勇者、しゃべる
不審者から勇者になりました
「そりゃ、俺もご飯いっぱい食べるよ。めっちゃお腹空いてるんだ」
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2月のとある日のこと。
大介がいつもたくさんの量の食事を摂ることに疑問を持った綾子が尋ねた。
日本にいた時は、せいぜいご飯を1回お代わりするかどうかだった。
「にいさん、いっつもお腹空かせてるけど、そんなに向こうの世界は食事できないくらいなの?
他の方のためにも、もっとたくさん食材を持って行った方がいいんじゃないの?」
「いや、確かに旅の途中で食事に困ることがないとは言わんけど、別に向こうにいる時はそんなに食わないよ」
「だって、4人前とか普通に食べたりするじゃない」
「そりゃ、食わないとダメなんだ。
こっちに帰って来る時の転移にエネルギーをすごく使ってる。
食事で補給しないとぶっ倒れる」
「そうなんだ・・・じゃあ向こうに戻った時もすぐに食べてるの?」
「いや、向こうに戻る・・・戻るってのもアレだな。まぁそっちはそこまででもないよ」
失言をしてしまったと思ったのか、綾子が思わず口を手で覆った。
空気を変えるためか、黙って見ていたマコトが質問した。
「ダイちゃん、いっつもその鎧着てるけど、飯の時くらい脱がないのか?アッちゃんも結構リングフィット慣れてきたし、いつ風呂入ってもいいようにって用意してあるんだ」
大介が見るとアサヒがジョギングしながら、ぐっとサムズアップした。
そこまで息も上がっていないようだ。
いや、ちょっと我慢しただけか。すぐに息が乱れた。
「いや、ありがたいが・・・、この鎧は転移状態を維持するのに関係しててね。
わかりやすく言えば、装備してるとMP消費が半分になるーみたいな?
風呂ならあっちでも入れるよ。シャンプーや石鹸はまだあるし」
「・・・そっか。わかったよ」
「・・・まぁ、うん。そんな感じだ。
全部終わってこっちに帰ってくる時はポイって捨ててくるわ」
大介は軽く笑った。
「それにしてもやっぱりドワーフとか、めっちゃ飯食いそうだな」
マコトが明るく言うと、大介が真顔になった。
「いや。飯を食う量は魔道士が一番食う。
自然現象で起こり得ない魔法を使うのに、エネルギーをたくさん消費するらしい。
さらに中でも一番飯を食うのは」
ペプシコーラを飲むと言った。
「エルフだ」
大介がベランダの方を見つめる。
だんだん、俯いていく。
「奴らはダメだ・・・ダメなんだ・・・」
「どうしてあの量が・・・・」
「消える、消えていく、俺の、俺のコーラが・・・」
「俺のカレーが、カツ丼が・・・」
・・・何かブツブツと呟いているがよく分からない。
マコトが大介の肩を掴んで揺さぶった。
「ダイちゃん?ダイちゃん!どうした?大丈夫か!」
はっとした表情でマコトを見た大介は、ペプシコーラを飲んで、再度、食事を始めた。
「大丈夫だ」
「「「いや絶対ダメだろ」」」
『シャベッタアアア!』
ということで、50話にしてやっとまともに勇者を喋らせることができた(感動)
主人公はリングフィットやってハアハア言ってるだけだし、勇者は飯食ってるだけだし。
なんだこの小説。いいかげんにしろ(戒め)




