定された日から、僕は暗い生活を送っている。


 普通のサラリーマンの父と専業主婦の母。どちらもレベル0ほどではないが低いレベル。

 両親とも冒険者にならなず、普通の生活を送っている。

 だから、我が家ではダンジョンの話はほとんど無かった。


 僕のレベルが低いのも両親のせいだと八つ当たりをしてから会話はあまりしていない。

 レベルの強弱に遺伝的要因はないと言われているが、優しい両親は僕が落ち込んでいる責任を感じていることようだ。


 すっかり堕落した日々。ボサボサに伸びた髪の毛、日課だった剣道もサボりすっかり太ってしまった。

 もうダンジョン冒険者になろうなどとは全く思っていない。


 今、唯一熱中しているにはアイドルの追っかけいう見た目通りのオタク趣味だ。


 一番の推しメンは白野サクラちゃん18歳。

 この子は良い。きっとこれから伸びる子だろう。

 アイドルは良い。いつも僕に微笑んでくれるのだ。


 数か月前から体調不良ということで活動休業しているのが気がかりだが……

 まさか週刊誌に熱愛スキャンダルでも撮られらんじゃないだろうな!?


 木本プロデューサーの目に狂いはない。いつか握手会に行ってみよう。



 かつての憧れであった女剣士アスカは最近は追っかけていない。

 自分が冒険者にはなれないと分かった日から、憧れのアイドルは視界に入れたくない現実になっていたのだ。

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