11話 アイドル姫島さん
「お前なに防具なんてつけてんだ?」
村田は街中で防具をつける僕を睨みつける。
「い、いやぁ……その……」
最悪だ。近所の人に見られて変人扱いならまだしも村田に見られるなんて。
「レベル0のお前がこんなのつけてヒーローごっこか? 気持ち悪ぃな小学生かよ」
「はは……そう、そうだよね……」
防具をジロジロと眺める村田。嫌な予感がする。
「それにしてもいい防具だな。貸してみろよ?」
「え?」
村田は僕の防具を剝ぎ取ろうと手を伸ばす。
「や、やめろっ! 触るな!」
僕は村田の手を振り払う。
「あぁっ!?」
これはアスカさんからもらった僕の大切な装備だ。お前なんかに渡してたまるか。
「おい……キモオタ……誰に口きいてんだ?」
しかし、そんな事情を村田が知るわけもない。
もっとも知っていても関係ないだろうが……
怒りの表情の村田が僕に詰め寄る。
『ガッ』
「ぐわああぁ」
村田の強烈なパンチが腹にめり込む。
「最近、テメェは生意気だな。一度、ボコボコにしてやらねぇと分かんねぇみてぇだな!」
激痛で悶える僕に村田は手を緩めない。
レベル20の冒険者の拳だ。レベル0の僕には大ダメージだ。
亀のように屈んで身を守ることしかできない。
「はぁはぁ……二度と俺に逆らうんじゃねえぞ」
数分後、村田は殴り飽きたのか僕の前から立ち去る。
「う……うぅ……」
僕はモンスターに襲われたかのように、ボロボロに横たわる。体中傷だらけ、顔は鼻血で血だらけだ。
「クソ……あんな奴に負けるなんて……レベルさえ高ければ……」
レベル20の村田の攻撃だ。この防具を付けていなければ瀕死の重傷を負っていただろう。
最近の出来事で浮かれていた僕は現実を突きつけられた。
悔しい……どうして僕はレベル0なんだよ。
気づけば、僕は道端に倒れながら人目も気にせず泣いていた。
「あれ? キモオタ君……?」
後ろから声をかけられる。
「は、はい?」
誰だ? また村田か!?
恐怖に凍り付きながら振り返ると、同じ高校の制服を女子生徒。
「ひ、姫島さん!」
そこにはクラスのアイドル、姫島さんが立っていた。