その10 ☆流血表現があります
流血表現があります。苦手な方はご注意ください。
「大丈夫か」
キーンとする頭を振って、なんとか正常に戻ろうとする。異様な臭いが鼻をついた。これは……血の臭い。
わたしはキースにかばわれて、無傷だった。
「わたしは平気。キースは?」
「大丈夫だ……ひどいな」
振り返ったキースがつぶやいた。声がこわばっている。わたしからはその惨状はキースの肩に隠れていてよく見えない。
「ジェイ、ジェイは?」
キースはわたしをくるりと反転させ壁に向かい合わせるように立たせた。
わたしの肩を一回抱いて、ジェイが倒れている傍に歩み寄る。
だから振り返って、ようやく見えた。
……廊下は血まみれだった。赤いじゅうたんは更に赤い血を吸って、壁には血肉が飛び散っている。 ぬらぬらした臓物らしきものや、わたしから二メートルも離れていないところに、黒い塊……おそらく、黒装束の頭部……が落ちているのを見つけて、流石に気分が悪くなる。しゃがみこんでしまった。
「レティ、無事か?……これは……」
父さまと近衛兵が小走りにやってくる。多分、避難しようとした矢先に、この爆音が聞こえて、こちらにやってきたのだろう。わたしはくらくらするこめかみを押さえて、立ち上がった。
「わたしは大丈夫。ジェイが……」
「俺も大丈夫だ」
ジェイも頭を振りながら起き上がるところだった。体中、血まみれだ。
それを言うなら、キースも。今まで気づかなかったが、わたしの盾になった時に、背中に血肉をかぶっている。
「……キース、どうなったんだ?」
「黒装束が爆発したんだ。そういう呪をかけられていたんだろう」
そうジェイに言うと、キースは父さまに頭を下げた。
「陛下、申し訳ありません。他の者は取り逃がしました」
「仕方がない。それより君たちが無事でよかった」
父さまはわたしの手を握りながら、言ってくれた。
「あと、申し訳ないついでに、ここの廊下を封鎖していただいてもよろしいですか? ジェイと私で遺留物がないか調べます」
キースが言うと、ジェイも頷いた。父さまはついてきた近衛兵に何事かを指示すると、彼はきびすを返して駆けていった。
「わたしも……」
調べるのを手伝おうと申し出ようとしたけど、キースに遮られる。
「レティは陛下を部屋までお送りして。近衛兵を誰かつけておいてくれよ。あと、パーティー会場にまだカール卿がいらっしゃるはずだ。カール卿にこのことをお知らせして、黒装束を追ってもらってくれ……一人で大丈夫だな?」
わたしの顔色を見て、ちょっと心配になったのだろう。わたしはちょっと笑って見せた。しっかりしなくちゃ。
ふっとお腹から息を吐くと、父さまを振り返る。
「行きましょう、父さま。お部屋までお送りします」
「陛下、私かジェイかカール卿かがお部屋に伺うまで、お部屋から出られませんよう。後ほど、ご報告に伺います」
キースの声を背に、わたしたちは現場から離れた。