19話 目玉の
ガイドの話が終わるころにはすっかり深夜になっていた。
そのまま僕たちはダンジョンそばのホテルに泊まった。
ヘリコプターは夜遅くは飛べないということだ。
田舎の寂れたホテルだが、あのアスカさんと同じホテルに泊まれるなんて!
まあ、もちろん、残念ながら部屋は違うが……
しかし、今日の僕は一人ではない!
「キモオタ君! 今日はお疲れさま!」
「お疲れ様! どうだい? 人間界は?」
「はは……まだなんとも……」
アスカさんの代わりと言っては何だが、精霊のガイドが同室だ。
僕と契約したガイドは僕と離れてしまうと契約が切れ、消滅の恐れがあるようだ。
初めての女子とのお泊りが精霊と一緒とは。
「慣れない人間界で疲れちゃいましたよ。 ……アスカさんはとか言う人にも追いかけ回されましたしね……
さあ! シャワー浴びて早く寝ましょう!」
「む!? シャワー!?」
これはもしや、スケベイベント到来か!?
「さ、先にシャワー浴びて来いよ……」
人生で一度は言ってみたかったセリフだ。
相手はハムスターサイズの精霊だが……
「あ、いいんですか!? じゃあお先にー!」
人の気も知らないガイドは風呂場へと飛んでいく。
「……なんか思っていたのと違うな……?」
もっとこう……ロマンティックな感じじゃないのか!?
「あ、あのぉー……」
ガイドはすぐに戻ってきた。
「ど、どうしたの? 一緒に入る?」
「きもっ……。あ、シャワー出せなくて……」
ん? 悪口言われた?
よく考えれば。手のひらサイズの小さいガイドではシャワーを出すのは大変だろう。
「うーん、人間の大きさのモノばかりで不便ですね……。あっ! あれにお湯張ってくれますか?」
ガイドは湯飲みを指さした。
「なるほど、これをお風呂代わりに! 目玉のお〇じスタイルって訳ね!」
「……よくわかりませんけど、それでお願いします」
「はい……」
精霊界にはゲ〇ゲは無いようだ。
「10分は絶対出てこないでくださいね! もし私の裸見たら殺しますからね!」
「は、はいぃ!」
たまらないツンデレ精霊に興奮しながら僕は風呂へ。
(10分……10分か……)
何かを期待し、8分ほどで僕は風呂から飛び出す。
「ははは、10分ってこんなもんだったかな!? ……ん? どこいった!?」
湯飲みには少し冷めたお湯だけが残っていた。
「ぐぅーー、ぐぅーー」
ラッキースケベは起こることなく、湯飲みでの入浴を終えたガイドは服を着てベッドでいびきをかいて寝ていた。精霊もいびきをかくんだな……
「……ガイドも疲れただろうな。精霊界を救うために人間界まで魔王を倒しに来るなんて……すごいよ、君は」
僕はハムスターサイズの精霊にそっと布団をかける。
「僕も寝るかな……」
ガイドを潰さないよう注意しながら、僕もベッドで横になる。
濃密な一日だった。
「僕が魔王を倒すのか……今まで冒険者になれなかった分、あっという間にレベルを上げてやるか……!」
レベルアップを諦めてきた人生。
それがガイドのおかげで今日からは僕だけがレベルアップできるのだ。
『コンコン』
「ん!?」
部屋のドアがノックされる。こんな夜中に誰だ!? ま、まさか……魔王の刺客か!?